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2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度「本社機能移転状況」調査


 2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。
 地区別で転入超過数(転入-転出)が多かったのは九州で、プラス148社だった。九州は製造業と情報通信業がすべての県で転入超過となり、TSMC進出などで、様々な産業で活況が続いていることが表れた。また、製造業が基幹産業で、関東・近畿へ商圏を広げやすい中部がプラス147社で続いた。
 県別の転入超過トップは、埼玉県でプラス250社。主に東京都からの移転が多く、農・林・漁・鉱業を除く、9産業で転入超過だった。前年度トップの千葉県は金融・保険業と運輸業を除く、8産業が転入超過でプラス192社だったが、2位に1ランクダウンした。

 産業別の本社移転は、小規模事業者が多いサービス業他が6,211社(前年度比18.2%増)で最も多かった。次いで、情報通信業2,031社(同21.4%増)、小売業1,757社(同23.4%増)が続く。前年度と比べると10産業のうち、運輸業を除く9産業で移転企業が増加した。

 コロナ禍が落ち着き、リモートワークからオフィス出社に戻す企業が増えている。コロナ禍に都心回避で企業移転が進んだが、コロナ禍が落ち着くと再び都心への回帰が見込まれていた。
 しかし、今回の調査では、中小・零細企業を中心に、上昇が続くオフィス賃料などのコスト抑制や、都心を離れて地方マーケットを開拓する動きが強まったことがわかった。
 また、深刻な人手不足が加速しており、人材獲得や従業員の働き方改革を狙った移転もトレンドになっているようだ。
 地区別で、転入超過数が上位の九州と中部は、製造業の転入が際立ったことが特徴だ。製造業が転入超過だったのは、九州・中部以外では東北(プラス5社)だけだった。製造業は、投資規模が大きく、雇用創出力も強いことから周辺都市や関連産業への波及が期待できる。製造業の誘致は、地域経済の活性化への起爆剤として、隣接する地域や地場産業の構造転換を促す契機になるかもしれない。

※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の保有する企業データベース(約440万社)から、各年3月末時点で都道府県を跨いだ本社および本社機能の移転が判明した企業を集計、分析した。今回が2回目の調査となる。


2024年度の本社移転は1万6,271社、2年連続で増加

 2024年度に他都道府県に本社、および本社機能の移転は、1万6,271社(前年度比18.7%増)で前年度を上回った。コロナ禍の落ち着きに伴い経済活動が本格化し、人流の回復や活発な需要に合わせて本社を移転する動きがさらに強まった。
 規模別では、資本金1千万円以上が2,809社(同17.4%増)で3年ぶりに増加した。同1千万円未満は1万3,462社(同19.0%増)と3年連続で増加した。前年度は小・零細企業の本社移転が件数を押し上げたが、今年度は中堅規模以上の本社移転も増加した。

左:本社機能移転企業数 年度推移 右:資本金別 本社機能移転企業数

産業別 サービス業他が6,211社で約4割占める

 産業別では、最多がサービス業他の6,211社で、全体の4割近く(構成比38.1%)を占めた。
 次いで、情報通信業2,031社(同12.4%)、小売業1,757社(同10.7%)と続き、上位3産業で全体の約6割(同61.4%)を占めた。この3産業は、比較的規模の小さい事業者が多く、移転などの意思決定がしやすいことで本社を移転した企業が多いとみられる。
 情報通信業は、リモートワークが定着した業種で、人材確保やコスト抑制などで都心から地方への移転が加速したとみられる。特に、九州への転入が目立ち、福岡県を筆頭に九州全県で転入超過となった。
 前年度との比較では10産業中、9産業で移転企業が増加した。唯一減少したのは運輸業で255社(前年度比1.9%減)だった。県別の転入超過数は、千葉県が4産業、埼玉県が3産業で転入超過数でトップになり、首都圏内の移転が活発であることがわかる。
 産業を細分化した業種(中分類)別では、移転企業数の最多が「専門サービス業」で2,027社だった。次いで、「情報サービス業」が1,434社、「飲食店」が776社と続く。

左:産業別 本社機能移転企業数 右:業種別 本社機能移転企業数

地区別転出入状況 転入超過1位が九州、2位が中部、転出超過1位は関東

 地区別で、企業の転出入状況を分析した。
 転入超過数のトップは、九州でプラス148社だった。TSMC(台湾積体電路製造)の進出で、製造業を中心に活況が続き、設備・IT投資も活発だ。製造業と情報通信業の2産業は、九州エリアの8県すべてで転入超過だった。半導体に加え、自動車の主力工場の進出が、関連企業や取引先の吸引力を強めたとみられる。
 次いで、中部がプラス147社で続く。中部は、トヨタ自動車(株)やスズキ(株)などの大手メーカーが本社を置き、工業が盛んな地区である。関東、近畿どちらへも商圏を広げやすく、特に関東からの転入が目立った。中部5県のうち、愛知県(マイナス20社)を除く4県で転入超過だった。
 転出超過だったのは、関東、近畿、四国の3地区。関東がマイナス284社と圧倒的に多い。関東から地方への転出に歯止めが掛からず、4年連続で転出超過となった。


地区別 本社機能移転状況(転入数-転出数)

県別転出入 転入超過トップは埼玉、2位が千葉、転出超過は東京が圧倒的

 県別の転出入は、転入超過トップが埼玉県。転入が1,507社に対し、転出は1,257社で、差し引きプラス250社の転入超過だった。主に東京都からの転入が多く、2年連続で転入超過数が大幅に増加している。産業別では、サービス業他がプラス100社で転入超過数が最も多い。農・林・漁・鉱業(超過数ゼロ)を除く、9産業で転入超過となった。
 転入超過2位は、千葉県でプラス192社。前年度1位から2位にランクダウンした。埼玉県と同様に、東京都からの転入超過が中心で、産業別では、卸売業が56社増で転入超過数が最多。金融・保険業と運輸業を除く8産業で転入超過だった。
 転出超過数は、1位が東京都でマイナス1,158社。産業別では、10産業すべてで転出超過となった。転入数は2022年度3,723件、2023年度3,983件、2024年度4,584件と増加が続く。だが、2023年度に減少した転出数が再び2024年度に増加に転じ、東京都から隣接する埼玉県、千葉県、神奈川県への流出が強まった結果、転出超過数が再び増加した。
 このほか、大阪府はマイナス264社、愛知県がマイナス20社と、大都市圏の中心都市から周辺都市に転出する傾向が目立つ。


都道府県別 本社機能移転状況(転入数-転出数)

損益区分別 黒字企業の移転が約7割

 他の都道府県に本社・本社機能を移転した企業のうち、移転年度から遡って2年以内の最終利益の判明した企業を抽出し、黒字と赤字企業の構成比を算出した。
 2024年度の移転企業では、黒字企業が構成比67.1%(1,805社)と、約7割を占めた。
 前年度まで2年連続で赤字企業の割合が拡大していたが、2024年度は一転し黒字企業の割合が増加した。赤字を解消するためのコスト削減を目指した本社移転より、商圏拡大や需要、人材獲得を狙った「攻め」の移転が増えた可能性がある。

損益区分別 本社機能移転企業数

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