• TSRデータインサイト

脱毛サロン「ミュゼプラチナム」、経営権を巡り衝突 ~ 合同会社トラスト・代理人弁護士に単独インタビュー ~

 脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」の経営権に注目が集まっている。
 ミュゼを巡っては、運営会社や株主がたびたび変更され、2024年9月にMPH(株)(TSRコード:036547190、東京都港区)が運営会社となった。だが、今年2月7日、合同会社トラスト(TSRコード:023567023、東村山市)が、「経営体制及び今後の運営に関するご連絡」(以下、通知)をMPHに送付し、取締役の解任などを突きつけた。
今回、解任を通知したトラストの代理人弁護士と関係者が東京商工リサーチ(TSR)の取材に応じた(取材日は2月20日)。
以下、内容を詳報する。

―MPHへの「通知」について
 2月7日、トラストからMPHへ「経営体制及び今後の運営に関するご連絡」と題する通知書をFAXで送付した。
譲渡担保権の実行でMPHの株式を取得し、同日、株主が全員出席して開催された株主総会で(MPHの)取締役全員が解任され、新たな取締役としてA氏を選任した。10日に旧経営陣をオフィスに入館できない状態にしたが、そうしなければならないほど切迫した状況だった。

―今回の事態のきっかけは
 トラストとMPHの間には取引があった。MPHと仕入先の商流に入り、支払いサイトの調整などを担う契約が存在していた。
MPHに対して、株の譲渡担保権を設定していたのは、トラストと広告取引を担うX社だ。この2社でMPHの議決権を100%行使できることが判明し、2社の協力の下、新体制にて再建を進めることを決めた。
旧経営陣には、コンプライアンス上の懸念点があり、新規取引や大口の資金調達が難しいという問題があったと聞いている。
そのほか、MPHの関係者などからも要望があり、新会長(B氏)の下で会社を取りまとめ、再出発することを決めた。


トラストがMPHに送付した文書



―新しく代表取締役に就任したA氏とは
 現在のトラストの職務執行者だ。元々ミュゼの関係者ではなく、新体制に移行するため、一時的に代表になった。

―新たに会長に就任したB氏について
 元々、旧経営陣とミュゼプラチナム事業を再建しようとしていた。だが、社内外の関係者、取引先の情報提供や自らの経験などから、旧経営陣の体制のままでは、コンプライアンスや資金調達の面で懸念があると考えて新体制に協力してくれた。そこで、従業員や取引先に安心してもらうため、会社の取りまとめをB氏に担ってもらった。

―通知のなかで、「経営陣による不正」に言及している
 MPHからレナード(株)(TSRコード:300051093、東京都中央区、脱毛機器販売会社)に使途の分からない出金があるとのことであり、それを指摘した。売買契約に限った話ではない。

―現在のMPHの資金繰りは
 旧経営陣の下では、給与や店舗賃料の支払遅延が慢性化するなど、資金繰りは悪化していた認識だ。現在はB氏を中心にMPHの資金繰り状況を改善させるため、資金調達を進めている。
新しいスポンサーなどの情報は現時点(2月20日)で従業員には知らされておらず、具体的な日付や金額を出すのは難しい。給与や資金調達について、今後アナウンスがあると思われる。
また、2月の給料日は25日だが、現時点では、社員に特にアナウンスはされていない。なお、1月の給与は、70%支払われているが、旧経営陣解任の時点で30%は遅延していた。

―現在の株主構成や登記内容の変更状況は
 B氏、トラスト、X社の3名が現在の株主だ。筆頭株主はB氏だ。現在は、登記事件中となっているが、役員変更の登記を申請している。

―今後の展望は
 何らかの形で、資金調達のめどがつく予定だ。スポンサーとの協議を鋭意進めており、資金調達ができると思われる。
 新経営陣のもと、従業員や顧客が安心できるような経営体制になったことを示していくことが重要だ。
 ミュゼの再建については、旧経営陣と意見が対立している。経営の混乱はミュゼのブランドの毀損につながり、落としどころがつけられるのであれば、代理人弁護士同士の話し合いを進めていきたいと考えている。


ミュゼプラチナムの看板



 従業員への給料遅配など、不安定な経営がSNSでも拡散され、業界大手「ミュゼプラチナム」の動向が注目されている。
経営権を巡る混乱は、従業員だけでなく顧客にも影響が及び、ブランド維持と先行きは不透明さを増している。
事態の解決が遅れるほどブランドの毀損が加速するだけに、一刻も早い事態の収束と不足ない情報開示が望まれている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年3月3日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ