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「くい打ち業者」倒産動向調査

 2010年1月から2015年10月の間に倒産した「くい打ち業者」は43件だった。形態別では、銀行取引停止処分による倒産が14件で全体の32.5%を占めた。同じ時期の倒産全体における取引停止処分の比率は15.3%(6万6,167件のうち1万173件)で、銀行取引処分による倒産割合の高さが目立つ。背景には、手形による決済比率が他業種より高いことや、小・零細規模ゆえの慢性的な資金繰りの多忙感、工期のズレ込みや取引先の倒産による予定していた入金の狂いなどが考えられる。廃業や存在不明となった企業は本調査の対象外である。これらの中にも資金繰りに余裕を欠いていた企業は存在するとみられる。


  • 本調査は東京商工リサーチが保有する企業データベースより、2010年1月から2015年10月までに倒産した企業を抽出し、分析した。
  • 本調査における「くい打ち業者」は、主扱い品、従扱い品として「くい打ち工事」、「くい打ち業」「コンクリートくい打ち業」が登録されている企業とした。

くい打ち業者倒産 年間推移

主な事例

 (有)摺木組(2015年7月破産、TSR企業コード:401032868、愛知県)
 コンクリートくい打工事を主力に事業を展開。ゼネコンや地場の土木工事業者からの工事を請け負い、ピーク時の1996年8月期には約5,500万円の完工高を計上していた。しかし、慢性的に低採算で最終赤字が先行する利益推移にあり、長らく債務超過状態にあった。さらに、近年は受注が減少し、2014年8月期の完工高は約1,800万円へ低下。先行きを見通すことが出来ず、2015年7月に破産開始決定を受けた。負債総額は約5,000万円。

 (株)地研工業(2013年5月銀行取引停止、TSR企業コード:870530984、福岡県)
 1994年4月に「百田土木」の屋号で創業し、1997年6月法人化されたくい打工事業者。地質調査工事、深層地盤改良、既製くい打込工事、場所くい打工事を主力に業容を拡大。エスミコラム工法、FB9鋼管中堀認定工法など各種工法による技術的な評価は高く、同業者に先行してくい打機を導入するなど設備面も充実。一級建築士など資格取得者を複数抱える強みも持ち、設計から施工、監理まで一貫して自社対応が可能であった。北部九州地区を営業エリアとし、各地のゼネコンなどに受注基盤を築き、ピークの2009年5月期には、完工高約11億2,100万円をあげていた。
 しかし、リーマン・ショック(2008年)後のマンション需要の減退や建設業界の低迷などで受注は減少傾向を辿り、2012年5月期の完工高は約7億3,900万円にまで下落。その間、取引先の倒産に伴う焦付も散発し、利益水準も低下。資金繰りの悪化から従業員の離職も目立ち、2013年5月に銀行取引停止処分を受けた。負債総額は約2億9,000万円。

くい打ち業者倒産 形態別

 2010年1月から2015年10月までの「くい打ち業者」の倒産は43件で負債総額は97億8,600万円だった。従業員別では、20人未満が39件で全体の90.6%を占めており、小・零細規模のくい打ち業者の倒産が多いことが分かった。
 形態別で最も多かったのは、破産で26件(構成比60.4%)。次いで、銀行取引停止処分の14件(同32.5%)となった。銀行取引停止処分は、慢性的に資金繰りが多忙な企業が、突発的な事象により決済資金の不足が生じた際に引き起こしやすい。くい打ち業者が多く属する建設業や製造業は、手形に依拠した決済が比較的多い業種である。財務体質が従前より脆弱で資金繰り弾力性の低い小・零細規模のくい打ち業者は、工期遅れや取引先の倒産などによる資金計画の狂いが致命傷となりやすい構図が浮かび上がった。

 旭化成建材(株)(TSR企業コード:291364748、千代田区)のくい打ちデータ偽装により、施工監理の体制が強化される可能性が出ている。監理強化に伴い工期が長期化した場合、資金繰り計画の狂いに伴う倒産が引き起こされかねない。住民や建物購入者が安心できる監理体制の構築は必要だが、同時にくい打ち業者を含む小・零細規模の工事業者の資金繰りへの配慮も求められる。

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