• TSRデータインサイト

中小業者の淘汰が加速、警備業の 「今」  ~ 警備員の半数が60歳以上、最新テックの導入格差 ~

 2025年度(4-3月)の「警備業」の倒産は2月までに21件に達し、2007年度、2024年度に並び過去20年間で最多となった。また、2025年(1-12月)の休廃業・解散は108件(前年比11.4%減)で、2年連続で100件を超えている。
 警備業界は、中小企業の淘汰が進んでいる。人手不足の深刻化や賃上げ圧力に加え、AIや監視システムなどへの投資負担が重く、体力の乏しい企業ほど経営環境が厳しさを増す。
 こうした警備業の「今」を、東京商工リサーチが探った。

歯止め掛からぬ人手不足・高齢化

 施設警備や交通誘導など労働集約型の警備業は、深夜勤務や真夏の交通誘導など、時間帯や天候などで厳しい労働環境にある。こうした業務負荷と賃金が釣り合わず、慢性的な人手不足が続いている。厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、2026年1月の警備業を含む「保安職業従事者」の有効求人倍率は6.59倍で、全体平均の1.18倍の約5倍高い。
 さらに、警備員の高齢化も進んでいる。警察庁によると、警備員のうち60歳以上が47.0%で、およそ半数がシニア世代だ。さらに、70歳以上は全体の20.9%を占めている。
 3月、ある警備現場でシニア警備員に話を聞くと、「定年退職後の再就職先としてこの職に就いた。身体と相談しながら続けていきたい」と語る。
 一方で、20代・30代は19.4%で、若年層の取り込みに苦慮しているのが現状だ。

後手に回るITツール・AIの導入

 いま、警備業界はAIカメラや遠隔監視システムなど、先端技術への対応が進んでいる。 
 施設警備では、複数のカメラ映像をAIが分析し、異常を検知するシステムや遠隔監視による無人警備などの導入が広がる。
 こうした設備投資は、人手不足を補う手段として期待されるが、導入には資金が必要だ。資金力が潤沢で、一定のニーズが見込まれる大手企業は積極的に投資を進めているが、資金繰りに余裕のない中小企業には負担が大きい。こうして、さらに規模による格差が広がっている。
 現場のシフト管理を、シニアが多い点に配慮し、ホワイトボードで管理する警備会社は少なくない。労務管理のIT化を含め、警備の省力化にむけたテクノロジー導入と、働く人の利便性の両立も、これからの課題となる。



 人手不足、高齢化、テクノロジー対応。現代社会で企業が抱える課題が、警備業者を一緒くたに襲っている。事業存続が大きな転換期を迎えているといっても過言ではない。
 中小警備会社の淘汰が進むなか、効率化と最新テックの活用が必須となる市場で、大手寡占がどこまで進むか。決して他山の石ではない。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年3月31日号掲載「取材の周辺」を再編集)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドG、「破産時の現預金が64 万円」 ~ 第1回債権者集会で管財人が報告 ~

歌手の長渕剛さんの事務所から破産を申してられたダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、2025年12月破産開始)の第1回債権者集会が、5月18日13時30分から東京地裁(ビジネス・コート)で開かれた。

2

  • TSRデータインサイト

役員報酬額 歴代最高の134億円「セブン&アイHD」デピント元取締役

(株)セブン&アイホールディングスのジョセフ・マイケル・デピント元取締役(2025年3月9日辞任)の2026年2月期の役員報酬額が、134億1,700万円と、過去最高額となった。5月20日に公表された有価証券報告書で判明した。

3

  • TSRデータインサイト

弁護士の実務経験を活かし、大学院で教授職を担う ~ 髙井総合法律事務所・髙井章光弁護士 単独インタビュー ~

 2025年度の倒産が1万505件(前年度比3.5%増)と、2年連続で1万件を超えた。2013年以来、12年振りの高水準で、抜本再生の局面にある企業が少なくない。  こうしたなか、企業法務や倒産法に強みを持ち、存在感を高めているのが髙井総合法律事務所(東京都港区)だ。

4

  • TSRデータインサイト

宗教法人、不正な法人格取得に歯止め  「不活動宗教法人」の対策強化へ

文化庁は4月27日、活動実態のない「不活動宗教法人」などが脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)などに利用されるのを防ぐため、対策検討会議を開催した。

5

  • TSRデータインサイト

居酒屋の倒産が過去最多ペース、1-4月は5割増 ~ 宴会・飲み放題の価格上昇、客離れ誘発も ~

2026年1-4月の「居酒屋」倒産は88件(前年同期比54.3%増)と急増した。1989年以降、同期間の倒産は2024年の59件を大きく上回り、最多を更新した。東京商工リサーチの企業データベースから1-4月の「居酒屋」倒産(負債1千万円以上)を抽出し、分析した。

TOPへ