• TSRデータインサイト

ミュゼプラチナム、第三者破産に「積極的な対抗せず」 ~ 運営会社MPH・高橋英樹社長 単独インタビュー ~

 大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営するMPH(株)(TSRコード:036547190、大田区)の動向が注目されている。今年3月から全店を休業するなか、5月16日に債権者から破産を申し立てられた。今後、東京地裁が破産開始決定を出すか判断する。
 ミュゼプラチナム事業は、MPHのほか、新生ミュゼプラチナム(株)(TSRコード:136911390、千代田区)、どこでもミュゼプラチナム(株)(TSRコード:036220566、千代田区)の3社でフランチャイズ(FC)展開を進めているが、今回の第三者破産を当事者はどう受け止めているのか。
 東京商工リサーチ(TSR)は、MPHの高橋英樹社長と関係者に単独取材した(取材日は5月21日)。


―5月16日に、MPHが債権者から破産を申し立てられた

 以前から破産申し立ての噂はあったが、5月16日、テレビ局の取材中に知った。今後、裁判所の審尋を経て、破産開始決定が出るか決定される。我々としては積極的に破産させた方が良いとは考えていないが、破産開始決定が出た際は、抗告や民事再生などの対抗的な手続きをするつもりはない。
 現在、MPHは資産を持っていない。グローバルブリッジファンド合同会社(TSRコード:698497082、千代田区、以下GBF)がMPHに資金を融資し、商標権などの権利関係もすべて保有している。GBFはMPHの筆頭債権者だ。
 従業員の給与支払いのスピードや育休、産休の従業員の雇用保険への対応などを考慮すると、破産させない方がMPHにとって望ましいと考えている。
 そのほか、MPHに破産開始決定がでると取引先に影響が波及する懸念がある。約10億円の一般債権のうち、多くは小規模の取引先で、連鎖倒産が発生する可能性がある。
 破産申し立てに対応する弁護士はこれから選任し、裁判所には真摯に対応する。
 また、SNS上などで会計書類などが出回っているが、偽造されたものだ。不正な資金の流出などはない。現在、公式YouTubeを通じ、正確な情報発信を進めている。



インタビューに応じる高橋社長
インタビューに応じる高橋社長

―MPH元従業員の給与への影響は

 MPHに破産開始決定がでた場合、未払賃金立替払制度の対象になり、8割の給与が振り込まれる。だが、過去の事例から、MPHの規模の企業だと、立替払い制度は支給までに1年以上の期間が見込まれる。裁判所から連絡や指示があれば、どのように払うべきか相談する。
 5月15日に給料計算が終わって離職票を全員分提出した。2月のクーデター時に、4月25日分の給料明細データを消されていたが、ゴールデンウイーク明けに復旧し、5月16日に給料明細を全員分提出した。これにより未払金が確定した。未払給与は約9億8,000万円、有給の買い取りや手当金などを含めて約15億円になる。
 5月末に、MPH元従業員の2025年1月分の未払い給与30%分を支払う。支払総額は1億5,000万~2億円を見込んでいる。今後、FC展開を進めていき、年内には未払い賃金が払い終わる見込みだ。

―新生ミュゼプラチナム、どこでもミュゼプラチナムへの影響は

 MPHが破産申し立てをされたが、新生ミュゼプラチナム、どこでもミュゼプラチナムは別法人であり、サービスの提供体制に影響はない。新生ミュゼプラチナムは、旗艦店の運営や美容機器の販売、どこでもミュゼプラチナムはFC展開や管理の機能を担っている。
 3月から休業していた新生ミュゼプラチナムの直営22店舗は、予定通り6月1日から再開する予定だ。
 どこでもミュゼプラチナムのFC店舗は、MPHの第三者破産を受けて若干数の解約があったものの、6月2日には(当時のミュゼプラチナムの)既存店数の170店舗を越える180店舗がオープンする。FC施術の体制も整ってきており、現在は1カ月に約7,000件の予約が入っている。FCオーナーの多くは美容室などのサロン経営者だ。約1年前からミュゼプラチナム事業のFC化を構想し、以前から各オーナーに声掛けしていた事もあり、急速にFC展開が進んでいる。
 MPHの元従業員に向けた社内独立制度の案内や施術者の指名制度など新しい施策も検討中だ。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月26日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)



人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

2

  • TSRデータインサイト

企業倒産、破産の割合が9割超で過去最大 ~ 背景に「手形減少」と「準則型私的整理」 ~

企業倒産のうち、破産の構成比が90.3%に達し、過去最大を記録した。民事再生法はわずか2.2%にとどまる。破産は、売上不振や財務内容が悪化し、再建が見通せない企業が選択する。なぜ今、破産の構成比が高まっているのか――。

3

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

4

  • TSRデータインサイト

リフォーム・塗装工事の倒産が急増 ~ 点検商法などのトラブル多発 ~

リフォーム・塗装工事の倒産が急増している。2025年上半期(1-6月)の倒産は119件に達し、過去20年で最多だったリーマン・ショック後の2009年同期の111件を上回った。

5

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

TOPへ