• TSRデータインサイト

建設仮設機材メーカー、中央ビルト工業が上場廃止の危機

 東証2部上場で、建設仮設機材の製造を手掛ける中央ビルト工業(株)(TSR企業コード:291088295、東京都中央区)が上場廃止の危機に立たされている。
名古屋工場で不適切な会計処理が発覚し、2018年3月期第2四半期報告書の提出を延期。外部有識者らによる調査委員会からの報告を待って提出の延長承認期限となる12月14日までに第2四半期報告書を提出するとしていた。しかし、提出期限直前の12月13日に、監査レビューが終了しないため報告書の提出が困難になった事を発表した。

名古屋工場で棚卸資産の過大計上が発覚

 中央ビルト工業は今年9月1日、名古屋工場で過年度決算訂正の対象となりうる不適切な会計処理の発覚を明らかにした。
このため2018年3月期第2四半期決算の発表を延期し、弁護士や公認会計士らを構成員とする調査委員会を設置して調査を進めていた。同時に、第2四半期報告書の提出を12月14日までとする延長承認を得ていた。
12月4日に調査委員会から受領した報告書では、名古屋工場の棚卸改ざん行為は「棚卸資産の架空在庫を計上し、製造原価を減少させていた」もので、過大計上による損益影響額は累計3億900万円になるという。同日の発表では第2四半期報告は「期限の12月14日までに提出できる見通し」としていた。

監査レビュー通らず

 ところが、提出期限前日の12月13日、「調査報告書の内容および調査委員会の調査結果に対する監査法人(トーマツ)の監査で、調査範囲の網羅性に疑義が生じ、追加調査が必要であるため、承認を受けた提出期限までにレビューが終了しない旨、監査法人から連絡を受けた」と発表した。
会社側は東京商工リサーチの取材に対し、「追加調査とは、あくまで今回の調査報告書で挙がった内容に関することを指しており、これ以外に新たな不適切会計が発覚したわけではない。以前に発表した損益への影響額(累計3億900万円)に大きな変動はないと考えている」とコメントしている。

タイムリミットは12月26日

 期限の12月14日までに第2四半期報告書を提出出来なかったため、東証は同社株式を同日付で監理銘柄(確認中)に指定した。期限超過後8営業日(12月26日)までに提出できない場合、整理銘柄に指定された後、上場廃止となる。
中央ビルト工業の2017年3月期決算(単体)は売上高が前期比30.2%減の59億7,800万円、最終利益は2,200万円にとどまった。建設需要そのものは旺盛だが、人員不足による着工や工期の遅れが響き、減収減益となった。なお、今年3月、筆頭株主が住宅大手の旭化成ホームズ(株)(TSR企業コード:291594387、新宿区、東証1部)に変更している(持株比率32.9%)。
同社は「26日までの報告書提出に向け全力で取り組む。今期の業績予想は従来通りで変更はない」とコメント。だが、上場維持に残された時間は少なく、重大局面を迎えている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年12月19日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ