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大赤字の大塚家具、大塚久美子社長「自分の手で黒字化」

 業績悪化が続く(株)大塚家具(TSR企業コード:291542085、江東区、大塚久美子社長)が2月8日、都内で決算説明会を開いた。
 2017年12月期決算は2期連続の大幅赤字で、2015年12月期に約110億円あった現預金は約18億円にまで減少した。
 大塚久美子社長は「ブランドイメージが揺れ動いたが、営業利益は2017年上期がボトム(底)」と改善を強調。2018年12月期は「旺盛なホテル新築などでコントラクト(建装)部門がさらに伸びる。家賃の減少など固定費の圧縮から営業黒字を見込んでいる」と強気の見通しを示した。
 やや緊張気味に語り始めた大塚社長も、今期の黒字化を説明した場面では笑顔もみられた。

大塚家具の本社

大塚家具の本社ビル

2017年12月期の決算内容

 2017年12月期は、売上高410億798万円(前年比11.3%減)だった。旗艦店の有明や大阪の大型店で来店客数が下げ止まらなかった。また、まとめ買いから単品買いへの流れが加速したことや小商圏化、ネット販売(EC)の台頭に加え、秋の週末に襲来した2度の台風も響いたという。
 利益は賃借料などの抑制で販管費を圧縮したが、減収により営業損失は51億3,659万円で前期の45億9,756万円の赤字から拡大した。また、店舗規模の最適化を進めたことで事業構造改善引当金16億9,004万円の特別損失が発生し、当期純損失は72億5,993万円に膨らんだ。
 大塚社長は、「秋は台風で下振れしたが、おおむね売上高400億円の水準で安定してきた。経費をどれだけ抑えれば黒字が可能かわかったことは明るいニュース」と話し、「経費のコントロールも計画通り」(大塚社長)と述べた。
 配当を40円で維持したことには、「よほどのことがなければ(予定を)変えない。総合的に判断した結果」と説明した。

売上高・利益推移

2018年12月期は強気の予想

 2018年12月期の売上予想は、前年比11.2%増の456億6,300万円とした。大塚社長は、「店舗売上は横ばいが見込まれるが、卸売部門の(ホテル向けなど)コントラクトは、3倍の売上約60億円に伸びる」と増収予想の背景を話した。
 利益については、「賃借料(家賃)が(すでに引当済みのため)前年より約17億円削減できる。これを含め固定費を圧縮し、営業黒字は2億円を見込む」と話した。また、会見では詳細が明かされなかったが、上半期に十数億円規模とみられる特別利益も計上予定で、通期の当期純利益は3年ぶりの黒字となる13億9,000万円を見込んでいる。
 固定費削減について、大塚社長は「人員は自然減と補充抑制で減っている」と話し、合理化に取り組むことなく営業利益の黒字化を目指す意向だ。
 また、配当は10円に減配を予想。「次の利益に繋げるため投資にまわす」と減配を説明した。

大塚家具の有明本社ショールーム

大塚家具の有明本社ショールーム

現預金減少と新たなコミットメントライン

 2015年12月期末時点の現預金は約110億円と潤沢だった。しかし、経営権を巡る「父娘喧嘩」などで「ブランドイメージが揺らいだ」(大塚社長)。さらに、「大塚家具は高いし入り難いなどの誤解が引き続きある」と話したが、ECの台頭やニトリ、イケアなどとの競争も激化している。
 こうした業績悪化から2期連続赤字を計上し、2017年12月期末の現預金は18億678万円にまで減った。
 これについて大塚社長は、「今期は営業黒字を見込んでおり、営業利益と営業キャッシュフローはパラレル(並行)」と説明し、現預金の減少に歯止めが掛かる見通しを示した。また、10億円のコミットメントラインを複数の金融機関と50億円に拡大したことを発表した。
 大塚社長は、「1990年後半を最後に借入は行っていない。予備的なものだ」と話したが、「黒字化に向かうのでほぼ使わないで済みそうだ」とも述べ、業績次第では資金調達の可能性に含みを持たせた。
 ただ、当面は50億円のコミットメントラインに加え、保有する27億5,303万円の投資有価証券などで一定の手元資金は確保したようだ。


 2018年1月の店舗売上高は全店で前年同月比83.1%(速報値)と、2017年8月から6カ月連続で前年割れが続いている。
 また、来店客数が増加している商業立地路面店も売上増に結び付いていない。このため、 新商品の投入や法人との提携販売の修復、ECサイトの本格展開、リワース(リユース)、レンタル強化など、業績改善に向けた対策に取り組んでいる。
 決算説明会で注目されたのは、コントラクトだ。2017年12月期の売上高は約20億円にとどまったが、2018年12月期は61億円と3倍を見込んでいる。大塚社長によると、「すでに20億円の受注残がある」という。
 厳しい決算にも、「自分の手で黒字化する。最後までやり遂げるのが重要」と述べ、大塚社長は続投意欲を示した。業績不振の場合を聞かれると、「仮定の話はできない」と明言を避けた。増収増益の強気見通しに終始した大塚社長だが、3期連続の赤字になれば経営責任の追及は避けられない。勝負の年は始まったばかりだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年2月13日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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