(株)ボナック
~核酸に特化した医薬スタートアップ企業~
(株)ボナック(久留米市)は2月9日、福岡地裁久留米支部に破産を申請した。
申請代理人は宮原三郎弁護士(弁護士法人みらい法律事務所、福岡市中央区警固1-12-11)。
負債総額は約15億円。
遺伝情報に直接働きかける核酸に関する研究開発に特化した医薬スタートアップ。2012年4月には核酸医薬に関するプラットフォーム技術の基本特許を国内で初めて成立させ、核酸合成製造委託(試薬~原薬)や核酸系合成技術コンサルティング、核酸フォーム関連特許ライセンス事業等を手掛けていた。
住友化学(株)(東京都中央区)からの資本提携を受け、ライセンス契約を締結して同社治験薬に用いる核酸原薬を製造していたほか、東レ(株)(東京都中央区)とは突発性肺線維症を対象としたBNC‐1021/TRK‐250に関するライセンス契約および資本提携を、旭化成(株)(千代田区)や(株)ニチレイフーズ(東京都中央区)とは製剤化に関する共同研究を行ってきた。
2012年7月には特許成立に伴う営業強化から東京支店を開設し、2013年2月にはバイオ研究の強化から「沖縄バイオ研究所」を設置。さらに、2019年4月には管理面の強化から福岡支店を開設するなど積極的に展開していた。この間、2015年10月に核酸医薬に関するプラットフォーム技術の基本特許が日米欧すべてで成立し、2018年12月期には売上高約5億7100万円をあげていた。
こうしたなか、2020年12月に福岡県および久留米市の協力のもと福岡県保健環境研究所と共同で着手してきた「新型コロナウイルス」感染症治療薬「ボナック核酸を用いたCOVID-19治療薬」の開発が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(千代田区)が実施する「医療研究開発革新基盤創成事業第5回公募」に採択され2021年4月、同機構との委託研究開発契約の締結に至った。これにより開発費として50億円の支援を受けると発表し、2025年度の承認申請を目指していた。
しかし、治療薬の有効性が確認できず目立った成果がないなか、2022年には創薬開発の中心を担っていた人物が役員を退任するなど、短期間で経営陣が大きく変化。2022年12月期は売上高が約200万円に落ち込んだうえ、約10億7800万円の大幅赤字となった。
相次ぐ増資で穴埋めしてきたものの、同期時点で約8900万円の債務超過に陥り、2023年12月末には久留米市の研究施設内に置く本社を退去。その後の動向が注目されていたところ、今回の措置となった。
※(株)ボナック(TSR企業コード:872328945、法人番号:6290001051941、久留米市合川町1488-4、設立2010(平成22)年2月、資本金1000万円)
※住友化学(株)(TSR企業コード:570098572、法人番号:2010001071327、東京都中央区)
※東レ(株)(TSR企業コード:291101356、法人番号:5010001034867、東京都中央区)
※旭化成(株)(TSR企業コード:570384648、法人番号:5120001059606、千代田区)
※(株)ニチレイフーズ(TSR企業コード:296246107、法人番号:7010001091394、東京都中央区)
※国立研究開発法人日本医療研究開発機構(TSR企業コード:014304619、法人番号:9010005023796、千代田区)