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企業の1.7%が「私的整理を検討中」 約2割の企業で取引行が増加、調整複雑に

~ 「私的整理に関するアンケート」調査 ~


 政府は2024年6月、「事業再構築小委員会」を設置し、事業再構築法制の整備への議論が進んでいる。こうしたなか、東京商工リサーチは2月3日~10日に「私的整理に関する企業アンケート」を実施した。それによると、私的整理の実施や検討など、具体的にアクションした230社のうち、13社(5.6%)が「調整したが成立しなかった」と回答した。

 国内の準則型私的整理手続きを巡っては、中堅・大企業向けの「事業再生ADR」の根拠となる産業競争力強化法等を2021年に改正し、成立の予見可能性を高めた。また、2022年に「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の運用を開始し、過剰債務や事業再生への対応を図ってきた。しかし、これまでの取り組みだけでは拾いきれていない事業再構築のニーズがあることが浮かび上がった。
 
 準則型私的整理では、基本的に金融債権者のみを債務カットなど権利変更の対象にしている。ただ、自動車部品大手のマレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064、埼玉県)の私的整理(事業再生ADR)では一部の金融機関が反対して成立せず、2022年6月に民事再生法(簡易再生)の適用を申請した経緯がある。これは多数の金融債権者の権利や思惑が絡み合う場合、成立が難しいことを浮き彫りにし、多数決を念頭にした法整備に注目が集まった。

 今回のアンケートでは、この5年で融資を受ける金融機関数が「増加した」企業が18.5%あり、金融機関の調整は難しくなっている。法制化ではこうした課題をクリアできるかも焦点だ。

※本調査は、2025年2月3日~10日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,752社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.貴社が融資(貸付)を受けている金融機関数(保険会社・貸金業者含む)を5年前と比べた場合、増減しましたか?(択一回答)

◇「増加した」は18.5%
 「増加した」は18.5%(5,319社中、988社)、「変わらない」は66.1%(3,516社)、「減少した」は15.3%(815社)だった。規模別でみると、大企業(資本金1億円以上)の「増加した」は14.4%(375社中、54社)だったのに対し、中小企業(資本金1億円未満、個人企業等含む)では18.8%(4,944社中、934社)だった。
 「増加した」と回答した企業の業種(全企業、業種中分類、母数10以上)で最も構成比が高かったのは、「水運業」の40.0%(10社中、4社)だった。

Q1.貴社が融資(貸付)を受けている金融機関数(保険会社・貸金業者含む)を5年前と比べた場合、増減しましたか? ◇「増加した」は18.5%

Q2.Q1で「増加した」と回答された方に伺います。どの形態の金融機関が増加しましたか?
(複数回答)

◇「地方銀行」が目立つ
 Q1で「増加した」と回答した企業のうち、960社から回答を得た。最も多かったのは「地方銀行」の65.2%(626社)で、次いで「信用金庫、信用組合」の38.7%(372社)、「国内メガバンク」の14.7%(142社)と続く。外国銀行は0.2%(2社)だった。
 規模別でみると、「国内メガバンク」と「信用金庫、信用組合」との回答は、大企業と中小企業で10ポイント以上の差があった。
 「その他」では、「政府系金融機関」や「リース会社」や、「インターネット銀行」との回答があった。

Q2.Q1で「増加した」と回答された方に伺います。どの形態の金融機関が増加しましたか? ◇「地方銀行」が目立つ

Q3.貴社はこれまでに私的整理を実施したこと、または検討したことはありますか?

※私的整理=事業再生ガイドラインや事業再生ADR、中小企業活性化協議会などを活用した債務の減免手続きです(択一回答)

◇「調整したが成立しなかった」企業も
 最多は「実施・検討したことはない」の96.0%(5,752社中、5,522社)だった。以下、「私的整理を検討中だ」の1.7%(103社)、「私的整理を実施し完了した」の1.0%(59社)、「私的整理中である」の0.9%(55社)と続く。
 「調整したが成立しなかった」は0.2%(13社)だった。すべての企業を母数とすると比率は低位だが、私的整理を実施したり検討するなど具体的にアクションした企業(230社)に限定すると5.6%となる。現在の枠組みでは、債務整理や事業再構築の意思があっても対応できていない実態が浮き彫りとなった。

Q3.貴社はこれまでに私的整理を実施したこと、または検討したことはありますか? ◇「調整したが成立しなかった」企業も

Q4.Q3で「私的整理を実施し完了した」「私的整理中である」「私的整理を検討中だ」と回答された方に伺います。その際の苦労、懸念事項は何ですか?(当てはまるものすべてを選択してください)(複数回答)

◇「国内金融機関との調整」が68.1%
 198社から回答を得た。最も多かったのは、「国内金融機関(銀行・信金・信組)との調整」の68.1%(135社)だった。「海外金融機関との調整」は1.5%(3社)だった。
 そのほか、「事業再生計画の策定」の42.4%(84社)、「会計・税務処理」の32.8%(65社)などが上位に並んだ。有事での伴走支援者の拡充も今後の論点になりそうだ。
 「その他」では、「弁護士との話し合い」(卸売業、資本金1億円未満)、「コンサルティング会社への資料提出」(サービス業、資本金1億円未満)、「従業員の整理」(情報通信業、資本金1億円未満)など。

Q4.Q3で「私的整理を実施し完了した」「私的整理中である」「私的整理を検討中だ」と回答された方に伺います。その際の苦労、懸念事項は何ですか? ◇「国内金融機関との調整」が68.1%

Q5.Q3で「私的整理に向けて調整したが成立しなかった」と回答された方に伺います。成立しなかった理由は何ですか?(複数回答)

◇「国内金融機関との調整不調」が40.0%
 10社から回答を得た。「最多は国内金融機関(銀行・信金・信組)との調整不調」の40.0%(4社)だった。「法的整理に移行した」は20.0%(2社)だった。




 今回の調査で「私的整理を検討中」と回答した企業が1.7%あることがわかった。国内の企業数(337万社、令和3年経済センサス-活動調査)に掛け合わせると5.7万社に達する。議論が進んでいる「私的整理の法制化」は、中堅規模・大企業を念頭に置いており、こうした企業のすべてをカバーできないが、リーマン・ショックやコロナ禍を経て過剰債務に苦しみ、事業再生局面にある企業が多いことを改めて浮き彫りにしている。
 ただ、私的整理を経験した企業のなかには、再生実務家とのやり取りに苦労したと感じたケースも少なくない。企業と金融機関の関係は論点が整理され、周知が進んでいるが、有事の対応は当事者でないと興味を持ちにくい。このため、企業側への啓もう活動よりも有事に対応できる伴走支援者の質と数の拡大がカギになりそうだ。

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