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「解体工事業」の倒産 過去最多の54件 解体コスト、人手不足で赤字工事が増加

2024年度(4-2月)「解体工事業」倒産の状況


 都市部での再開発が活発な中、解体工事業の倒産が増えている。2024年度は4-2月合計が54件に達し、過去20年間で最多の2023年度の53件(2011年度同数)を上回り、11カ月で年度最多を更新した。
 マンパワーが必要で、解体費用のコスト増に耐えられなかった小規模事業者の倒産が目立った。
 2024年度(4-2月)の54件では、「物価高」関連が5件(前年度2件)、「人手不足」関連が5件(同1件)、「新型コロナウイルス」関連9件(同8件)と、業績不振だけでなく複合的な要因により追い込まれた解体工事業者の姿が浮かび上がってくる。

 2008年秋のリーマン・ショックで不動産業界、建設業界が痛手を受け、解体工事業者の倒産も2011年度は53件発生した。その後、2011年に東日本大震災が発生し、復興特需や不動産開発の盛り上がりなどから倒産は沈静化。コロナ禍でも根強い不動産市況に加え、休業店舗の解体工事などで倒産は2022年度まで小康状態が続いた。
 しかし、コロナ禍を境に建設資材の価格上昇や産業廃棄物の処理費用の上昇などで、解体工事のコストが上昇。さらに、人手不足も深刻化し、体力の乏しい解体工事業者の淘汰が急増した。

 倒産した54件の原因別は、受注不振が38件(前年度39件)で7割(70.3%)を占める。ただ、件数は横ばいで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が9件(同6件)とコスト増を吸収できない赤字倒産が増加している。適正な発注単価かどうか、検証が必要かもしれない。 
※本調査は、日本産業分類の「はつり・解体工事業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。


解体工事業の倒産 年度推移


形態別は、すべてが「破産」だった。
資本金別は、「1百万円以上5百万円未満」が最多の20件(構成比37.0%)で、「5百万円以上1千万円未満」が12件(同22.2%)など、個人企業他を含む資本金1千万円未満が47件(同87.0%)と約9割を占めた。
負債額別は、「1千万円以上5千万円未満」が26件(同48.1%)と半数近くが小規模だった。ただ、負債1億円以上も18件(同33.3%)と過剰債務を抱えた工事業者の倒産も多かった。
従業員数別は、最多が「5人未満」が34件(同62.9%)だった。「5人以上10人未満」も14件(同25.9%)発生し、人手不足の影響も見え隠れしている。

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