【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~
4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。
米国の関税措置を受け、経済産業省は4月3日、いち早く資金繰り支援を公表した。
東京商工リサーチは4月1~8日、今回の相互関税に関するアンケート調査を実施した。どのような影響があるかとの質問では、「影響は生じていない」が46.2%で最も多かった。「少しマイナス」が30.3%、「大いにマイナス」が22.0%で続いた。
産業別では、「マイナス」(少し+大いに)と回答した企業を産業別でみると、最多は製造業の64.4%だが、卸売業が56.4%、運輸業が51.5%など幅広く影響を懸念している。相互関税への対応は、「特になし」が65.1%だった。具体的な対応策で目を引いたのが、借入を「減らす」とした企業が多いことだ。採用数や賃上げの抑制に言及する企業もあった。
相互関税の一時停止が解除されると、影響は自動車関連だけではなく幅広い産業に広がる恐れがある。その場合、コロナ禍で過剰債務に陥り、業績回復が遅れた企業には資金を貸し付ける支援だけでは不十分だ。アンケートからは、そうした企業がこれ以上の借入金(=債務)の増加を望んでいないことを示唆している。
企業に対する支援策
コロナ禍では資本性劣後ローンが注目されたが、活用はいま一歩だった。ただ、コロナ禍で抱えた過剰債務の解消に有効な施策に変わりはない。実効性をもう一段高めるには、利益に応じた利率適用の見直しが必要だろう。利率が軽減されると、雇用や生産性向上などへ余剰資金の投資を促すことができる。
また、法人税など暫定的な税負担の軽減も企業活動の幅を広げるだろう。
相互関税を契機に、米国以外にEU、アジアなどへ活路を見出す企業も予想される。そのためには貿易支援や情報共有も必要だ。
企業側での対応策
相互関税の具体的な影響がみえず、対応に苦慮する企業は少なくない。ある企業の担当者は、「海外の現地子会社との情報交換を重ねている段階で、対策を決めあぐねているのが実情」だという。一方で、これを転機と捉え、現状を打開する動きも求められる。一つ目は、価格転嫁の徹底に向け、規模を問わず交渉力を培う中長期的な戦略決定だ。二つ目は、為替が乱高下するなか、在庫負担を軽減する発想だ。三つ目は、自社や商品のブランド力を高め、付加価値を見出して収益面を高める戦略だ。
相互関税の公表以降は円高が進み、4月14日正午時点では1ドル=143円程度で推移している。輸入材を扱う産業では価格低下を期待する声もあるが、これは限定的な希望だ。
相互関税はある意味、国難であり、企業と政府が知恵を絞った対応が求められる。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年4月15日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)