• TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

 ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。2025年8月、歌手の長渕剛さんの個人事務所から、「債務の支払不能の状態」を理由にダイヤモンドGの破産を申し立てられている(第三者破産)(※1)が、他にも未払いを抱えていることがわかった。
 債務不履行を訴える声が広がっており、ダイヤモンドGは真摯な対応と説明が必要だ。

※1 8月6日掲載「長渕剛さんの個人事務所、イベント会社に破産申立」を参照(記事はこちらをクリック)


ダイヤモンドグループのロゴ(TSR撮影)

ダイヤモンドグループのロゴ


800万円の未払い

 ダイヤモンドGの未払いを訴えるのは、イベントの企画・運営などを手掛ける一般社団法人Performing Arts Community(TSRコード: 137881924、青森県、以下PAC)だ。世界最大級のダンス&パフォーマンス複合フェスティバル「SHIROFES.」を主催し、2025年は6月27~29日の3日間開催された。
 PACは、2023年からダイヤモンドGに「SHIROFES.」のチケット発売を委託している。昨年まで支払いに問題はなかったが、今年はイベント終了後、売上に関する報告が届かず、PACが催促し、ようやく送られてきたという。これが最初の「異変」だったとPACの岩渕伸雄代表は振り返る。
 そして、その後の経緯を以下のように説明する。
 
 当初、チケット代金など約800万円が7月31日に振り込まれることになっていたが、期日までに入金がなかった。このため、7月31日にダイヤモンドGの窓口だった従業員のM氏に問い合わせると、「チケット精算支払いの依頼は済んでおり、振込は通常通りに処理が進んでいると認識」との返答が届いた。
 ところが、8月に入っても入金を確認できず、8月2日に書面がメールで届いた。そこには「国税局の調査が入り、代表および経理関係のパソコンや書類が物理的に拘束されていることが判明した」と記載されていた。 
 また、「国税局の調査の影響による制約がなくなると想定。8月8日、速やかに振込実施と報告を行う予定である」と、8月8日の支払いをほのめかす文面が記載されていた。
 

 だが、8月8日も振り込みはなく、ダイヤモンドGの代表は、「逃げません。2日に送付した書面の内容は詳しく確認していない」と電話口で繰り返すだけだったという。
 8月9日付の書面には、「7月31日の国税局による調査及び口座の差し押さえにより入金ができない。調査は昨年のK-POP案件等で発生した海外送金の調査が主目的である」と記載され、「不信感はさらに高まった」と岩渕代表は憤る。
 ただ、その後も振込はなく8月13日に届いた書面には、「9月25日までを目処に別途資金調達により全額振り込む。一連の不手際に対するお詫び金として100万円を別途、支払う」と書かれていたという。
 だが、約束は8月26日時点でも履行されず、「8月14日以降はメールや電話での連絡は取れない状態」と岩渕代表は肩を落とす。

「被害者を増やしたくない」

 「SHIROFES.」は、ダンスショーやライブ、グルメなどを通じ、地域の魅力を再発見するイベントで、地元の自治体や企業の協力を得て開催されてきた。2025年で10回目を迎え、今年の来場者数は3日間で7万2,000人(主催者発表)にのぼった。
 岩渕代表は、実名での告発にためらいがあったが「これ以上、被害者を増やしたくない」との思いから取材に応じた。「チケット購入者はイベントにお金を支払ったのであり、ダイヤモンドGに払ったわけではない。不誠実な対応に憤りを感じる。早くお金を支払ってほしい」と無念さを隠さない。
 地域と一緒に築き上げたイベントを揺るがす未払い問題は、関係者の信頼を深く傷つけている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年8月28日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)




人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

3

  • TSRデータインサイト

「調剤薬局」 中小・零細はリソース不足で苦戦 大手は戦略的M&A、再編で経営基盤を拡大

 調剤薬局の大型再編が加速するなか、2025年1-8月の「調剤薬局」の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期と2024年同期の22件に迫る多さだった。今後の展開次第では、年間初の30件台に乗せる可能性も高まっている。

4

  • TSRデータインサイト

りそな銀行、メイン取引先数が増加 ~ 大阪府内企業の取り込み加速 ~

関西や首都圏で大企業から中堅・中小企業のメインバンクとして確固たる地位を築くりそな銀行。「2025年全国メインバンク調査」ではメインの取引社数は3メガバンクに次ぐ4位の4万511社だった。東京商工リサーチが保有する全国の企業データを活用しりそな銀行がメインバンクの企業を分析した。

5

  • TSRデータインサイト

メインバンク調査で全国5位の北洋銀行 ~圧倒する道内シェアで地域経済を牽引~

「2025年全国メインバンク調査」で、北洋銀行(2万8,462社)が3メガ、りそな銀行に次ぎ、調査開始の2013年から13年連続で全国5位を維持した。北海道に169店舗、都内1店舗を構え北海道内シェアは約4割(37.9%)に達する。

TOPへ