• TSRデータインサイト

2015年3月期「中小企業の業績」動向調査

 資本金1億円未満の中小企業の2015年3月期決算は、売上高総額が前期比0.4%増だった。四半期毎に比較すると増収幅は2014年9月期(前期比6.0%増)、2014年12月期(同3.2%増)に比べて大きく鈍化。全体のなかで増収企業が占める割合は47.8%と、2014年12月期決算に引き続いて5割を割り込んだ。利益面では利益総額は前期比3.0%増と伸びたが、四半期前(2014年12月期)と比較して黒字企業率が8.7ポイント低下、減益企業率は5.1ポイント増加した。
 中小企業の決算は大企業を追いかける形で増収増益基調をたどっていたが、2015年3月期決算は売上・利益ともに伸長率の鈍化が目立った。
 産業別の売上高は、小売業、不動産業、金融・保険業、卸売業の4産業で前期を下回った。利益面では小売業のみ前期比6.9%減の減益で、小売業の「一人負け」が鮮明になった。円安による仕入価格の高騰や、人手不足に伴う人件費高騰なども収益の圧迫要因となっているようだ。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約401万社)より、2015年3月期決算が判明した資本金1億円未満の企業データ10万1,500社を無作為に抽出し分析した。

調査概要

大企業・中小企業ともに増収率が大幅低下、赤字・減益企業の比率アップ

 資本金1億円未満企業の中小企業の2015年3月期の売上総額は前期比0.4%増と増収だった。ただ、2014年9月期(前期比6.0%増)、2014年12月期(同3.2%増)と比べ伸び率を大きく落とし、かろうじて増収を確保するにとどまった。大企業中心で構成される資本金1億円以上の企業も同様に推移し、2015年3月期は前期比0.8%増にとどまった。また、中小企業の増収企業数の割合は47.8%と、2四半期連続で過半数を割り込んだ。
 利益面は、総額は前期比3.0%増にとどまり、2014年12月期(前期比7.6%増)、2014年9月期(同17.4%増)に比べ伸びが大きく鈍化した。赤字企業率(構成比22.5%)、減益企業率(同45.5%)が上昇し、採算面で苦戦する中小企業が増加している構図が明らかとなった。

産業別売上高 4産業で前期比減収

 産業別の売上高合計は10産業中、小売業、不動産業、金融・保険業、卸売業の4産業で前期比減収に転じ、全産業で前期比増収だった過去2四半期に比べて対照的な結果となった。
 なかでも減収率が前期比3.9%減と最も高い小売業は増収企業が31.8%と、約3割にとどまり苦戦している。インバウンド需要などで明るい兆しが見えつつある小売業界だが、大手業者に比べて中小企業には恩恵が行き届いていないようだ。

産業別損益 小売業、サービス業他の悪化が顕著

 産業別の利益合計は10産業中、小売業を除く9産業で増益となった。減収幅が最大だった小売業は利益面でも前期比6.9%減と全産業の中で唯一減益となった。また、赤字企業の割合ではサービス業他が28.9%と最も高かった。
 小売業や飲食業など中小の内需型企業は、人件費高騰や円安による仕入価格上昇が収益を圧迫しているようだ。根本的には競争力の弱い中小企業が打開策を見出せない状況が続いている。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ