• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2024年度の 「推定調達金利」は1.10% 財務内容や事業性で金利格差が広がる

2024年度 企業の「推定調達金利」調査


 2024年3月、8年2カ月続いたマイナス金利が解除された。低金利時代に区切りをつけた2024年度に、企業が金融機関等から資金調達した際の「推定調達金利」(以下、調達金利)は、平均1.10%(前年度1.03%)と前年度から0.07ポイント上昇し、2016年度(1.12%)以来8年ぶりに1.1%台に乗せた。
 金融緩和に加え、ゼロゼロ融資の利子補給があった2020年度から2022年度は、1%を下回る水準で推移した。だが、2023年度以降は、コロナ支援の終了やマイナス金利の解除、段階的な政策金利の引き上げで企業の調達金利は上昇に転じている。

 コロナ禍は、幅広い企業を対象にした実質無利子のゼロゼロ融資の利用が広がり、業種や財務内容に関わらず金利差は縮小した。だが、コロナ禍が明け、再び事業性や信用性が金利決定の基盤になり、売上規模別、財務状況(資産超過・債務超過)別で金利差が拡大している。
 東京商工リサーチが実施した金融政策に関するアンケートで、メインバンクから借入金利の0.3%上昇を打診された場合の対応を聞くと、2024年10月調査では「受け入れる」が42.1%と半数を下回った。だが、2025年2月調査では54.9%と12.8ポイント上昇し、過半数を超えた。   
 現状、企業側も金利上昇への許容度を上げており、貸出金利の負担が要因となった倒産もほとんどない。ただ、コスト増加のなかでの利払い負担の増加は、収益悪化に拍車をかけることに繋がる。日本銀行は、長年続いた金融緩和を段階的に引き締めているが、トランプ関税や設備投資、賃上げへの影響を見定め、金融機関や企業との対話でタイミングを計ることが重要になっている。

※本調査の対象は、財務データ上に有利子負債および支払利息割引料のある企業22万4,073社(2024年4月期-2025年3月期)を抽出、分析した。なお、2025年3月期は集計中のため変動する可能性がある。
※推定調達金利=支払利息割引料/有利子負債と定義。各年データの最高値および最低値からそれぞれ5%を除外して平均値を算出した。


2024年度の調達金利は平均1.10%、10年国債利回りが上回る

 2024年度の推定調達金利は平均1.10%だった。コロナ禍では、資金繰り支援として利子補給付き(実質無利子)の貸付が行われ、2020年度から金利が1%を下回った。しかし、資金繰り支援の縮小・終了で上昇に転じ、2023年度以降は金利が1%を上回っている。
 10年国債利回りは、コロナ禍前の2019年度から上昇局面に入っていた。特に、2024年3月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールの撤廃とマイナス金利の解除、7月会合での政策金利引き上げなどで上昇が加速。2024年度の利回りは1.5%で、2023年度の0.75%から2倍に上昇し、調達金利を逆転した。市場金利のベンチマークとなる国債利回りの上昇が加速しており、2025年度の調達金利はさらなる上昇が見込まれる。

推定調達金利と10年国債利回り 過去10年推移

【産業別】建設業、製造業、卸売業、運輸業、サービス業他が1%台

 産業別の調達金利を分析した。2024年度の調達金利が最も高かったのは、卸売業の1.34%だった。卸売業は、2021年度までは他業種に比べて金利は低い傾向にあった。しかし、外貨建ての借入れが多い総合商社などで、米国の利上げなどを背景に2022年度以降は利払いが大きく増加し、3年連続でトップとなった。
 前年度から上昇したのは10産業中、7産業。一方、卸売業、金融・保険業、情報通信業の3産業は、アメリカの政策金利の引き下げや金利が低い大手企業が借入を増加させたことなどで全体の金利が低下した。
 調達金利が最高の卸売業(1.34%)と最低の金融・保険業(0.63%)の差は0.71ポイント。2022年度までの低金利で産業間の金利差は縮小傾向にあったが、2023年度以降は金利差が拡大し、コロナ禍を経て再び産業ごとの事業環境の違いが調達金利にも反映され始めている。

【産業別】推定調達金利 年度推移

【売上区分別】売上規模が小さいほど高金利

 売上を6レンジに分けて分析した。調達金利の最高レンジは、「1-5億円」の1.26%だった。次いで、「5-10億円」が1.19%、「1億円未満」が1.17%と続き、売上高10億円が一つの線引きとなっている。10億円以下のレンジのうち、「1億円未満」が最も低いのは、利息の設定が柔軟な役員借入金が多いためと考えられる。
 コロナ禍前の平時の環境では、信用力や担保力を背景に、売上げ規模が大きい事業者ほど低金利での借入れがしやすく、売上規模間の金利差が大きかった。だが、コロナ禍に入ると小規模の事業者を中心に、ゼロゼロ融資などの支援を受けたことで金利差が縮まった。こうしたコロナ禍の支援が終了し、再び売上規模間の金利差が開きつつある。

【売上区分別】推定調達金利 年度推移

【資本金別】「1億円未満」と「1億円以上」、僅差で推移

 2024年度の資本金別の調達金利は、「1億円未満」が1.12%で、「1億円以上」の1.10%を0.02ポイント上回った。前年度は、コロナ禍の資金支援などで「1億円以上」が「1億円未満」を初めて上回ったが、再び逆転した。
 資本金別の金利差は、2015年度では0.5ポイント差だったが、2022年度以降は0.02から0.03ポイント差と、差が小さい状態が続いている。

【資本金別】推定調達金利 年度推移

【財務状況別】債務超過企業の金利が大幅上昇

 財務状況別では、債務超過企業の調達金利は1.55%で、前年度から0.3ポイント増と大幅に上昇した。特に、資産超過企業の前年度差0.07ポイント増と比べ、上昇幅の大きさが際立つ。
 資産超過企業と債務超過企業の金利差は、2023年度に最低の0.23ポイントまで縮小した。しかし、2024年度は0.46ポイント差に拡大した。コロナ禍が落ち着き、再び事業性や信用性が金利決定のポイントになったことで、金融機関にとってクレジットリスクが高いと判断された企業は、金利上昇に直面している。

【財務状況別】推定調達金利 年度推移

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

賃金上昇、従業員退職による倒産が過去最多 8月の「人手不足」倒産 8月では最多の32件

2026年8月の「人手不足」倒産は、32件(前年同月比39.1%増)だった。8月としては、前年の23件を大幅に上回り、最多を更新した。1-8月は333件(前年同期比38.7%増)で、年間最多ペースが続く。

2

  • TSRデータインサイト

出版業の倒産急増、利益も悪化傾向 ~ 存続に向けた書店との直取引、目指す姿と課題 ~

電子書籍が普及するなか、紙の書籍を主体に手掛ける老舗出版社を中心に、「出版業」の倒産(負債1,000万円以上)が急増している。 2026年1-7月の「出版業」の倒産は21件(前年同期比90.9%増)で、2019年同期の21件以来7年ぶりに20件を超えた。

3

  • TSRデータインサイト

「フィットネスクラブ」の倒産が過去最多を更新へ 1-8月は26件、市場拡大もレッドオーシャンの兆し

拡大するフィットネス市場で、「フィットネスクラブ」の倒産が急増している。2026年1-8月は26件(前年同期比160.0%増)と前年同期の2.6倍に達し、2023年同期の16件を抜いて過去最多を更新した。 現在のペースで推移すると、2026年は年間最多の2023年の27件を上回り、40件台も視野に入ってきた。

4

  • TSRデータインサイト

泥臭い再生支援と粉飾決算、銀行員の「違和感」~ 「実務家座談会」を開催(後編)~

(後編)事業再生に携わる金融機関は企業にどう向き合うのか。東京商工リサーチ(TSR)は、事業再生に携わる金融機関の担当者に、取り組みの現状や事例、特色、留意点などを聞いた。

5

  • TSRデータインサイト

「半導体関連メーカー」生成AI普及で業績好調 売上トップはキオクシア、TSMC日本子会社は売上高約143倍

生成AIの普及やデータセンター向け需要拡大で、国内の主要半導体関連メーカーの業績が好調だ。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約440万社)から、全国の主な半導体関連メーカー154社の2025年度業績を分析した。

TOPへ