• TSRデータインサイト

2015年3月期決算 上場企業GC注記25社、重要事象42社

 2015年3月期決算を発表した上場企業2,451社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)が付いた企業は25社だった。前年度本決算(2014年3月期、27社)より2社減少し、2014年9月期中間決算(28社)より3社減少した。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は42社で、前年度本決算(32社)、前中間決算(31社)より大幅に増加した。円安、株高を背景に大手メーカーなどの上場企業の好決算が目立つ一方で、GC注記と重要事象の合計数ではリーマン・ショック直後の2009年3月期以来、6年ぶりに増加に転じた。GC注記や重要事象記載企業は新興市場や東証2部など新興・中堅企業が大半を占め、上場企業の中でも業績の二極化がますます鮮明となっている。

  • 本調査は、3月期決算で東証から新興市場までの全証券取引所に株式上場する企業を対象に、2015年3月期決算短信で「GC注記」及び「重要事象」が記載された企業の内容、業種を分析した。(6月2日までの決算短信発表分)

件数推移

GC注記・重要事象の付記企業は合計67社、前中間期から8社増加

 2015年3月期決算でGC注記が付いたのは25社で、2014年9月中間決算(28社)から3社減少した。前中間決算のGC注記企業のうち3社の注記が外れたが、スカイマーク(株)(元東証1部、東京都)が倒産し、上場廃止となった。また、前中間期でGC注記が付いた(株)オプトロム(名証セントレックス、宮城県)は、過去決算の訂正などを理由に決算発表が遅延している。前中間期にはなかったが、新たにGC注記が付いたのは21LADY(株)(名証セントレックス、東京都)、(株)田中化学研究所(JASDAQ、福井県)の2社。両社は前中間期では「重要事象の記載」にとどまっていたが本決算ではGC注記となった。なお、4月30日に民事再生法の適用を申請した江守グループホールディングス(株)(元東証1部、福井県)が公表した3月期決算にはGC注記が付いていたが、5月31日をもって上場廃止となっている。

重要事象の記載があった上場企業は42社で、前中間決算(31社)より11社増加した。このうち前中間決算では記載がなかったが当決算で新たに記載されたのは20社で、記載企業の約半数を占めた。巨額の赤字を計上し、再建の行方が注目されるシャープ(株)(東証1部、大阪府)は2014年3月期本決算までは重要事象の記載があり、2014年9月中間期は一旦外れていたが、当決算で再度記載された。また、AV関連機器メーカーのティアック(株)(東証1部、東京都)、オンキヨー(株)(JASDAQ、大阪府)なども重要事象を記載した。

GC注記企業、本業不振が8割

 GC注記25社のうち、20社(構成比80.0%)が「重要・継続的な売上減」、「損失計上」、「営業キャッシュ・フローのマイナス」など、本業不振を理由としている。次いで「資金繰り懸念・資金調達難」5社(同20.0%)、「再建計画遂行中・その他」4社(同16.0%)、「金融機関や取引先などへの支払条件変更・遅延」3社(同12.0%)と続く。売上減や赤字計上など、本業悪化を理由とした注記が8割を占め、深刻な業績不振から脱却できない上場企業に継続してGC注記が付くケースが中心。債務超過企業は2社(同8.0%)だった。債務超過は1年内に解消できなければ原則上場廃止となるため、業績回復による利益確保か新たな資本増強策が求められる。
※注記理由は重複記載のため構成比合計は100%を超える

業種別では製造業が約5割、新興市場と中堅規模が中心

 GC注記企業25社の業種別では、製造業が11社(構成比44.0%)と5割近くを占めた。業歴のある老舗ながら大手の下請メーカーなど中堅規模が中心。上場区分別では、25社のうち新興市場が15社(同60.0%)を占めた。東証1部の代表される大手と、業績悪化から浮上できない新興・中堅クラスとの格差がはっきりと表れている。

 上場企業の倒産はリーマン・ショック時の2008年の33社をピークに2009年20社、2010年10社、2011年4社と減少傾向で推移し、2014年は1990年以来、24年ぶりに発生ゼロだった。倒産の減少に伴い、GC注記と重要事象の記載企業も減少してきたが、2015年は5月末時点でスカイマーク、江守グループホールディングスが倒産し、2社にはそれぞれ直近決算でGC注記が付いていた。GC注記と重要事象記載企業の合計数が6年ぶりに増加に転じたのは、格差拡大による業績不振企業が増えつつある事の裏付けとも言え、引き続きGC注記企業や重要事象の記載企業の動向が注目される。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ