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2015年度「コンプライアンス違反」企業の倒産

 2015年度(2015年4月-2016年3月)に法令違反や粉飾決算、偽装などの「コンプライアンス違反」が一因となった倒産は190件(前年度216件)と前年度を下回った。こうしたなか、違反内容別では不正な会計処理や虚偽の決算報告書作成などの「粉飾」が前年度より増加した。大手企業の好業績が目立つなかで経営不振から抜け出せない中小企業の一面を浮き彫りにした。


  • 本調査の「コンプライアンス違反」倒産は、建設業法、医師法などの業法違反や特定商取引法などの法令違反、粉飾決算、脱税、詐欺・横領、不正受給などをまとめた。

リスク管理として重要さを増す「コンプライアンス」

 企業経営は「コンプライアンス(法令遵守)」が重要視されている。直接の法的違反でなくとも、「倫理や社会貢献などに配慮した行動」に反した社会的な不適切行為は消費者、取引先などの信頼を失い、事業継続が困難に至るケースも多い。企業にとってコンプライアンスはリスク管理という観点からも経営の重要課題として認識されてきた。

「コンプライアンス違反」倒産は190件、前年度より1割減

 2015年度に「コンプライアンス違反」が一因で倒産した企業は190件(前年度比12.0%減、前年度216件)だった。金融機関が中小企業のリスケ要請に柔軟に応じているなどで、企業倒産の沈静化が図られ、「コンプライアンス違反」企業の経営破綻も表面化するケースが少なくなっているとみられる。ただし、中小企業は大手に比べて業績回復のピッチが鈍く、今後の景気動向によっては「コンプライアンス」違反が露呈して経営破綻するケースが増加する可能性も払拭できない。

コンプライアンス違反関連倒産

違反内容別、「粉飾」が前年度より増加

 190件の違反内容別では、不正な会計処理や虚偽の決算書作成などの「粉飾」が28件(前年度比7.6%増、前年度26件)で前年度を上回った。
 また、脱税や滞納など「税金関連」が50件(同26.4%減、同68件)、補助金や介護・診療報酬などの「不正受給」が14件(同22.2%減、同18件)、詐欺・横領が10件(前年度11件)、賃金未払いなどの「雇用関連」が9件(同3件)、食品の産地偽装など「偽装」が4件(同7件)だった。
 なお、「その他」70件の中には、建設業法や医師法、など業法違反、法人税法や特定商取引法などの法令違反、行政処分、代表者の逮捕などを含まれている。

負債1億円未満の小規模倒産が3割を占める

 190件の負債総額は2,801億8,000万円(前年度比80.9%増、前年度1,548億4,000万円)と大幅に増加した。これは年金資産消失事件を起こした、年金資産運用の(株)MARU(旧・AIJ投資顧問)(東京・負債1,313億円)の大型倒産が影響した。ただし、全体では負債1億円未満が66件(構成比34.7%、前年度75件)と、小規模倒産が3割を占めている。
 このほか主な倒産事例では、ワイン取引について継続的に虚偽報告をしていた、国内唯一のワイン投資ファンド会社の(株)ヴァンネット(東京都・負債38億2,700万円)。販売していた有機肥料の成分表示を偽装していた肥料製造販売の太平物産(株)(秋田・同32億7,600万円)。廃棄食品を横流ししていた産業廃棄物処理会社のダイコー(株)(愛知・同9億円)など。

産業別、サービス業他が最多の53件

 産業別では、サービス業他が53件(構成比27.8%)で最も多かった。次いで、製造業28件、建設業26件、卸売業24件、運輸業20件、小売業18件、情報通信業7件、金融・保険業と不動産業が各6件、農・林・漁・鉱業が2件だった。
 最も多かったサービス業他では、飲食関連が10件、医療、老人福祉関連が10件、建築設計業が4件、ホテル・旅館が3件など。これらの中には売上不振から税金を滞納したケースや、経営不振から介護報酬や診療の不正請求などに手を染めたケースもみられた。


 企業の社会的責任が重視されるとともに、コンプライアンスの徹底が金融機関の融資継続の条件や、企業間の取引条件にも重要な要素になってきた。しかし、こうしたなかにあってもコンプライアンス違反企業は後を絶たない。粉飾決算や、脱税・税金滞納、不正受給などは業績不振の企業に多く、2015年度調査では全体の件数が減少したものの、違反内容別では「粉飾」が増加したのが目を引く。これは、アベノミクスによる景気回復の波に乗り遅れた中小企業の一端を反映したものといえる。景気の先行きに不透明感が出てきたなかで今後の動向が注目される。

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