• TSRデータインサイト

2015年3月期決算「第4四半期 想定為替レート」調査

 東証1部、2部上場メーカー73社のうち、半数の企業が2015年1月以降の第4四半期の想定為替レートを1ドル=115円に設定した。外国為替市場の対ドル相場での円安基調の追い風を受けて、輸出企業は軒並み好業績をあげている。

  • 本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー(3月本決算企業)のうち、2015年3月期決算の業績見通しで第4四半期(2015年1月以降)の想定為替レートが判明した73社を抽出した。資料は決算短信、業績予想等に基づく。

2015年1月以降の想定為替レート 1ドル=115円が最多

 東京証券取引所1部、2部に上場する主なメーカー73社(3月本決算企業)では、2015年3月期決算の第4四半期(2015年1月以降)の業績見通しで、対ドル相場を1ドル=115円に想定した企業が37社(構成比50.6%)で最も多かった。次いで、110円が8社(同10.9%)、100円と118円が各5社と続く。想定レートの最安値は120円だった。
なお、期初時点では、対ドル相場を1ドル=100円とした企業が55社(構成比75.3%)と全体の7割を占めていた。

2015年3月期 第4四半期ドル想定為替レート分布

期初とのレート比較 1ドル=100円から115円への変更が34社

 第4四半期の想定レートと期初との比較では、「100円から115円」に変更が34社(同46.5%)で最も多かった。1円の為替変動でも業績に大きく反映する輸出関連企業にあって、期初より15円も円安に変更する企業が目立ち、業績面への恩恵が大きいことをうかがわせた。
次に、「100円から110円」に変更の7社(同9.5%)、期初の「100円」と変わらずが4社、「98円から115円」と「100円から105円」に変更が各3社と続く。

2015年3月期 第4四半期ドル想定為替レート 期初変更状況

円安は一進一退ながら、緩やかに展開

 2015年の円相場は1ドル=120円台からスタートしたが、1月中旬からは原油価格の下落などを背景に一時115円台まで円高に振れた。その後は調整色を強め、月末にかけては1ドル=118円前後で展開し一進一退で推移した。今後も円安基調が緩やかに続くとの見方が多い。

対ユーロ想定為替レート 1ユーロ=135円が最多

 参考に、上場メーカー73社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した57社をみると、第4四半期の対ユーロ想定レートで最も多かったのは、1ユーロ=135円の32社(構成比56.1%)だった。次いで、130円と140円が各7社、139円が4社、138円が3社と続く。最安値は144円だった。なお、期初時点でも1ユーロ=135円で想定する企業が多かった。
外国為替市場のユーロ円相場は、2014年10月末の日銀の追加緩和発表後は一気にユーロ高が進み、12月には1ユーロ=150円近辺まで展開した。しかし、2015年になって原油価格の下落やギリシャ総選挙での反緊縮派の勝利などを受けて、1月下旬にかけて130円台前半で推移した。今後もEU内でのギリシャに対する支援体制などで政治リスクが高まれば、ユーロ安がさらに進む可能性がある。

2015年3月期 第4四半期ユーロ想定為替レート分布

 対ドル相場での円安の進行は、輸出関連の大手企業には業績上昇の追い風になっている。こうした一方で、原油備蓄が義務付けられている国内石油元売各社は、軒並み在庫の評価損を計上した。また、中小企業にとっては、輸入物価を押し上げでコスト高を招く影響も無視できない。
このように、円安はメリットを享受する企業だけでなく、デメリットを被るケースもあり明暗が分かれるため、今後の為替相場の動向が注目される。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ