脱毛サロン・ミュゼプラチナム、新体制と「未消化役務」 ~ 運営会社MPH・高橋英樹社長 単独インタビュー ~
2月に内紛が勃発し、3月から全店を休業している脱毛サロン「ミュゼプラチナム」。ミュゼプラチナム事業は現在、MPH(株)(TSRコード:036547190、千代田区)、新生ミュゼプラチナム(株)(TSRコード:136911390、千代田区)、どこでもミュゼプラチナム(株)(TSRコード:036220566、千代田区)の3社が連携してFC展開を進めている。
従業員給与の遅延、経営混乱などで動向が注目されるMPHの高橋英樹社長と関係者に、東京商工リサーチ(TSR)は単独取材をした(取材日は5月1日)。
―MPHの経営権を巡る対立から約3カ月が経過した
MPHは支払いが数カ月間停止しており、給与の未払いなども発生している。この状態でMPHを運営すると差押などの懸念もあり、運営が難しい。そのため、MPH、新生ミュゼプラチナム、どこでもミュゼプラチナムの3社で分業し、事業を継続していく。
MPHは経営企画やシステム構築などの役割を担い店舗は運営しない。新生ミュゼプラチナムで旗艦店の運営や美容機器の販売、どこでもミュゼプラチナムでFC展開や管理の機能を担っていく。
クーデター時にグローバルブリッジファンド合同会社(TSRコード:698497082、千代田区、以下GBF)が新生ミュゼプラチナムの経営権を取得した。ミュゼプラチナムの商標権、営業権などはすべてGBFが保有しており、すでにMPHにはない。前回インタビュー(4月2日号掲載)に対応した三原(孔明氏)は、新生ミュゼプラチナムの代表取締役として活動し、MPHは私が代表取締役として運営していく体制だ。
―新しく始めた「どこでもミュゼ」について
従来、ミュゼは家賃や人件費などの固定費用の負担が重かった。だが、どこでもミュゼプラチナムがFC展開を進めることでFCの店舗の中で施術が受けられるようになり、今後は固定費のかからない体質になる。
現在、FCオーナーについて募集し、285店舗の契約が終了している。未消化役務が残っている約20万人の顧客は、どこでもミュゼの加盟店で施術を受けられる体制が出来てきた。現在も美容室オーナーなどからFC加盟の応募があり、順次店舗を展開していく。
加盟店へのトラブルを回避するため、HP上で店舗の詳細な住所はあえて記載していないが、施術予約をした顧客には詳細な住所が通知される仕組みだ。
―MPHの給与の遅配について
MPHの給与明細のシステムや社員情報のシステムが2月の紛争時に初期化されていて、いまだに引き継がれておらず、誰にいくら給与を払うか不明な状況になっている。給与支払いの引き継ぎに協力しない本社の従業員は懲戒解雇した。未払金の正確な数字が算出できないと失業保険の金額も正確に出せず、現在、労働基準監督署やハローワークなどにも相談しながら進めている。5月中を目途に正確な数字が算出できる見込みだ。
従業員は時短社員などを含めて3月末時点で2,025人在籍していたが、ハローワークに離職票が提出できたのは888名だ。離職票未提出は1,137名で、手続きを順次進めている。育休や産休などの従業員を除いて、約1,600名の給与が遅延しており、総額は約15億円にのぼるが給与の未払金は必ず支払う。
―MPHの負債や法的整理の可能性について
約300億円の負債のうち、約200億円が未消化役務だったが、FC展開が進み、未消化役務は減っている。MPHは、未消化の施術が完了したタイミングで、前受金を売上に計上している。MPHは、どこでもミュゼプラチナムに対して施術に関する準委任契約を結び、施術を行うのはFCだ。MPHには、給与等の負債が約100億円あるが、このうち63億円をGBFが貸しており、実質的な負債は約40億円になる。
今月(2025年4月)は、FC加盟店からの初期費用などで、3社で約5億円を売り上げる見込みだ。その中から約2億円を未払金などの返済に充てている。想定通りに売上が推移すれば、年内には給与を全額払えるようになる。外部からの資金調達は今のところFC展開が順調に進んでおり必要ない可能性が高い。最終的には訪問による脱毛もできるような体制を構築したい。
我々としては、MPHは現時点で破産させない予定だ。ただ、家賃の滞納などで裁判を抱えており、今後、債権者による破産申立の可能性はある。
―家宅捜索が入ったとの噂がある
家宅捜索は入っていない。巷では資金調達の不正など様々な憶測が飛び交っているが、ミュゼの件では我々は清廉潔白だ。先日、家に動画配信者が来て、メガホンで迷惑行為をされ、警察を呼んだ。最近は、SNSなどでも様々な問い合わせが来るが、連絡が来た際には極力回答している。
取材に応じる高橋英樹社長
―合同会社トラストとの係争は
MPHとトラスト(TSRコード:023567023、東村山市)は、MPHの経営権を巡り司法で争っていたが、3月に役員の地位を仮に定める仮処分決定を受け、経営権を取り戻している。以降、先方から連絡はなく、本訴に進んでおり、6月の口頭弁論に向けて準備中だ。
クーデター中に発生した損害については、5月にMPHの決算が確定するので、その金額を基に損害賠償を求める形で動いている。現時点で、30億円から50億円程度の賠償額を想定している。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月12日号掲載「取材の周辺」を再編集)