• TSRデータインサイト

2025年1-5月の「早期・希望退職」募集人数は8,711人で前年2倍に急増、相次ぐ大型募集

 2025年1月-5月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は19社(前年同期27社)で、前年同期より約3割(29.6%減)減少した。しかし、大手メーカーの大型募集が相次ぎ、対象人員は、8,711人(前年同期4,654人)と前年同期の約2倍(87.1%増)に急増した。

 パナソニックHDは収益強化のため、国内外で1万人規模の人員削減を発表した。国内は5,000人規模の見込みだ。日産自動車は国内の募集人数を明らかにしていないが、グローバルで2万人(発表済みの9,000人を含む)の人員削減を発表した。生産工場は2027年度までに17から10の工場に統合する。ジャパンディスプレイは早急な黒字転換と持続的な成長に向け、国内従業員(2,639人、2025年3月31日時点)の56%に相当する1,500人の人員削減を行う。※日産は国内の募集人数が不明のため人数の集計に含んでいない。
 大手メーカーを中心に、中長期的な競争力強化や業績改善のための構造改革の動きが強まってきた。この状況が続くと、2025年の「早期・希望退職募集」は2000年以降、最多だった2009年の2万2,950人を上回る可能性も出ている。上場区分は東証プライムが16社(構成比84.2%)と圧倒的に多く、直近決算の黒字企業は12社(同63.1%)と6割を占めた。判明した19社では、18社が製造業だった。
 トランプ関税の影響次第では、自動車などの製造業を中心に、輸出産業への影響が懸念される。また、今後は事業部門の閉鎖・売却や工場再編などで早期・希望退職の募集がさらに増える可能性も出てきた。


※ 本調査は、早期・希望退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。

※ 2025年5月15日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』と東京商工リサーチの独自調査に基づく。







電気機器が最多
 2025年1月-5月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は19社に達した。
 業種別は、国内で5.000人規模の募集を発表したパナソニックHD、国内の募集人数を明らかにしていないがグローバルで従業員約2万1,000人の5%未満を人員削減すると明らかにしたルネサスエレクトロニクスなど電気機器が10社(前年同期6社)で最多だった。
 次いで、食料品(同2社)、機械(同1社)、輸送用機器(同ゼロ)が各2社と続く。



損益別 黒字企業が約6割
 「早期・希望退職募集」を実施した企業の直近決算の期最終損益(単体)は、黒字12社(構成比63.1%)、赤字7社(同36.8%)で、黒字が6割を超えた。  
 黒字企業の募集人数は6,380人で、全体の7割(同73.2%)を超えた。黒字12社のうち、11社が東証プライム上場だった。
 赤字7社の募集人数は2,331人で、ジャパンディスプレイや太陽誘電など。










人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ