2024年度の「早期・希望退職」 募集は8,326人 社数、人数は2年連続で増加、電気機器が突出
2024年度 上場企業「早期・希望退職募集」状況
2024年度に「早期・希望退職」を募集した上場企業は51社(前年度47社)で、募集人数は8,326人(同6,247人)だったことがわかった。コロナ禍以降では、2020年度(116社、2万4,863人)に次ぐ規模で、人手不足の中でも事業再構築に向けて人員削減を推し進める企業の実態が見えてきた。
パナソニックホールディングスは2月4日、本社や間接部門、事業部の適正人数を目指し、2025年度中に早期希望退職に着手することを発表した。また、4月22日にはマツダが従業員の社外での活躍を目指す500名のセカンドキャリア支援制度を発表したが、2024年11月にグローバルで9000名の人員削減を発表した日産は、まだ詳細を公表していない。自動車業界は再編も動き出し、早期希望退職が増える可能性も出てきた。
2024年度に「早期・希望退職」を募集した51社では、製造業が40社(構成比78.4%、前年度26社)と突出した。2024年度は、大手メーカーなどの構造改革が本格化した一年だった。
上場区分は、東証プライムが39社(構成比76.4%)で圧倒的に多い。なお、直近決算で黒字は32社(同62.7%)と6割を超え、業績不振が要因のリストラとは一線を画す募集が目立った。
トランプ米大統領は4月2日、貿易赤字国を対象に相互関税引き上げを発表した。日本は自動車が25%、その他が24%の関税率で、製造業だけでなく幅広い産業への影響が懸念されている。まだ、影響は不透明だが、構造改革による早期・希望退職の募集が増えるおそれも出てきた。
※ 2025年3月31日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』と東京商工リサーチの調査に基づき、判明時点で社数、人数をカウント。人数が後に判明した場合は社数判明時の集計に加える。
電気機器が最多
2024年度に「早期・希望退職」を募集した上場企業は51社だった。
業種別は、グローバル構造改革によりグループ全社の2,400人を対象にしたコニカミノルタ、国内外約2万1000人の社員のうち5%未満の人員削減を発表したルネサスエレクトロニクス、間接部門や事業部などの適正人数化を発表したパナソニックホールディングスなど、電気機器が18社で前年度(7社)が2.5倍増で最多となった。
次いで、年度内に複数回の募集を実施した東北新社などの情報・通信業が7社(前年度12社)、ワコールホールディングスなどの繊維製品(同2社)、不二越など機械(同3社)の各4社が続く。
損益別 黒字企業が約6割
「早期・希望退職」を募集した51社の通期最終利益(単体)は、黒字が32社(構成比62.7%)、赤字が19社(同37.2%)で、黒字企業が多い。
また、黒字企業の募集人数は6,185人で、全体の約7割(同74.2%)を占めた。黒字の32社のうち、28社が東証プライム上場だった。
赤字だった19社の募集人数は2,141人で、市場別では東証プライム11社、東証スタンダード6社、東証グロース2社だった。