「母の日」定番の贈り物に変化? お花屋さんの業績に陰り、倒産・廃業が高止まり
2024年「花・植木小売業」企業動向調査
お花屋さん(花・植木小売業)の成長に陰りが見えてきた。全国の主なお花屋さん315社の2024年の売上高は918億8,500万円(前年比1. 2%減)、利益は12億6,700万円(同74.5%増)だった。
コロナ禍から日常が戻り、パーティー、謝恩会などの需要も増え、花卉相場は高値が続いている。しかし、売上高100億円以上の大手は2社にとどまるニッチ市場で、高価格品のニーズは大手に偏り、趣味の観葉植物は安価なホームセンターなどでも扱い、中小・零細のお花屋さんの事業環境は厳しい。
倒産と休廃業・解散は、2022年の52件、2023年79件、2024年79件と高止まりしている。
5月第2日曜日は「母の日」。カーネーションを贈る習慣は20世紀初頭のアメリカで始まり、日本では戦後、根付いた。約80年を経ても「母の日」が近づくと、大手通販サイトの特集ページではカーネーションや様々な花、お菓子セット、フルーツなどのギフトが並んでいる。
お花屋さんは、コロナ禍でブライダルや葬式、入学・卒業式が簡略化され、厳しい状況に直面した。だが、大手は個人向けサブスプリクションサービスや法人向けの強化で業界を牽引し、売上高は2020年から2023年まで右肩上がりを続けた。
ところが、2024年は過去5年で初めて減少に転じた。ブライダル関連需要が回復せず、花の高額化が花離れにつながり、花を贈る習慣が薄れてきたことなども要因に挙げられる。
花卉業界は、売上高10億円以上の11社が売上全体の57.5%を占め、寡占化が進んでいる。
また、花は鮮度や価格変動へのリスクが高く、温度管理など設備投資も避けられないことから、小資本のお店は事業拡大が難しい。さらに、売上規模が小さいほど原価や人件費の影響をもろに受けやすい。こうした環境を背景に、大手が業績を伸ばす一方で、仕入れコストの変動や物価高で収益維持が難しい町のお花屋さんはさらに減少する可能性が高い。
※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、2024年の業績(2024年1月~12月期)を最新期とし、5期連続で業績が判明した315社を抽出、分析した。
お花屋さん315社 2024年の売上高は1.3%減
主なお花屋さん315社の売上高は、2020年796億3,500万円、2021年809億8,400万円、2022年869億8,100万円、2023年930億2,300万円と右肩上がりで成長をたどってきた。だが、2024年は918億8,500円(前年比1.2%減)と微減に転じた。利益は、コロナ禍の2020年は11億円の赤字だったが、大手の業績回復とコロナ関連支援で2021年は黒字に転じ、以後は黒字を維持している。
売上高1億円未満が9割
売上高別では、1億円未満が202社(構成比64.1%)で最も多い。次いで、1~5億円未満が83社(同26.3%)、5~10億円未満が19社(同6.0%)で続く。売上高5億円未満の企業が90%を占め、多くは個人商店・家族経営で地域密着型の小・零細規模が占めている。
なお、売上高100億円以上は2社(同0.63%)にとどまる。
業歴別 10年以上が9割
業歴別では、10~50年未満が160社(構成比50.7%)でトップ。
次いで、50~100年未満が137社(同43.4%)、100年以上が12社(同3,8%)で10年以上が98.1%を占めた。
生花の仕入れは市場・農家との信頼関係が大きく、また入札制が中心のため、参入障壁が高いことが特徴になっている。
創業が最も古いのは、全国各地に小売店舗を展開する(株)日比谷花壇(TSRコード:290468973)の1872年だった。
2023年、2024年の倒産・休廃業は高水準
倒産と休廃業・解散の合計は、2020年の73件をピークに2021年は56件、2022年は52件と減少した。ただ、2021年からの減少はコロナ関連の支援策でゼロゼロ融資などの制度融資や補助金の下支え効果が大きかった。支援が縮小・廃止された2023年は79件と再び増加に転じ、2024年も79件と高止まりしている。経営維持が難しく事業を断念した事業者が多い。
2024年の倒産の原因別では、不況型倒産(赤字累積・販売不振・売掛金回収難)が 全体の90.0%(18件) を占める。特に「販売不振」が 16件(構成比80.0%)と圧倒的に多く、次いで「赤字累積」が2件(同10%)。
倒産の負債合計は、件数が増えているにもかかわらず2023年は15億5,500万円、2024年は8億1,700万円と大幅に減少し、小・零細規模事業者の倒産が多いことを示している。