全国企業倒産状況

2018年(平成30年)の全国企業倒産8,235件

2018年の倒産

倒産件数が過去30年で3番目に低水準の8,235件、10年連続で前年を下回る

 2018年の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)は8,235件、負債総額が1兆4,854億6,900万円だった。
倒産件数は、前年比2.0%減(170件減)。2009年から10年連続で前年を下回り、過去30年では1990年(6,468件)、1989年(7,234件)に次いで3番目に少ない水準だった。
こうしたなか、都道府県別では前年を上回ったのが26府県(前年18都道府県)、減少が19都道府県(同28県)になり、10年ぶりに「増加」が「減少」を上回った。
負債総額は前年比53.1%減(1兆6,821億6,800万円減)で、過去30年では1989年(負債1兆2,322億9,600万円)に次いで2番目に少ない金額だった。この大幅減は、前年の製造業で戦後最大倒産となったタカタ(株)(負債1兆5,024億円)の反動減に加えて、負債10億円以上の大型倒産が198件にとどまり、1989年(166件)以来29年ぶりに200件を割り込んだことが影響した。過去最悪だった2000年(23兆8,850億3,500万円)と比べて、93.7%減に縮小した。

企業倒産年次推移


  • 「人手不足」関連倒産が調査開始以来で最多の387件(前年317件)
  • 都道府県別件数:前年を上回ったのが26府県、減少が19都道府県になり、「増加」地域が「減少」地域を上回ったのは、2008年以来10年ぶり
  • 形態別:法的倒産の構成比が過去最高の92.7%を占める
  • 従業員数別:5人未満の構成比が過去30年で最高の74.3%
  • 負債額別:負債10億円以上の大型倒産198件、29年ぶりの200件割れ
  • 業種別:ゴルフ場(11→19件)、病院・医院(27→43件)、広告関連業(109→122件)などで倒産増加
  • 上場企業倒産:東証1部の日本海洋掘削(株)(6月・会社更生法)が1件発生
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)件数が10年連続で前年を下回る

産業別 小売業が10年ぶりに増加に転じる

 2018年の産業別件数では、10産業のうち7産業で前年を下回った。
こうしたなか、サービス業他は2,512件(前年比3.2%増)で3年連続で前年を上回った。また、小売業が1,132件(同1.3%増)で10年ぶりに増加に転じたことが注目される。小売業の内訳では、通信販売・訪問販売小売業(53→66件)、ガソリンスタンドを含む燃料小売業(30→41件)、食肉小売業(6→18件)などが件数を押し上げた。
一方、建設業1,431件(前年比9.3%減)で10年連続で前年を下回った。製造業1,014件(同2.5%減)と情報通信業337件(同0.5%減)は、ともに9年連続の減少。また、卸売業1,216件(同4.1%減)と運輸業238件(同0.8%減)は、ともに6年連続で前年を下回り、金融・保険業34件(同22.7%減)と不動産業257件(同7.8%減)は、2年連続で減少した。このほか、農・林・漁・鉱業が前年同数の64件だった。

2018年の産業別倒産

主要産業倒産年次推移

地区別 9地区のうち6地区で前年を上回る

 2018年の地区別倒産件数は、9地区のうち6地区で前年を上回った。
九州637件(前年比13.1%増)と中国334件(同0.9%増)がともに7年ぶりの増加に転じ、四国が164件(同17.9%増)で4年ぶりに前年を上回った。また、中部1,157件(同4.5%増)と東北358件(同10.8%増)および北陸190件(同2.7%増)が揃って2年ぶりに前年を上回った。このうち、九州の産業別では、広告業などを含むサービス業他(163→180件)や運輸業(15→34件)などが件数を押し上げ、中国は、小売業(51→67件)や卸売業(36→51件)などで増加した。
一方、関東が3,067件(前年比7.3%減)で9年連続の減少。近畿2,097件(同3.4%減)と北海道231件(同16.6%減)がともに2年ぶりに前年を下回った。なお、北海道は過去30年で最少件数にとどまった。

2018年の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当年の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. (株)ケフィア事業振興会/東京都/食品通信販売/1,001億9,400万円/破産
  2. 日本海洋掘削(株)/東京都/海洋掘削事業/904億7,300万円/会社更生法
  3. Japan Drilling(Netherlands)B.V./東京都/海洋掘削リグ賃貸ほか/321億500万円/会社更生法
  4. (株)エム・テック/埼玉県/総合建設業/253億4,900万円/民事再生法
  5. (株)ビバック/東京都/建設機械販売/185億9,000万円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ