上場企業 希望・早期退職者募集 53社
2013年に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業数は、前年を下回る見込みとなった。「アベノミクス」による円安・株価上昇に伴う景気回復期待から、人員削減の動きに急ブレーキがかかった。
- ※本調査の対象は、株式上場し2013年1月以降、希望・早期退職者募集の実施を情報開示、具体的な内容を確認できた企業を抽出した。希望・早期退職者の募集予定を発表したものの実施に至らない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除いた。資料は、原則として『会社情報に関する適時開示資料』(2013年11月8日公表分まで)に基づく。
希望・早期退職者募集実施の上場企業は53社
2013年に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は、53社(11月8日現在)で、前年の63社には届かない可能性が高くなった。今年の上場企業の希望退職者募集は、年初の1月だけで20社が公表し先行きが懸念されたが、4月以降はアベノミクス効果による景気回復期待もあって一転してブレーキがかかり、潮目が変わった。ただ、募集人数は1万752人にのぼり、2年連続で1万人を上回った。
募集人数100人以上が25社
募集人数の最多は、ルネサスエレクトロニクス(グループ会社を含む)の3千数百人(応募2,316人)。次いで、日本通運の800人(同764人)、日本無線の650人(同495人)、パイオニア(グループ会社を含む)の600人(同716人)、NTN(グループ会社を含む)の600人(同406人)、シチズンホールディングス(グループ会社を含む)の400人(同399人)と続く。募集人数が100人以上は25社だった。
業種別 最多は電気機器の12社
業種別で最も多かったのは、富士通、ルネサスエレクトロニクス、パイオニアなど電気機器の12社だった。次いで、機械6社、非鉄金属・輸送用機器・サービスが各4社、卸売と化学が各3社と続く。
2013年の上場企業の希望・早期退職者募集は、前年水準を下回る可能性が高くなった。ただ、上場企業の人員削減は一服するが、日本たばこ産業は2013年3月期決算で過去最高益を計上しながら、国内市場縮小の先行きを見据えて海外事業強化から国内工場を閉鎖を予定しており、国内市場の動向次第で今後も業績好調な企業が人員削減に動く可能性を残している。
JVCケンウッドは、急激な円安に伴う原材料コスト上昇から収益が悪化し、幹部職を対象に早期退職募集を計画している。こうした「為替変動」を原因にするケースのほか、ソーシャルゲーム大手、グリーは急速な事業拡大で膨らんだ人員を業績低迷の応急措置として管理部門を対象に希望退職を募集し、成長著しいネット関連企業でも経営環境に変化が出ている。
コスト削減と不採算事業の見直しは、景気動向に関わらず経営の重要課題である。収益改善に向けた上場企業の人員削減の今後の推移が注目される。