平成28年熊本地震「上場企業の被災状況開示」調査(4月28日時点)
4月14日に発生した「平成28年熊本地震」(以下、熊本地震)は4月25日、激甚災害に指定された。4月28日には東日本大震災以来、4例目となる特定非常災害に指定される事も決定した。
震度1以上の揺れは1,000回を超え、発生から2週間が経過した現在も3万8,000人が避難生活を余儀なくされている。
東京商工リサーチでは、前震が発生した4月14日から同28日まで、すべての上場企業を対象に「熊本地震」の影響を公表したプレスリリースを集計、調査した。
熊本地震に関する影響についてリリースした上場企業は166社を数えた。このうち、「営業・操業停止」(73社)、操業や営業再開の「見通しが立たない」(13社)など、深刻な被災を公表した企業は86社にのぼった。被災内容では「建物損壊」が62社で最も多く、次いで「商品・在庫損傷等」31社、「生産ライン・設備被害」27社と続く。また、ソニーなど3社が熊本地震の影響で2017年3月期の業績見通しの公表の延期を発表している。
一方、発生後2週間が経過するなか、営業・操業の再開や復旧をリリースする企業も出てきた。「リリース追報」として一旦休止した事業所・工場などの稼働再開(一部再開を含む)を公表した企業は20社だった。4月27日に九州新幹線が全線で運転を再開し、九州自動車道も4月29日中に全線が復旧の見通しが立つなど、インフラも徐々に回復している。まだ余震は続くが、企業活動は少しづつ復旧・復興に向けて動き始めている。
- ※熊本地震の前震が発生した4月14日21時26分~4月28日12時30分までに「適示開示情報閲覧サービス」でリリースされた資料のうち、「熊本地震」の影響に関するリリースを対象に集計。業種は証券コード業種分類に基づく。
- ※被災状況は「影響なし」、「(被害が)一部・軽微」、「(一部事業所の営業・操業)停止」、「(一部事業所の営業・操業再開の)見通し立たず」、「その他」に分類した。
- ※複数のリリースがある場合は、最も被害が深刻と判断されるものを1件としてカウント。
開示企業166社のうち133社が被災
「熊本地震」に関しリリースした166社のうち、「影響なし」が33社だったのに対し、133社(構成比80.1%)が何らかの被害を受けた。このうち「(営業・操業)停止」が73社、「(営業・操業再開の)見通しが立たない」が13社で、深刻な状況を公表した企業は86社にのぼった。
被災をリリースした133社のうち、被災内容別に分類すると最多は「建物損壊」の62社だった。以下、「製(商)品・在庫品損傷等」31社、「生産ライン・設備被害」27社、「什器・備品損傷等」22社と続く。
製造業が43社で最多
被災をリリースした133社の産業別では、最多が製造業の43社(構成比32.3%)だった。次いで小売業39社(同29.3%)、卸売業20社(同15.0%)、サービス業14社(同10.5%)と続く。
市場別では、東証1部89社(構成比66.9%)、JASDAQ21社(同15.7%)、地方上場と東証2部が10社(同7.5%)だった。
今期業績見通しの公表延期が3社
熊本地震の影響で3社が今期(2017年3月期)の業績予想の延期を発表した。ソニー(株)は大分テクノロジーセンター(大分市)は生産を再開したが、連結子会社ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)の熊本テクノロジーセンター(熊本県菊池郡)が被災し、生産装置の一部が損傷し生産活動を停止している。アイシン精機は関連子会社のアイシン九州(株)(熊本市南区)などの生産設備が被害を受けた。協力工場やグループ工場などで段階的に代替生産しているが、アイシン九州の工場での生産再開の目処は未定としている。また、東京エレクトロン(株)は主力工場の合志事業所(合志市)は建屋の耐震性、設備に大きな影響はないことを確認し4月25日より稼働再開したが、業績への影響をより精査するために業績見通しの公表を見合わせるとした。
東京証券取引所は4月19日、熊本地震で被災した上場企業に対して決算発表の延期や業績予想を未定とすることを容認すると発表、4月20日には福岡証券取引所も同様の措置をとる事を決めた。業績見通しの公表を延期した3社は、いずれも2016年3月期の本決算は従来通りに発表の見込みだが、3社以外でも被害状況の精査などで決算作業に遅れが生じる上場企業が出てくる可能性もある。
稼働再開や復旧が20社
被災をリリースした133社のうち、追報などで一旦休止した事業所・工場などの稼働再開(一部再開を含む)を公表した企業は20社だった。電気・水道などのライフラインの復旧に伴い徐々にではあるが稼働再開を公表する企業が出てきた。