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2015年1-11月「通信販売・訪問販売小売業」の倒産状況

 ネット通販市場が拡大している。だが、通信販売・訪問販売小売業の倒産は2015年1-11月累計で2009年の調査開始以来、最多の64件に達した。消費者動向の変化や同業間の競合に加え、輸入品を扱う業者では円安加速によるコストアップが経営難に拍車をかけたケースもみられた。
 また、ネットサイトの不正ポイント取得など、急成長に伴うコンプライアンス違反の発生など、問題も投げかけている。通販業界は地域や規模などの参入障壁が低く、固定客を掴むと経営が安定しやすい。しかし、この一方で消費者の嗜好変化や口コミなどの評判に左右されやすく、マーケティングなど経営のかじ取りが難しいことを浮き彫りにしている。


2015年1-11月の倒産は64件

 企業倒産がバブル期並みの低水準で推移しているが、2015年1-11月累計の通信販売・訪問販売小売業の倒産は64件(前年同期比39.1%増、前年同期46件)に達した。これは調査を開始した2009年以降では2013年(56件)の年間件数を上回り、すでに年間ペースの最多記録を塗り替えている。
 負債総額は168億2,600万円(前年同期比374.7%増、前年同期35億4,400万円)で、前年同期比4.7倍増と大幅に増えた。前年は発生がなかった負債10億円以上の大型倒産が2件発生したことで、1件当たりの平均負債額も2億6,200万円(前年同期比240.2%増、前年同期7,700万円)と膨らんだ。

通信販売・訪問販売小売業の倒産 年次推移

業種別倒産 アパレル関連が2.2倍増

 2015年1-11月の通信販売・訪問販売小売業の倒産をみると、アパレル関連などの「衣服・身の回り品小売」が最多の20件(前年同期比122.2%増、前年同期9件)と2.2倍増と急増した。また、インテリア用品や美術工芸品など「その他」が17件(同30.7%増、同13件)、家電などの「機械器具小売」が8件(同166.6%増、同3件)と前年同期を上回った。

形態別 破産が9割

 形態別では、企業が解体・消滅する破産が61件(前年同期比45.2%増、同42件)で、全体の9割(構成比95.3%)を占めた。一方、再建型の民事再生法は発生がなく、業績不振に陥った企業の再建が難しいことを物語っている。
 原因別では、販売不振(業績不振)が前年同期同数の39件。次いで、他社倒産の余波が8件(前年同期2件)、事業上の失敗が8件(同2件)、運転資金の欠乏が4件(同ゼロ)の順だった。

従業員5人未満が3割増

 従業員数別では、5人未満が52件(前年同期比33.3%増、前年同期39件)と増え、小規模事業者の倒産が全体の8割(構成比81.2%)を占めた。また、2010年以降に設立された事業者は18件(構成比28.1%)で、設立から日が浅い5年以内の新規事業者が約3割を占めた。

まとめ

 業界団体の日本通信販売協会の調べでは、2014年度の通信販売市場の売上高(速報値)は6兆1,500億円に達し、1999年度以降16年連続で前年を上回った。スマートフォンサイト経由の取引拡大を背景に、楽天やアマゾンなどプラットフォーム系企業が全体を牽引し、さらに中小企業のネット通販への参入など裾野の拡大が影響しているようだ。
 こうしたなか、通信販売・訪問販売小売業では倒産が過去最多の記録を更新中である。通販事業は、個人でも、人手が少なくても、事業の立ち上げが可能だ。だが、一方で消費者の嗜好変化や評判に敏感に左右される面が強い。また、スマートフォンの普及でネット利用が増大しているが、同業との差別化などの「強み」がなければ淘汰され、そのスピードが速くなっている。
 倒産事例をみると、アベノミクスの円安加速で輸入品などのコストが上昇し、価格面での競争力を喪失して企業体力が消耗した事例も増えている。このため個人消費の回復度合いに加えて、円安基調がどう展開するか今後の推移が注目される。

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