平成28年熊本地震 「上場企業の被災状況開示」調査(4月19日時点)
4月14日の「前震」から同16日未明の「本震」以後も大きな余震が続く「平成28年熊本地震」(以下、熊本地震)の影響が広がっている。九州新幹線が止まり、高速道路や一般道路などのインフラや建物も甚大な被害を受け、サプライチェーンなど経済活動にも支障を来している。
東京商工リサーチでは、前震が発生した4月14日から同19日まで、すべての上場企業を対象に「熊本地震」の影響を公表したプレスリリースを集計、調査した。
東京証券取引所など国内すべての証券取引所に株式上場する企業で「熊本地震」に関するプレスリリースを行ったのは133社だった。このうち、「影響なし」が26社で、被災した店舗や工場の「営業・操業停止」は61社、操業や営業再開の「見通しが立たない」が10社、被災が「一部・軽微」にとどまったのが32社で、従業員が出勤困難などの「その他」が4社だった。
被災内容では、「建物損壊」57社、「商品・在庫損傷等」29社、「什器・備品損傷等」23社、「生産ライン・設備被害」22社など、直接的な原因が大半を占めた。一方、「ライフライン」7社、「停電・電力不足」5社などもあった。道路、水、電気のライフラインの復旧遅れで従業員の生活が困難を極めている地域もあり、こうした面での復興も急がれる。
- ※熊本地震の前震が発生した4月14日21時26分~4月19日23時59分までに「適示開示情報閲覧サービス」でリリースされた資料のうち、「熊本地震」の影響に関するリリースを対象に集計した。業種は証券コード業種分類に基づく。
- ※被災状況は「影響なし」、「(被害が)一部・軽微」、「(一部事業所の営業・操業)停止」、「(一部事業所の営業・操業再開の)見通し立たず」、「その他」に分類した。
開示企業133社のうち107社が被災
「熊本地震」に関しリリースした133社のうち、「影響なし」が26社だったのに対し、107社(構成比80.5%)が何らかの被害を受けた。「(営業・操業)停止」が61社、「(営業・操業再開の)見通しが立たない」が10社で、深刻な状況を公表した企業は71社に達した。
被災をリリースした107社の市場別は、東証1部72社(構成比67.3%)、JASDAQ17社(同15.9%)、地方上場10社(同9.3%)、東証2部6社(同5.6%)、マザーズ2社(同1.9%)。
被災産業は、最多が製造業の36社(構成比33.6%)。小売業34社(同31.7%)、卸売業13社(同12.1%)、サービス業9社(同8.4%)と続く。銀行は3社で、うち2社が「停止」だった。
今後の対応については、被害をリリースした107社のうち8社が国内外の拠点での代替生産や外部からの調達で対応(予定含む)としている。2011年3月の東日本大震災の教訓からBCP(事業継続計画)の策定は進むが、実際に被災した場合の運用は容易でないことがわかる。
生産・販売の施設・設備の復旧は時間との勝負だが、一方でサプライチェーン寸断という非常時のマネジメントも業績に影響するかもしれない。