• TSRデータインサイト

倒産企業の平均寿命は23.2年、3年ぶりに延びる 製造業、卸売業を中心に老舗企業が押し上げる

2024年 倒産企業の「平均寿命」調査

 2024年の倒産企業の平均寿命は23.2年(前年23.1年)で、3年ぶりに前年を上回った。2024年は、円安、物価高、人件費上昇などで、企業倒産は11年ぶりに1万件を超えた。
 すべての業歴別で倒産が増えたが、特に、100年以上6件(前年2件)など、業歴30年以上が2,879件(前年比15.5%増)に達し、老舗企業の増加が平均寿命の延びにつながった。コロナ禍から景気の回復局面に向かうなか、業歴を問わず、経営環境の激変に対応できない企業の淘汰が鮮明になってきた。

 産業別の平均寿命は、最長が製造業の35.9年(前年36.3年)だった。製造業は、業歴30年以上の老舗企業が62.2%(同63.3%)を占め、全産業で唯一、6割を超えた。一方、最短は情報通信業の16.6年(同16.0年)で、19.3年の開きがあった。
 2024年の倒産企業のうち、業歴100年以上(1924年以前設立)は6社(前年2社)で3倍に増えた。
 コロナ関連支援の終了・縮小と同時に、物価高、人手不足に見舞われ、コロナ禍からの業績回復が遅れた企業は少なくない。また、「金利のある世界」に戻り、低金利で構築されたビジネスモデルからの転換が求められている。経営環境が大きく変化するなか、「老舗」や「資産」、「知名度」などの実体のない「強み」に頼らず、いかに柔軟な発想で生き残るかが問われている。

※本調査は、2024年の全国倒産1万6件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が不明の1,215件を除く、8,791件を対象に分析した。
※業歴30年以上を「老舗」企業、同10年未満を「新興」企業と定義し、業歴は法人が設立年月、個人企業は創業年月で起算。


平均寿命は23.2年 3年ぶりに延びる

 2024年に倒産した企業の平均寿命は23.2年で、前年(23.1年)より0.1年延びた。前年を上回ったのは、2021年以来、3年ぶり。業歴別の構成比は、30年以上の「老舗」企業が32.2%(前年32.1%)で、3年ぶりに延びた。一方、業歴10年未満の「新興」企業は30.7%(同30.1%)で、2年連続で30%台に乗せた。
 物価高、コストアップで企業倒産は増勢を強めている。「老舗」は代表者の高齢化と事業承継の遅れが課題に浮上するなか、代表者が過去の経験則に捉われている企業も少なくない。
 一方で、「新興」は自治体の創業支援に支えられているが、小資本での設立と甘い経営計画を指摘されている。コロナ禍を経て経営環境が大きな転換期を迎えたが、自立・自走できない企業は業歴に関係なく淘汰が進むとみられる。

倒産企業の平均寿命と業歴別件数の構成比推移

平均寿命の最長は製造業の35.9年

 産業別の平均寿命は、10産業のうち、卸売業、金融・保険業、運輸業、情報通信業の4産業で延びた。
 平均寿命の最長は、製造業の35.9年(前年36.3年)で、唯一、30年を超えた。次いで、卸売業29.6年(同29.5年)、運輸業25.7年(同24.4年)、小売業24.1年(同24.5年)、建設業21.7年(同21.7年)の順。
 平均寿命の最短は、ソフトウェア開発などを含む情報通信業の16.6年(同16.0年)だった。
 コロナ禍での各種資金繰り支援策の副作用で、過剰債務を抱えた企業が増えている。そこに急激な需要増が起こった。同時に、円安、原材料や資材の高騰、エネルギー価格、人材不足、人件費上昇なども押し寄せ、企業は新たな資金調達に苦慮しながら資金繰りを維持している。
 さらに、日本銀行が2024年7月に政策金利を引き上げ、2025年1月にも2度目の追加利上げを実施し、長年にわたる低金利でのビジネスモデルは終焉を迎えた。
 業歴を問わず、時代の変化に合わせた商品見直しや事業転換で、安定した収益確保への投資が不可欠になっている。製造業や流通業をはじめ、あらゆる業種で効率経営を目指した投資が避けられないだけに、後手に回った場合、否応なしに廃業や倒産が現実味を帯びてくるだろう。

主な産業別 倒産企業の平均寿命推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ