全国企業倒産状況

2025年5月の全国企業倒産857件

5月の倒産 今年最多を更新、2020年以降では初の前年同月割れ

 2025年5月度の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は、件数が857件(前年同月比15.0%減)、負債総額は903億8,900万円(同33.9%減)だった。
 件数は3月の853件を上回り、今年最多を更新したが、2カ月ぶりに前年同月を下回った。5月としては、ゼロゼロ融資などのコロナ関連支援が始まった2020年以降、5年ぶりに前年同月を下回った。
 負債総額は、3カ月連続で前年同月を下回った。5月としては2年連続で前年を下回り、3年ぶりに1,000億円を割り込んだ。これは倒産件数の減少に加え、負債10億円以上が10件(前年同月比47.3%減)、同5億円以上10億円未満が18件(同43.7%減)と大幅に減少したため。同1億円未満は665件(同11.9%減)と8割弱(77.5%)を占め、小・零細企業を中心にした推移に大きな変化はない。
 
 企業倒産は金融機関のリスケ対応などで小康状態にあるが、抜本的な経営改善が遅れた企業の息切れは続いており、しばらく前年水準で一進一退をたどる可能性が高い。

企業倒産月次推移



・形態別件数:破産が775件で、構成比は90.4%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが12県、減少30都道府県、同数5県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比77.5%、100億円以上は3カ月連続で発生なし
・業種別件数:繊維工業、汎・生産・業務用機械器具製造業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比は91.1%
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は、3カ月連続で100.0%
・「人手不足」関連倒産は、求人難10件(前年同月12件)、人件費高騰8件(同9件)、従業員退職5件(前年同月7件)で、合計23件(同28件)
・「物価高」倒産は45件(前年同月88件)で、3カ月連続で前年同月を下回り、今年最少

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、8産業で前年同月を下回る

 2025年5月の産業別件数は、10産業のうち、8産業で前年同月を下回った。
 最多はサービス業他の308件(前年同月比5.8%減)で、8カ月ぶりに前年同月を下回った。月次倒産に占める構成比は35.9%(前年同月32.4%)。
 このほか、卸売業90件(前年同月比31.8%減)が3カ月連続、製造業93件(同16.2%減)と金融・保険業3件(同50.0%減)が2カ月連続で、それぞれ前年同月を下回った。
 また、農・林・漁・鉱業11件(同35.2%減)と建設業167件(同13.4%減)、小売業82件(同22.6%減)、運輸業32件(同40.7%減)が、それぞれ2カ月ぶりに前年同月を下回った。
 一方、情報通信業35件(同25.0%増)が5カ月連続、不動産業36件(同2.8%増)が3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 金融・保険業と不動産業、サービス業他の3産業は今年最多だった。

2025年5月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移
主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、7地区で前年同月を下回る

 2025年5月の地区別件数は、9地区のうち、7地区で前年同月を下回った。
 東北67件(前年同月比4.6%増)と北陸19件(同5.5%増)が、それぞれ2カ月連続で前年同月を上回り、いずれも今年最多件数だった。
 一方、関東319件(同10.1%減)が3カ月連続、北海道24件(同20.0%減)と近畿212件(同17.1%減)、中国34件(同34.6%減)、四国17件(同10.5%減)が2カ月ぶり、中部94件(同24.1%減)が8カ月ぶり、九州71件(同21.9%減)が9カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。ただ、関東は、4カ月ぶりに300件台に乗せ、今年最多になった。

2025年5月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)ロイヤル/愛知県/スポーツ・カジュアル靴・雑貨類販売/83億3,000万円/民事再生法
2.ロボコム・アンド・エフエイコム(株)/福島県/ロボットパッケージ製造販売/32億8,400万円/特別清算
3.新光実業(株)/香川県/石油製品販売/30億円/特別清算
4.ライフタイムコンサルティング(株)/東京都/生命保険募集、損害保険代理業/24億1,000万円/特別清算
5.(有)海幸/鹿児島県/ブリ・カンパチ養殖/18億円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ