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「ケーキ業界」400社の動向調査

 今年もいよいよ「クリスマス」。街ではクリスマス・デコレーションケーキが店頭に並ぶシーズンがやってきた。ケーキ業界にとっても、この時期は一年の書き入れどきだ。
最近のケーキ取扱業者の動向調査を行ったところ、ケーキ業界は全体に増収傾向にあり、中小業者の健闘が目立った。大手企業を中心に特別損失計上などにより利益は前期比で減少も見られたが、8割の業者が黒字だった。
ケーキ業界は資本金5千万円未満の中小業者が全体の8割以上を占め、材料費高騰など、様々な課題を抱えながらも増収・増益を達成した業者が多く、頑張りが目立つ。
「ケーキ屋さんだけに景気(ケーキ)の後押しを受けたのか?」。今年のクリスマス商戦にも景気回復の期待がかかるようだ。


  • 本調査はTSR企業データベース267万社より、2012年9月~2014年8月までの期間で売上高・当期純利益が比較可能なケーキ製造・卸・小売を行うケーキ取扱業者400社を抽出、企業の分布および業績を調査した。なお、「ケーキ業界」動向調査は今回が初めて。

ケーキ業界400社の業績状況

売上高別 5億円未満の中小業者が6割

 抽出400社の売上高別では、1億円以上5億円未満が131社(構成比32.8%)、1億円未満が115社(同28.8%)で、5億円未満が合計246社(同61.5%)と中小業者が全体の6割以上を占めた。
50億円以上100億円未満は24社(同6.0%)、100億円以上は20社(同5.0%)で、売上高50億円以上の大手クラスは44社(同11.0%)と全体の約1割にすぎなかった。

損益別 約8割が黒字

 400社全体の損益別では、最新期が黒字の企業が320社(構成比80.0%)、赤字は80社(同20.0%)だった。前期についても黒字、赤字は最新期と大差なく、損益に大きな変動は見られなかった。
円安や小麦粉の価格上昇による材料費高騰や人件費上昇は、ケーキ取扱業者の収益に少なからず影響をおよぼしている。しかし、最近では「お取り寄せスイーツ」が人気を呼ぶなど、スイーツブームは持続している。新商品開発や売れ筋商品を取りそろえて増収によりコスト増を吸収し、2年連続して約8割のケーキ取扱業者が黒字だった。

資本金別 5千万円未満が8割以上

 資本金別では、1千万円以上5千万円未満が181社(構成比45.3%)、1百万円以上1千万円未満が129社(同32.3%)だった。資本金1億円以上は22社(同5.5%)で、個人企業他19社(同4.8%)を含む資本金5千万円未満の中小業者が334社(同83.5%)と全体の8割以上を占めた。

業歴10年以上が約8割

 業歴別では、10年以上50年未満が185社(構成比46.3%)、50年以上100年未満が111社(同27.8%)、 100年以上が21社(同5.3%)で、業歴10年以上の業者が合計317社(同79.3%)と全体の約8割を占めた。
ケーキ取扱業者は長い業歴を有する企業が多く、業歴100年以上の和菓子業者がケーキ作りにも手を広げたという例もあり、和と洋の伝統を引き継いでいる。

売上高は2年連続で増収

 最新期の売上高合計は、1兆5,028億8,300万円で、前期(1兆4,557億9,700万円)より3.2%(470億8,600万円)増加した。増加率は前期の1.4%(205億3,600万円)をさらに上回った。
一方、最新期の当期純利益の合計は144億1,400万円で、前期より16.1%(27億6,800万円)減少した。
増収の背景には最近のスイーツブームに加え、国内景気の回復基調も背景にあると見られる。
また、全体の利益が減少した要因には、大手業者を中心に退店に伴うリストラ費用や減損損失など、一度に多額の特別損失を計上したことなどがある。

中小業者238社は「増収増益」で健闘

 ケーキ取扱業者が集中する資本金5千万円未満の区分で、かつ売上高5億円未満の中小業者238社を抽出した。
売上高合計は348億4,500万円で、前期(346億200万円)より0.7%(2億4,300万円)増加した。前期増加率0.5%を上回り増加幅が拡大した。最新期の当期純利益合計は1億2,900万円で、前期より6,200万円(92.5%)増加した。
400社全体の当期純利益が、前期より16.1%減少するなかで、中小業者については当期純利益が前期比約2倍の増加を示す健闘ぶりを見せた。

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