• TSRデータインサイト

142年目の大転換、官報電子化で破産公告が検索不可に ~ プライバシー保護強化、与信業界は影響懸念 ~

 いまから142年前。政府が1883(明治16)年7月、「官報」を創刊した。4月1日、官報の「正本」が紙から電子版へ移行する。
 官報は、法律や国の人事、叙位叙勲のほか、法令に基づく決算公告、破産手続開始の公告などを公的な伝達手段とする国の公報だ。
 紙の官報は毎朝、購読者の手元に届く。また、国立印刷局が提供する「官報情報検索サービス」(有料)は、ウェブサイトで日付検索やキーワード検索が可能で、金融機関や与信業界でも利用されている。
 官報の電子化に伴う情報検索サービスの変更について取材した。


個人・法人破産ともにも検索不可

 2023年の臨時国会で官報の電子化に関する法律が成立し、内閣府は4月1日に電子官報を配信する官報発行サイトを開設する。4月1日以降も官報掲載事項記載書面として紙の交付を継続する。
 官報発行サイトでは、官報に掲載される記事のうち、「プライバシー配慮が必要な記事」については公開期間を90日に限定した上で、画像化処理されたPDFデータを提供することとなっている。
 これまで、国立印刷局が提供する官報情報検索サービスは1947年5月3日~発行当日まで、キーワードなどの記事検索が可能な有料コースがあり、サービスとして金融機関や事業会社の与信担当は、代表者や法人の破産歴など種々の掲載内容が検索可能だった。
 だが、新しい官報情報検索サービスでは、内閣府の対応を受けて「プライバシー配慮が必要な記事」は、1947年以降の過去分を含め、キーワード検索ができなくなる。
 プライバシー配慮記事は、個人・法人を問わず破産や民事再生、免責等の公告、弁護士などの個人に対する懲戒処分、帰化などの情報が含まれる。一方、プライバシー配慮記事以外の組織変更や合併、解散、決算公告、会社更生などは検索可能で、1947年以降の過去分含めて検索ができる。
 官報で破産などの与信情報を自社で得るには、紙面や電子版を目視する必要があり、過去の破産などは官報情報検索サービスでは検索できなくなる点は注意が必要だ。
 なお、官報情報検索サービスのサービス変更は、ひと足早く3月15日に切り替わる。



 官報が歴史的な転換期を迎える。破産歴などを官報で効率的かつ網羅的にチェックできないことは、金融機関やリース会社、事業企業の与信部門への影響が大きい。
 これまでの業務の見直しは避けて通れないだろう。

官報情報検索サービス


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年3月14日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ