• TSRデータインサイト

2014年3月期「中小企業の業績」動向調査

 資本金1億円未満の中小企業の2014年3月期決算は、売上高が前期比3.9%増、利益も同9.1%増と増収増益だった。2013年9月期以降、中小企業の決算内容は増収基調が鮮明になり、景気回復が中小企業にも浸透している。しかし、赤字企業は全体の20.0%あり、2013年12月期と比較すると6.0ポイント増加した。利益総額は増加したが、赤字企業の割合は増えるなど、景気回復の波に乗り切れず「利益なき成長」をたどる企業も少なくないことがわかった。
産業別では10産業中、金融・保険業を除く9産業で増収だった。利益面ではサービス業だけが減益だった。サービス業は2013年9月期以降、連続して減益が続いている。飲食、小売業などを中心に人手不足に伴う人件費高騰、電気代や原材料代などの上昇が収益を圧迫しているようだ。

  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約285万社)より、2014年3月期決算が判明した資本金1億円未満の企業データ4万885社を無作為に抽出し分析した。

中小企業は増収幅が拡大、赤字企業の比率はアップ

 資本金1億円未満企業の中小企業の2014年3月期の売上高合計は前期比3.9%増と増収だった。2013年9月期(前期比3.3%増)、2013年12月期(同2.7%増)と比較すると増収幅は、3期連続で増加した。一方、大企業中心で構成される資本金1億円以上企業の2014年3月期は前期比6.9%増で、資本規模の格差で増収率の違いを裏付けた格好となった。ただ、資本金1億円未満企業の中小企業も、大企業の業績回復をタイムラグはあるが追いかけている。
また、資本金1億円未満の増収企業数の割合は55.8%で、2013年12月期(46.1%)から9.7ポイント増加し、増収企業が過半数を超えた。

決算期別売上高増減率、増減収企業率

 利益合計は前期比9.1%増だった。しかし、収益面では資本金1億円以上の大企業は同93.2%増と高い伸びを示し、規模格差が鮮明となった。資本金1億円未満の中小企業の赤字企業は20.0%で、2013年12月期(14.0%)から6.0ポイント増加した。全体では増益だが、赤字企業の割合が増加しており、収益改善につなげた企業とそうでない企業の二分化が進行している。

決算期別損益企業率、増減益企業率

産業別売上高 建設業が増収率、増収企業率ともトップ

 産業別の売上高合計は10産業中、金融・保険業を除く9産業で前期比増収となった。とりわけ建設業は前期比10.1%増と増収率トップで、増減収企業の割合でも建設業の増収企業は61.1%と10産業中、最も高かった。公共工事の前倒し発注などで活況を呈する業界環境が反映された格好で、受注増が中小の建設業者にも売上増となって波及している。

産業別 売上増減率、増減収企業率

産業別損益 サービス業の収益悪化が顕著

 産業別の利益合計は10産業中、サービス業を除く9産業で増益となった。サービス業は2013年9月期(前期比1.7%減)、2013年12月期(同17.4%減)と10産業中、唯一減益が続いている。
赤字企業の割合も26.7%と10産業中、最も高い。飲食業、小売業などで人件費や仕入価格の高騰が価格転嫁しにくいなど、収益悪化の打開策を見出せずにいるようだ。損益面では、産業別の格差がくっきりと浮き彫りとなった。

産業別 利益増減率、損益企業率

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ