70億円の「架空取引」疑惑が発覚!
6月29日、スマートフォンフィルムなど合成樹脂の専門商社であるKISCO(株)(TSR企業コード:570050774、大阪市)が、「平成29年(2017年)3月期有価証券報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出に関するお知らせ」をリリースした。
KISCOのリリースによると、「当社が行う海外取引の一部に関する、特定の相手方からの本年6月22日付の連絡等を踏まえて(中略)、当該取引の対象物品の実在性等の確認」の必要が生じたという。KISCOの担当者は東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「海外取引の一部で循環取引の被害の可能性が認識された」と話す。
TSRでは、「特定の相手方」が代理店宛に通知したという書面を独自に入手した。「特定の相手方」は、A社。文書は6月22日付でA社の社長名で出された。文書には、「全てご懸念されておりました通り循環取引です。私一人の指示で循環取引であることを社内外に悟られぬよう実行してきました」と記載されていた。
A社のコメント
TSRは、A社の社長へ数度に渡り取材を申し込んだが、7月3日現在連絡は取れていない。6月23日、A社の従業員はTSRの取材に対し、「現在、事業は空転している。対応に困っている」とコメントしている。
循環取引とは
循環取引とは、複数の企業が商品の転売を繰り返して売上げを計上する架空取引を指す。商取引の実態を伴わない架空売上だけに、いずれはシワ寄せが循環取引に加わった企業に波状的に押し寄せる。2015年4月、東証1部上場(当時)の江守グループホールディングス(株)(TSR企業コード:600000702、福井市)が、中国企業との循環取引で多額の損失を出し、民事再生法の適用を申請したことは記憶に新しい。
KISCOのコメント
KISCOの担当者は、「まさかうちが詐欺に巻き込まれていたとは…」と驚きを隠さない。「循環取引による被害額は70億円にのぼる可能性がある。(被害の)損失処理は大きいが、取引銀行も協力的で、内部留保と資産の含み益があり財務面は問題ない。6月27日に設置した特別調査委員会で実態を明らかにしたい」とコメントしている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年7月4日号に「A社が代理店に通知した文書」を掲載予定)