「BCP」企業の49.9%が策定意向、伸び率は1%台 形骸化の懸念も、人材とノウハウ不足への支援が急務
~ 2025年「BCP策定に関するアンケート」調査 ~
台風や地震などの自然災害や感染症、テロなど、不測の事態に備えたBCP(事業継続計画)を策定している企業は28.4%だった。また、BCPの策定を予定している企業は21.4%で、策定済みと合わせても49.9%で、半数には満たなかった。
一方、策定していない理由は、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が52.2%と最も高く、「人材がいない」が43.8%と続く。策定に向けて外部の専門家などの支援の必要性が、浮き彫りとなった。
東京商工リサーチ(TSR)は10月1~8日、 BCP(事業継続計画)についてアンケート調査を実施した。BCPの「策定済み」は28.4%にとどまり「策定する予定」21.4%を含めても、策定に取り組む企業は49.9%だった。
規模別に前回調査との比較では、「策定済み」は大企業が61.8%で前回(60.5%)より1.3ポイント上昇。中小企業は25.6%で、前回(24.5%)より1.1ポイント上昇した。「策定済み」は大企業が中小企業の2.4倍に達するが、伸び率は同水準だった。
地震や台風など、相次ぐ自然災害を経てBCPの重要性は浸透してきた。だが、東日本大震災、コロナ禍では多くの企業が想定を超える影響で、十分に対応できなかった。さらに、ロシアのウクライナ侵攻では、資材調達の停滞やエネルギー価格の高騰など、地政学リスクが大きな影響を及ぼし、BCP対応の不十分さを再認識させた格好となった。
いつ訪れるかわからない様々な危機に対し、BCPは“策定して終わり”ではなく、継続的な見直しや実効性を高める姿勢が強く求められている。
※本調査は、インターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,084社を集計・分析した。2022年に続き2回目の調査。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
Q1.貴社では、BCP(事業継続計画)を策定していますか?(択一回答)
◇策定を進める企業は49.9%と半数割れ
全企業でBCPを「策定済み」が28.4%(6,084社中、1,732社)、「策定する予定」が21.4%(1,306社)で、合計49.8%と50%に届かなかった。
一方、「策定したいができない」は16.0%(977社)、「策定の予定はない」は34.0%(2,069社)で、半数がBCP策定への取り組みが進んでいなかった。
規模別で「策定済み」は、大企業61.8%(472社中、292社)、中小企業25.6%(5,612社中、1,440社)で、大企業と中小企業では36.2ポイントの差があり、事業規模の大きいほど取り組みに意欲的であることが分かった。
Q2. 「策定したいができない」「策定しておらず、策定の予定はない」と回答された方に伺います。何が策定の障壁になっていますか?(複数回答)
BCPを「策定していない」企業では、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が52.2%で最も高く、唯一、5割を超えた。
以下、「人材がいない」が43.8%、「時間がない」が34.6%の順。
BCPの策定に必要なスキル・人手・時間の確保が、企業の規模を問わず大きな壁となっている現状が浮き彫りとなった。特に、中小企業では、限られた人員で平常業務と両立させる難しさが課題となっていて、BCPの重要性は認識されていても、実際の取り組みには多くの企業が苦慮しているのが実情だ。
BCP(事業継続計画)は、不測の事態に見舞われた際、中核となる事業を継続、または早期復旧させるための計画だ。「策定済み」を規模別にみると、大企業が61.8%と6割を超えたのに対し、中小企業は25.6%にとどまり、規模により取り組み姿勢に違いが大きかった。
近年、未曾有の東日本大震災、熊本地震、新型コロナウイルスの感染拡大、そして能登半島地震などの災害が相次ぎ、企業のBCP策定の必要性は増している。
だが、BCP策定企業の約8割(82.2%)が災害などへの備えを盛り込む一方で、経営者の不慮の事態、従業員の退職、自社製品・サービスなどへの対応はいまひとつ鈍いようだ。
BCP策定の重要性は認識されているが、実際の取り組みは進んでいない。その背景に、中小企業ほどコロナ禍で経営体力を消耗し、さらに物価高に対するコストアップ、人手不足が収益の足かせになっている実態が大きい。
次の危機が、いつ、どこに発生するかは予測はできない。BCPの策定は急務だが、自社で対応できることには限界があり、価格転嫁や生産工場、データ管理などの地理的分散化など、中小企業1社では対応が難しい分野への支援も欠かせない。BCPの策定がゴールではなく、形骸化させず、常に時代に合わせて運用方法を見直す姿勢が問われている。