全国企業倒産状況

2019年度上半期(4-9月)の全国企業倒産4,256件

2019年度上半期(4-9月)の倒産

倒産件数4,256件 件数は2年ぶりに増加、「人手不足」関連倒産が202件

 2019年度上半期(4-9月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が4,256件(前年同期比3.2%増)、負債総額は5,948億7,200万円(同28.9%減)だった。
倒産件数は、年度上半期として2年ぶりに前年同期を上回ったが、過去30年間では2017年度(4,220件)に次ぐ、5番目に少ない水準にとどまった。年度上半期では、リーマン・ショック直後の2009年度(7,736件)以降、2016年度(4,216件)まで8年連続で減少した。2017年度から増加と減少を繰り返し、底打ちから増勢への気配をみせている。
負債総額は前年同期より2,426億9,700万円減と大幅に減少し、年度上半期として過去30年間で最少を記録した。これは前年同期に1件発生した負債1,000億円以上の倒産がなかったほか、同10億円以上の大型倒産が87件(前年同期98件)と2年連続で100件を下回ったことが大きな要因。 

企業倒産上半期推移


  • 「人手不足」関連倒産が年度上半期202件(前同期比7.7%減、前年同期219件)発生、このうち「求人難」は39件(前年同期35件)
  • 形態別件数:法的倒産の構成比93.2%、年度上半期としては過去最高
  • 都道府県別件数:前年同期より増加が20都府県、減少は25道府県、同数が2県
  • 地区別件数:9地区のうち、北海道と中部を除く7地区で前年同期を上回る
  • 負債額別件数:10億円以上の大型倒産が87件。年度上半期では2年連続で100件割れ
  • 産業別件数:10産業のうち、6産業で前年同期を上回る。「小売業」や飲食店を含む「サービス業他」などで増加。
  • 業種別件数:道路貨物運送業(83→104件)、飲食料品小売業(144→173件)、飲食業(381→411件)、飲食料品卸売業(117→124件)
  • 従業員数別件数:5人未満の構成比が74.5%、年度上半期では2年ぶりに前年同期を上回る
  • 中小企業倒産件数(中小企業基本法に基づく)が年度上半期では2年連続で構成比100.0%

産業別 「サービス業他」「小売業」などで増加、個人消費関連に注目

 2019年度上半期の産業別倒産件数は、10産業のうち6産業で前年同期を上回った。
件数の最多は飲食業などを含むサービス業他の1,301件(前年同期比5.6%増)で、年度上半期としては4年連続で前年同期を上回った。サービス業他のうち、飲食業(381→411件)、生活関連サービス業,娯楽業(176→201件)、医療,福祉業(149→162件)などで増加が目立った。また、小売業が647件(前年同期比13.3%増)で、年度上半期としては2年連続で増加した。10月スタートの消費増税の影響も懸念されるなか、個人消費に左右されやすい産業の推移に注目が集まる。
一方、建設業は731件(同0.2%減)で、年度上半期では11年連続で前年同期を下回った。このほか、卸売業579件(同6.7%減)は7年連続、情報通信業166件(同7.2%減)は3年ぶり、金融・保険業14件(同12.5%減)は2年連続で、それぞれ減少した。 

2019年度上半期の産業別倒産

産業別倒産上半期推移

地区別 9地区のうち、7地区で前年同期を上回る

 2019年度上半期の地区別では、9地区のうち、北海道111件(前年同期比3.4%減)と中部525件(同7.7%減)を除く7地区で前年同期を上回った。
増加したのは、東北が222件(前年同期比12.6%増)、北陸が116件(同20.8%増)、中国が176件(同9.3%増)、四国が91件(同15.1%増)、九州が355件(同7.2%増)で、2年連続で増加した。関東1,596件(同2.6%増)、近畿1,064件(同4.2%増)は2年ぶりに前年同期を上回った。北陸は3県全県で増加し、建築材料,鉱物・金属材料等や飲食料品など卸売業(4→15件)で増加が目立った。四国は飲食料品製造、繊維工業、印刷・同関連業などの製造業(9→22件)で増加。九州は小売業(53→73件)、建設業(48→68件)、不動産業(4→14件)の増加が顕著で件数を押し上げた。
一方、北海道は7年連続、中部は2年ぶりに、それぞれ減少に転じた。

2019年度上半期の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当期の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. 上海国際(株)/東京都/貿易仲介/200億円/民事再生法
  2. (株)ワイ・ケイ・ジャパン/東京都/ゴルフ場経営/162億4,200万円/民事再生法
  3. 土高興業(株)/東京都/パチンコホール、ホテル経営/110億円/特別清算
  4. おおぞら管理(株)/福井県/液晶テレビ・電子回路ほか製造販売/100億2,900万円/特別清算
  5. (株)サンヒット/埼玉県/クラフト用品・裁縫用品企画販売/82億4,300万円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ