全国企業倒産状況

2021年上半期(1-6月)の全国企業倒産3,044件

2021年上半期(1-6月)の倒産

倒産件数は50年間で2番目の低水準、「新型コロナ」関連倒産は762件発生

 2021年上半期(1-6月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が3,044件(前年同期比23.9%減)、負債総額が6,116億5,900万円(同6.9%減)だった。
件数は、コロナ禍の資金繰り支援が奏功し、上半期では2年ぶりに前年同期を下回った。1972年以降の50年間では、1990年同期(2,948件)に次ぐ、2番目の低水準となった。
負債総額は、上半期としては2年連続で前年同期を下回り、50年間ではバブル期の1989年同期(5,504億7,100万円)に次いで、4番目の低さとなった。負債1,000億円以上は5月に(株)東京商事(東京・負債1,004億8,300万円・特別清算)が発生したが、同10億円以上は78件(前年同期105件)、同5億円以上10億円未満は95件(同135件)、1億円以上5億円未満は578件(同800件)と減少。倒産件数の大幅減少もあって、負債総額を押し下げた。
ただ、1億円未満は2,293件(前年同期比22.5%減)で、構成比の75.3%は30年間で最も高く、小規模倒産を中心とした推移が一段と強まっている。
2021年上半期の「新型コロナウイルス」関連倒産は、762件(2020年2-6月247件)。1月以降、6カ月連続で100件を超えている。

企業倒産上半期推移


  • 「人手不足」関連倒産のうち、「後継者難」は188件
  • 形態別:法的倒産の構成比が上半期としては過去最高の97.4%
  • 都道府県別件数:増加4県、減少42都道府県、同数1県
  • 負債別:負債1億円未満の構成比が75.3%、上半期としては30年間で最高
  • 業種別:コロナ禍の影響が懸念される飲食業や宿泊業、アパレル関連も倒産が減少
  • 従業員数別:従業員10人未満の構成比が90.6%
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)は3,042件。上半期では2000年以降で最少

産業別 10産業のうち8産業で前年同期を下回る

 2021年上半期の産業別件数は、10産業のうち、8産業で前年同期を下回った。そのうち、農・林・漁・鉱業と建設業、製造業、卸売業、小売業の5産業が、30年間で最少となった。
長期化するコロナ禍の影響が懸念される飲食業などを含むサービス業他が996件(前年同期比23.0%減)で6年ぶりに減少し、1999年同期(897件)以来、22年ぶりに1,000件を下回った。
そのほか、建設業が527件(前年同期比18.6%減)で、13年連続で前年同期を下回った。また、小売業368件(同31.3%減)が3年連続、情報通信業107件(同19.5%減)が2年連続、農・林・漁・鉱業26件(同55.9%減)と製造業340件(同31.3%減)、卸売業412件(同28.3%減)、金融・保険業11件(同38.8%減)が2年ぶりに、それぞれ減少した。
一方、不動産業137件(同9.6%増)が2年連続、運輸業120件(同2.5%増)が2年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。

2021年上半期の産業別倒産

産業別倒産上半期推移

地区別 上半期では11年ぶりに全9地区で前年同期を下回る

 2021年上半期の地区別件数は、2010年同期以来、11年ぶりに全9地区で前年同期を下回った。また、全9地区で、上半期として1992年以降の30年間で最少となった。
北海道77件(前年同期比29.3%減)と関東1,200件(同12.8%減)が4年連続で減少。九州236件(同30.5%減)が2年連続、東北107件(同48.5%減)と中部366件(同29.6%減)、近畿775件(同24.9%減)、中国132件(同33.6%減)が2年ぶり、北陸83件(同26.5%減)が3年ぶり、四国68件(同33.3%減)が4年ぶりに、それぞれ前年同期を下回った。
北海道が30年間で初めて100件を下回り、近畿が1991年同期以来の1,000件割れとなった。

2021年上半期の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

上半期の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. (株)東京商事/東京都/ホテル経営ほか/1,004億8,300万円/特別清算
  2. (株)F-Power/東京都/電力小売/464億8,500万円/会社更生法
  3. (株)JCサービス/東京都/太陽光発電システム開発ほか/153億4,200万円/民事再生法
  4. 大興製紙(株)/静岡県/クラフト紙製造ほか/140億800万円/会社更生法
  5. (株)グリーンインフラレンディング/東京都/ソーシャルレンディング/128億円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ