全国企業倒産状況

2024年10月の全国企業倒産909件

10月倒産では11年ぶりの900件台、負債1億円未満が今年最高の77.1%


 2024年10月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が909件(前年同月比14.6%増)、負債総額は2,529億1,300万円(同17.8%減)だった。
 件数は、2カ月連続で前年同月を上回り、7月以来、3カ月ぶりに900件を超えた。10月に900件を超えたのは2013年の959件以来、11年ぶり。
 負債総額は、3カ月連続で前年同月を下回った。2024年では7月の7,812億600万円に次ぐ2番目の高水準となった。負債100億円以上は2件(前年同月6件)と減少したが、同5億円以上10億円未満20件(同25.0%増)、同1億円以上5億円未満168件(同0.5%増)と中堅規模で増加した。また、同1億円未満は701件(同19.4%増)で、構成比は今年最高の77.1%と8割近くを占め、小・零細規模の倒産を主体に推移した。
 集計対象外の負債1,000万円未満の倒産は、48件(前年同月47件)発生した。

 1-10月の累計は8,323件(前年同期比17.6%増)で、11年ぶりに年間1万件超えが現実味を帯びてきた。
 四半期別では、2024年1-3月2,319件(前年同期1,956件)、4-6月2,612件(同2,086件)、7-9月2,483件(同2,238件)と夏場に一服したものの高水準で推移し、2022年4-6月期から10四半期連続で前年同期を上回っている。
 資金需要が活発になる年末を控えるが、コロナ禍の資金繰り支援で生じた過剰債務を解消できない企業は多い。現状は業績不振の企業の息切れに加え、売上増に伴う資金調達が追いつかない企業の黒字倒産が押し上げる形で、倒産は増勢をたどる可能性が高い。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が822件で、構成比は90.4%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが29道府県、減少15都県、同数3県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比77.1%、100億円以上は4カ月連続で発生
・業種別件数:情報関連サービス・飲食料品小売業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比は今年最高の90.6%
・「新型コロナウイルス」関連倒産は47件(同266件)で。2024年累計は2,406件
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は99.8%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち7産業で前年同月を上回る

 2024年10月の産業別件数は、10産業のうち7産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の303件(前年同月比18.8%増)で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は33.3%(前年同月32.1%)。
 このほか、卸売業95件(前年同月比6.7%増)が13カ月連続、情報通信業55件(同103.7%増)が7カ月連続、小売業103件(同27.1%増)が4カ月連続、建設業187件(同14.0%増)と製造業105件(同1.9%増)が2カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。また、金融・保険業が4件(前年同月2件)で、3カ月ぶりに発生した。
 ソフトウェア業29件(同15件)を含む情報通信業は、ここ10年間では最多となった。
 一方、農・林・漁・鉱業4件(前年同月比63.6%減)が4カ月ぶり、不動産業21件(同22.2%減)が2カ月ぶり、運輸業32件(同5.8%減)が3カ月連続で、それぞれ前年同月を下回った。


2024年10月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移
主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、7地区で前年同月を上回る

 2024年10月の地区別件数は、9地区のうち、7地区で前年同月を上回った。
 四国20件(前年同月比11.1%増)が4カ月連続、北海道29件(同3.5%増)と近畿242件(同23.4%増)、九州82件(同49.0%増)が2カ月連続、東北58件(同75.7%増)と中部113件(同22.8%増)が2カ月ぶり、北陸20件(同150.0%増)が3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、関東310件(同4.0%減)と中国35件(同12.5%減)が、それぞれ2カ月ぶりに前年同月を下回った。

2024年10月 都道府県別倒産



※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.エクシア合同会社/東京都/融資・投資事業/850億円/破産
2.船井電機(株)/大阪府/AV家電製造販売/469億6,400万円/破産
3.(株)L&A Investment/東京都/ファクタリング事業ほか/96億3,900万円/破産
4.加藤運輸(有)/千葉県/一般貨物自動車運送業ほか/68億円/民事再生法
5.アックス・グリーン・サービス(株)/青森県/一般廃棄物処分業/45億9,600万円/特別清算

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