• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2015年「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 介護報酬が2015年4月から9年ぶりに引き下げられたが、2015年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」の倒産は76件に達した。前年に比べて4割増になり、介護保険法が施行された2000年以降では過去最多になった。介護職員の深刻な人手不足という難題を抱えながら、業界には厳しい淘汰の波が押し寄せている。


  • ※調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

2015年は過去最多の76件に達する

 全体の企業倒産がバブル景気時並みの低水準で推移するなか、2015年(1-12月)の老人福祉・介護事業の倒産は過去最多の76件(前年比40.7%増、前年54件)に達した。
 この一方、負債総額は63億8,600万円(同5.6%減、同67億7,200万円)と前年を下回った。負債10億円以上の大型倒産がゼロ(前年1件)に対し、負債5千万円未満が50件(前年比42.8%増、前年35件)と増加し、小規模倒産が大半(構成比65.7%)を占めている。

老人福祉・介護事業の倒産 年次推移

デイサービスを含む「通所・短期入所介護事業」の倒産が約2倍増

 2015年の老人福祉・介護事業倒産の内訳をみると、施設系のデイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」が29件(前年比93.3%増、前年15件)と約2倍増で、増勢が目立つ。また、「訪問介護事業」も29件(同20.8%増、同24件)と前年を上回った。

設立5年以内の倒産が過半数を占める

 2010年以降に設立した事業者の倒産が40件(構成比52.6%)と過半数を占め、設立から5年以内の新規事業者が目立つ。従業員数別でも、5人未満が48件(前年比60.0%増、前年30件)と増加をみせ、小規模事業者の倒産が全体の6割(構成比63.1%)を占めた。このように、小規模かつ新規事業者が倒産増加の中心になっている。

形態別、事業消滅型の破産が9割

 原因別では、最多が販売不振(業績不振)の35件(前年比16.6%増、前年30件)。次いで、事業上の失敗が20件(前年比42.8%増)、既往のシワ寄せ(赤字累積)が7件(前年1件)の順。
 形態別では、事業所の解体・消滅である破産が73件(前年比46.0%増、前年50件)と全体の9割(構成比96.0%)を占めた。この一方で、再建型の民事再生法は3件(前年2件)にとどまり、業績不振の事業者では再建が難しいことを物語った。

まとめ

 2015年に介護報酬が引き下げられたが、老人福祉・介護事業の倒産は調査開始以来で最多の76件に達した。今回の介護報酬改定では、基本報酬がダウンした一方で、充実したサービスを行う施設への加算が拡充された。しかし、小規模事業者では加算の条件を満たせないところも多い。特に、定員10人以下の小規模デイサービスの基本報酬の下げ幅が大きく、その影響が懸念されていたが、デイサービスを含む「通所・短期入所介護事業」で倒産の増加が際立った。
 2015年末に厚生労働省は2016年度「診療報酬改定率」を決定し、在宅復帰を促す病院の早期退院システムが一段と強化される見込みとなった。これに伴い介護職の役割がさらに重要性を増している。介護報酬改定で介護職員処遇改善加算が上乗せされたが、必要な加算の届出をしていない事業所がまだ多いとみられる。また、各種加算取得のための職員増加がかえって人件費等の支出など先行投資負担が増しているとの指摘もある。
 「老人福祉・介護事業」の倒産件数は、2015年12月に10件発生し、3月(11件)以来、9カ月ぶりに2桁に乗せた。人口減少と高齢化が進む中、資金力が乏しく、収益改善が遅れている小規模な事業者の自律的な業績拡大がどう展開するか注目される。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ