• TSRデータインサイト

「三菱マテリアルとデータ偽装3社の国内取引状況」調査

  11月23日、三菱マテリアル(株)(TSR企業コード:291022669、千代田区、東証1部)は、連結子会社3社の製造販売した一部製品の検査データ偽装を公表した。
 データ偽装が公表されたのは、三菱電線工業(株)(TSR企業コード:570124123、千代田区)、三菱伸銅(株)(TSR企業コード:291070078、千代田区)、三菱アルミニウム(株)(TSR企業コード:291025390、港区)の未上場3社。
 東京商工リサーチは、三菱マテリアルと偽装3社(以下、三菱マテ4社)の取引状況を調査した。三菱マテ4社が直接または間接的に取引している1次・2次仕入先総数(重複除く)は6,585社だった。一方、1次・2次販売先総数(同)は5,135社。
 1次仕入先1,617社のうち、資本金5,000万円未満(個人企業含む)は1,338社(構成比82.7%)、1次販売先1,052社では730社(同69.3%)で、仕入・販売先とも直接の取引企業のうち、大半を中小企業が占めていることがわかった。
 三菱マテ4社の取引先は、地域的には全国に広がっている。2次販売先(エンドユーザー含む)の業種では、上位に自動車部分品・付属品製造業や土木工事業、建築工事業などが入っており、国内では広く製品が流通しているようだ。


  • インターネット企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、三菱マテリアルとデータ偽装3社の仕入先、販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分け、業種、地区などを抽出、分析した。
  • 1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と直接取引がある間接取引企業を示す。

三菱マテリアルおよびデータ偽装3社

資本金別 1次仕入先は5千万円未満が8割

 三菱マテ4社の1次仕入先1,617社の資本金別分布は、「1千万円以上5千万円未満」が1,072社(構成比66.3%)と最も多かった。「5千万円未満」以下は1,338社(構成比82.7%)と8割に上り、中小企業との取引が圧倒的に多い。
 一方、1次販売先1,052社も、「5千万円未満」が730社(同69.3%)と約7割を占めている。

資本金別表

産業別 1次仕入先は製造業が約4割、1次販売先は卸売業が約5割を占める

 三菱マテ4社の1次仕入先(1,617社)の産業別では、製造業が628社(構成比38.8%)で最も多かった。次いで、卸売業が468社(同28.9%)、建設業が139社(同8.6%)の順。
 一方、1次販売先は1,052社で、最多は卸売業の480社(同45.6%)。次いで、製造業397社(同37.7%)、建設業61社(同5.8%)と続く。

産業別表

業種別 1次販売先は非鉄金属卸売業が最多

 1次仕入先(1,617社)を産業別に細分化した業種別でみると、その他の産業機械器具卸売業が80社で最多。以下、一般貨物自動車運送業(63社)、その他の化学製品卸売業(44社)、機械工具製造業(42社)と続く。
 1次販売先(1,052社)で最も多かったのは、非鉄金属製品卸売業の90社。以下、その他の産業機械器具卸売業(82社)、生コンクリート製造業(45社)、電気機械器具卸売業(42社)。2次販売先では、自動車部分品・付属品製造業が171社で2番目に多く、卸売業者から様々なメーカーに納入が広がっていることがわかる。

業種別表

地区別 取引先は全国各地に分布

 1次仕入先(1,617社)を都道府県別にみると、データ偽装が明らかになった三菱電線工業の箕島製作所のある和歌山県が20社、三菱伸銅の若松製作所のある福島県は43社だった。
 1次・2次の仕入、販売先は全都道府県に所在している。三菱マテ4社のデータ偽装の影響は、消費者に身近な自動車や電機、社会インフラなどを通じ、広範囲に拡大することが懸念される。

地区別表

都道府県別表

 10月の(株)神戸製鋼所(TSR企業コード:660018152、神戸市、東証1部)に続き、また、検査データの偽装が発覚した。三菱マテリアルは10月までにデータ偽装した3社から報告を受けていながら、1か月以上公表していなかった。
 三菱マテ4社の取引先は、仕入先で(1次・2次合計)6,585社、販売先は5,135社に上る。安全性確認や出荷停止などで出荷が滞ると、経営体力の乏しい取引先は大きな影響を受けかねない。また、中長期的に最終納入先が取引先を変更した場合、下請けなどの業績にも影響が懸念される。日本を代表する有力企業の相次ぐデータ偽装は、日本の「ものづくり」への世界的な信頼失墜に直結する。今後の状況次第では、取引先だけでなく製品を使用している中小企業の業績をも直撃しかねない。官民が一体となった徹底したコンプライアンス遵守と再発防止策が求められる。

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