• TSRデータインサイト

2024年の「早期・希望退職」 3年ぶり1万人超 募集社数57社、募集人数は前年の3倍に急増

2024年の上場企業「早期・希望退職募集」状況


 2024年に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は57社(前年41社)で、前年から39.0%増加した。募集人員は1万9人(同3,161人)と3倍に急増、2021年の1万5,892人以来、3年ぶりに1万人を超えた。相次ぐ大手メーカーの大型募集で人数が膨れ上がり、黒字企業の構造改革も目立った。
 
 2024年の募集人数は、大手メーカーを中心に大型化した。構造改革プログラムとして1,000人を募集したオムロン、「ミライシフトNIPPON2025」で1,500人を募集した資生堂、グローバル構造改革でグループ全社2,400人に及ぶ募集を行うコニカミノルタ、堺ディスプレイプロダクトの従業員500人の募集を明かしたシャープ、セカンドキャリア支援制度で1,000人を募集するリコー、200億円の費用計上を発表した富士通などで大型募集が目立つ。また、国内人数未定のため募集人数の統計に含まないが、年末に日産自動車がグローバルで9,000人の募集を発表をした。
 さらに、2025年に入るとルネサスエレクトロニクスが国内外の社員約2万1,000人のうち、5%未満にあたる人員削減を行うことが明らかになった。同社は東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、「特定のポジションごとに人員削減の退職勧奨を実施する」と応じた。

 上場区分は東証プライムが40社(構成比70.1%)と圧倒的に多く、直近決算で黒字企業が34社(同59.6%)と約6割を占めた。経営環境が不透明さを増し、将来を見据えた構造改革に着手する企業が増えており、2025年も上場企業の早期・希望退職の募集が加速する可能性が高い。

※ 本調査は、希望・早期退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。
※ 2024年12月31日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』と東京商工リサーチの独自調査に基づく。


上場企業 早期・希望退職 推移


電気機器が最多

 業種別は、グローバル構造改革で対象がグループ全社の2,400人に及ぶコニカミノルタ、募集人数は非公表だが200億円の費用計上を発表した富士通、構造改革プログラムとして1,000人を募集したオムロンなど、電気機器が13社(前年5社)で最多だった。
 次いで、TVポストプロダクション事業などを対象に150人の募集を行うIMAGICA GROUPなど情報・通信業が10社(同11社)、ワコールホールディングスなど繊維製品(同3社)、武田薬品工業など医薬品(同5社)、井関農機など機械(同2社)の各4社が続く。

業種別(社数上位)

損益別 黒字企業が約6割

 「早期・希望退職募集」を実施した企業の直近通期最終損益(単体)は、黒字が34社(構成比59.6%)、赤字が23社(同40.3%)で、黒字が約6割を占めた。  
 黒字企業の募集人数は8,141人で、全体の約8割(同81.3%)を占める。黒字34社のうち、29社が東証プライム上場だった。
 赤字23社の募集人数は1,868人で、東証プライムが11社、東証グロースが5社、東証スタンダード7社だった。

損益別

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

長渕剛さんの個人事務所、イベント会社に破産申立

歌手の長渕剛さんが代表を務める(株)オフィスレン(TSRコード:295731311、渋谷区)が、イベント運営を委託していた会社を相手取り、東京地裁に破産を申し立てたことが東京商工リサーチ(TSR)の取材で判明した。

2

  • TSRデータインサイト

みんなで大家さん、分配金の支払いが遅延

7月31日、不動産投資商品を販売するみんなで大家さん販売(株)(TSRコード:571226140)は、不動産投資商品「みんなで大家さん成田1号~18号(全18商品)」について、7月末の利益分配(分配金)が遅れると投資家に通知した。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

4

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

5

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

TOPへ