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2011年度の倒産発生率0.40% 3年連続で前年水準を下回る

2013年6月公表の国税庁統計年報(平成23年度版)に基づく普通法人の2011年度の全国倒産発生率は0.40%だった。2011年度は東日本大震災が発生したが、リーマン・ショック後の世界同時不況に対応した中小企業金融円滑化法に加え、各種の震災復興支援策などで倒産が抑制された。このため2011年度の普通法人の倒産発生率は、全国平均で0.40%(前年度比0.01ポイント低下)にとどまり、3年連続で前年を下回った。

  • 本調査は、2011年度の都道府県別の倒産発生率(普通法人)をまとめた。倒産発生率は、普通法人倒産件数÷普通法人の申告法人数×100で算出した。分子は東京商工リサーチ調べの個人企業等を除いた普通法人倒産件数とし、分母は2013年6月公表の国税庁統計年報(平成23年度版)の法人税に基づく法人数で、小数点第3位を四捨五入した。
    普通法人は、会社等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人を含む。

倒産発生率 34府県で全国平均を下回る

2011年度の倒産発生率は全国平均で0.40%(前年度0.41%)だった。都道府県別では、34府県で全国平均を下回った。倒産発生率が最も低かったのは、宮城の0.20%(前年度0.41%)で前年度から0.21ポイントと大きく減少した。次いで、鹿児島0.23%、福島0.24%、広島0.27%の順。
秋田・岩手・山形は各0.31%で並び、上位ランキング10位にランクインした。震災の直接被災地の東北は宮城県を始め、各県が幅広い支援措置で倒産が抑制されたことを物語った。

都道府県別の発生率 最高は石川の0.57%

一方、全国平均を上回ったのは13都道府県にのぼった。倒産発生率が最も高かったのは石川の0.57%(前年度0.51%)で前年度2位から上昇した。2011年度の石川の倒産件数(個人企業を含む)は、前年度比12.8%増(140→158件)で3年ぶりに前年度を上回った。国内合繊織物の一大産地だが、中国など海外の生産能力増大に伴う競争力低下から繊維工業(2→10件)の増加が目立ったほか、震災よる流通低下から運輸業が266.6%増(3→11件)と増勢した。
次いで、大阪0.52%(前年度0.53%)、鳥取0.47%(同0.38%)、東京0.47%(同0.49%)、埼玉0.46%(同0.42%)、福井0.44%、佐賀0.43%の順。

地区別発生率 最高は北陸 最低が東北

2011年度の地区別では、最も比率が高かったのは北陸の0.46%(前年度0.47%)だった。2011年度の北陸の倒産件数(個人企業を含む)は3年ぶりに前年度を上回り、繊維工業、運輸業、飲食料品製造、飲食料品小売などで倒産が増加した。
次いで、近畿0.46%(前年度0.48%)、関東0.43%(同0.44%)、北海道0.42%(同0.41%)、中部0.36%(同0.39%)、九州0.35%(同0.31%)、四国0.33%(同0.37%)、中国0.32%(同0.30%)、東北0.27%(同0.39%)の順だった。東北は前年度から0.12ポイント改善、最も比率が低かった。前年度比では、全国9地区のうち6地区で前年度を下回り、前年度を上回ったのは北海道・中国・九州の3地区だった。

産業別発生率 情報通信業が最も高い

産業別の倒産発生率は、情報通信業の0.73%(前年度0.74%)が最も高かった。2011年度の全国倒産(個人企業を含む)は、ソフトウェア業、出版業、広告制作業などで増加したが、震災でIT関連の外注抑制や、広告低迷なども影響したとみられる。
次いで、建設業0.66%(同0.69%)、卸売業0.58%(同0.60%)、製造業0.47%(同0.50%)、運輸業0.46%(同0.51%)、小売業0.31%(同0.33%)、農・林・漁・鉱業0.29%(同0.22%)、サービス業他0.29%(同0.27%)、不動産業0.13%(同0.15%)、金融・保険業0.11%(同0.13%)の順となった。


2011年度は東日本大震災が発生したが、中小企業金融円滑化法に加えて、震災関連の復興緊急保証や特別貸付などで全国的に倒産が抑制された。この結果、倒産発生率も低下したが、政策支援効果によるもので企業の自律的な業績回復が伴っていなかったことは留意する必要がある。

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