• TSRデータインサイト

「書道教室」に異変!新設法人と倒産廃業が増加 美文字ニーズと副業、インバウンド客でブーム復活も

「書道教室」の動向調査

 少子化などで人気が低迷していた「書道教室」に復活の兆しが出ている。もともと「書道教室」は、小規模で、近所の小学生や高齢者が主な生徒だった。2017年以降、新設法人数は年間一ケタだったが、2023年は突如、16件と急増した。背景には、文字を書く機会が減ったスマホ世代の子供やシニア対象の習字やペン字などの教室、さらにインバウンド客を見据えた教室の増加がある。さらに、コロナ禍明けの副業や、インボイス制度で個人教室の法人化を促したとみられるが、その一方で、競争が激しく、倒産や休廃業・解散も急増している。

「書道教室」の倒産と休廃業・解散、新設法人数推移

 東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)で、「書道教授業」を手がける企業を分析した。新設法人は、2014年12件、2016年10件と10件台で推移していたが、2017年以降は一ケタにとどまっていた。もともと小規模で、個人教室が多かったためだが、2023年は突然、16件に急増した。
 関係者は、「副業ブームで自宅などで手っ取り早く書道教室を始める人が増えた」とみている。オンラインでの書道教室の広がり、スマホの普及で文字を書くことが減った世代、高齢者を中心にシニア向けの“大人の趣味”など、新たなニーズも生まれている。さらに、インバウンド需要を睨んだ外国人向けの書道教室も人気になっている。
 それだけに書道教室の増加で、生徒の奪い合いが激化している。書道教室の倒産や倒産以外で事業を停止した休廃業・解散は、2023年まで年間5件を下回り、2018年はゼロと落ち着いていた。ところが、2024年は倒産が3件、休廃業・解散が4件の合計7件が市場退出に追い込まれた。

 従来の書道教室は、運営者(講師)の高齢化や少子化の加速などで減少をたどっていた。経済産業省の経済センサスによると、書道教授業の事業所数は2016年の9,020に対し、2021年は7,005と2割(22.3%減)も減少している。また、売上高は2016年が187億3,600万円、2021年が161億6,000万円と13.7%減少した。事業所数の減少幅に比べ、売上の落ち込み幅は抑えられているが、単純な授業料の値上げだけでなく、そこには新たなニーズを汲み取った教室の奮闘もうかがえる。
 学習塾やそろばん、ピアノ、生花、茶道、運動など、古くからの習い事は生徒の確保に苦慮している。だが、若者向けのきれいな文字を学ぶ習字やペン字教室に加え、日本文化に興味を持つ外国人向け教室、家の中で受講できるオンライン教室など、サービスも多様化している。
 新旧それぞれの特色を打ち出した書道教室が切磋琢磨し、新たな需要を開拓していくと本格的な書道教室ブームの到来も現実味を帯びてくるだろう。

※本調査は、日本標準産業分類の「書道教授業」の倒産(負債1,000万円以上)と休廃業・解散、新設法人数を分析した。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ