上場企業「個人情報漏えい」、過去最悪を更新 ~ 1-10月速報値、約3億5,000件分が漏えい ~
不正アクセスによる企業の個人情報の漏えい報告が急増している。
上場企業とその子会社が公表した情報漏えい事故件数は、10月(速報値ベース)だけで100件以上にのぼり、2026年1-10月累計で215件の半分以上を占める異常事態だ。
2012年に集計を開始以来、歴代最多の情報漏えい事故件数だった2024年(1-12月)の189件をすでに上回り、年間最多を更新した。
1,000万件以上の漏えいが10件
2026年の事故件数は、9月まで月間10件台で推移し、前年とほぼ同水準だった。ところが、10月に入り大型事故が相次いで発生、大きく潮目が変わった。10月の事故件数は109件にのぼった。
特に、10月の特徴は件数の急増だけでなく、規模(漏えい件数)の大型化が際立っている。
2026年は10月末までに1,000万(人)件以上の漏えい事故が10件発生した。このうち、6件が10月に集中した。
1,000万件以上の事故は、前年は発生せず、2012~2025年もわずか3件で、10月の異常さが際立っている。
100万件以上1,000万件未満の事故も29件発生し、前年の6件から約5倍に急増した。
この結果、2026年の漏えいした個人情報は、10月末で累計3億4,999万・8,482件に及ぶ。前年の累計は3,063万・6,910件で、10倍以上の急増ぶりだ。日本国民の約3倍に迫る異例の情報漏えい件数となっている。
大手企業1社が保有する顧客データや会員データが、数百万件から数千万件単位規模に及ぶケースも珍しくなく、1回の事故が社会の広範囲に影響を及ぼしている。


最大は佐川急便
2026年10月までの最大の漏えい事故は、SGホールディングス(株)(佐川急便(株))の最大5,323万件(重複を含む)。Webサイトの「お荷物問い合わせサービス」が、第三者から不正アクセスを受け、顧客情報が外部に漏えいした。
9月30日に不正アクセスを受けた可能性を第1報として公表。その後、調査を進めた結果、大量の情報漏えいの可能性が明らかになった。
2012年の集計開始から2025年まで14年間で、最大の情報漏えいは(株)ベネッセホールディングス(現:(株)ベネッセコーポレーション、TSRコード:710092490、岡山市、2012年7月)の約3,504万件。これはグループ会社の業務委託先の元社員による不正な持ち出しによるものだったが、今回のSGホールディングスの情報漏えい件数は、この約1.5倍にのぼった。
SGホールディングス(株)に次ぐ漏えい規模は、東証グロース上場のユミルリンク(株)の5,162万件。自社開発のメール配信システムなどを提供していたが、一部システムに不正アクセスが発生し、メールアドレスなどを含む個人情報の大量漏えいの可能性を公表した。同社は多くの企業や自治体などにメール配信システムを提供しており、サービスを利用していた企業・自治体などの顧客情報が二次的に漏えいする事態を招き、影響が雪だるま式に広がった。
また、「無印良品」を展開する(株)良品計画が2,726万件、人気焼肉チェーン「焼肉きんぐ」運営の(株)物語コーポレーション同チェーンが1,078万件の情報漏えいの可能性を公表。いずれも、公式アプリに不正アクセスを受けたことで、顧客情報の一部が流出した。
多くの消費者を対象とする身近なBtoC企業では、多くの顧客が巻き込まれ、被害が現実のものになる可能性もある。サービス継続は当然だが、同じようにシステムのぜい弱性の強化も重要になっている。

本調査は上場企業とその子会社が集計対象で、非上場企業や官公庁で発生した情報漏えい事故は含まない。
引き続き11月以降も大型の情報漏えい事故が明らかになっており、2026年は過去に類を見ない規模で情報漏えいが広がっている。
相次ぐ情報漏えい事故に対し、政府はサイバー対応特設サイトを設置し、関係各所との連携を強化し、対策に本腰を入れている。
ただ、AIの発展や技術の高度化が進むなか、対策がいたちごっこの様相もみせている。情報セキュリティの専門企業を抱える情報・通信グループでも不正アクセスに気づくまで2か月以上かかった事例もあった。
企業はセキュリティ対策と同時に「有事の際の危機管理能力」を問われている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年11月6日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)