全国企業倒産状況

2015年12月の全国企業倒産699件

2015年12月の倒産

倒産件数が699件 9カ月ぶりに前年同月を上回る

 2015年(平成27年)12月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が699件、負債総額は3,853億5,300万円だった。
倒産件数は、前年同月比1.8%増(13件増)で9カ月ぶりに前年同月を上回った。要因としては、12月末に船舶運航管理のラムスコーポレーション(株)(東京)がグループの船舶保有会社38社と同時に会社更生手続きの開始決定を受けたことが影響した。ただし、件数そのものは12月度として過去20年間で2014年(686件)に次いで2番目に少なく、低水準な基調に変わりがない。このため、当月だけでは潮目が変わったかどうかの判断がつきにくく、今後の推移を見る必要がある。
負債総額は、前年同月比116.1%増(2,070億3,900万円増)。2カ月連続で前年同月を上回り、2015年では最大規模になった。年金資産運用の(株)MARU(旧:AIJ投資顧問(株)、負債1,313億円)が破産を申請し、負債1,000億円以上の大型倒産が3カ月ぶりに発生したことに加えて、ラムスコーポレーション(株)とグループの船舶保有会社の負債合計(39社)が約1,400億円に膨らんだことが影響した。

企業倒産月次推移


  • 負債別:負債1,000億円以上の大型倒産が3カ月ぶりに発生
  • 従業員数別:5人未満の構成比が2015年で最高の73.5%
  • 原因別件数:赤字累積などの「既往のシワ寄せ」が3カ月連続で増加
  • 形態別:船舶関連グループ39社が同時に会社更生手続きの開始決定を受けたことで、会社更生法が39件に急増
  • 「チャイナリスク」関連倒産が8件発生
  • 「円安」関連倒産が8件、3カ月ぶりの1桁台
  • 業種別:電機卸売(4→9件)、宿泊業(5→8件)、情報関連サービス業(15→22件)などで増加
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)が、9カ月ぶりに前年同月を上回る

産業別 10産業のうち5産業で倒産件数増加

 2015年12月の産業別倒産件数は、10産業のうち建設業、金融・保険業、運輸業、情報通信業、サービス業他の5産業で前年同月を上回った。
このうち、建設業は129件(前年同月比2.3%増)で2014年6月以来、1年6カ月ぶりに前年同月を上回った。運輸業は59件(同90.3%増)で3カ月ぶりに増加した。船舶運航管理のラムスコーポレーション(株)とグループの船舶保有会社38社が会社更生手続きの開始決定を受けたことが影響した。また、情報通信業が29件(同31.8%増)で4カ月ぶりの増加、サービス業他が180件(同5.2%増)で5カ月ぶりに増加に転じ、内訳では自動車整備業(1→8件)や労働者派遣業(5→7件)で前年同月を上回った。
一方、製造業83件(前年同月比23.8%減)と小売業86件(同2.2%減)は2カ月ぶりに前年同月を下回り、2015年では最少だった。また、卸売業は99件(同1.0%減)で2カ月連続、不動産業は22件(同18.5%減)で2カ月ぶりに前年同月を下回った。

2015年12月の産業別倒産

産業別倒産月次推移

地区別 9地区のうち5地区で前年同月の件数を上回る

 2015年12月の地区別件数は、9地区のうち5地区で前年同月を上回った。
このうち、北陸が20件(前年同月比81.8%増)で1年8カ月ぶりに前年同月を上回った。北陸の産業別では、建設業(3→8件)などで増加が目立った。また、関東は314件(前年同月比16.2%増)、2015年7月(315件)以来の300件台で3カ月連続で前年同月を上回った。東北は21件(前年同月比16.6%増)で2カ月ぶりの増加、中国は29件(同20.8%増)で6カ月ぶりに増加に転じ、四国13件(同8.3%増)が2カ月ぶりに増加した。
これに対し、中部が64件(同28.8%減)で6カ月連続の減少、近畿は167件(同8.7%減)で4カ月連続で減少した。九州は49件(同10.9%減)で2カ月ぶりの減少、北海道22件(同4.3%減)が4カ月ぶりに前年同月を下回った。中部と九州は、2015年としては最少件数にとどまった。

2015年12月の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. (株)MARU/東京都/投資運用・顧問業/1,313億円/破産
  2. 市川総業(株)/東京都/ゴルフ場経営/92億5,900万円/民事再生法
  3. (株)コマレオ/山形県/ガソリンスタンド、ホームセンター経営ほか/39億円/民事再生法
  4. (株)大通エステート/北海道/不動産売買・賃貸/38億2,300万円/破産
  5. (株)ビューティ・ソリューションズ/東京都/エステティックサロン経営ほか/32億4,400万円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ