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建設業の倒産 過去10年間で最多 資材高、人手不足に「2024年問題」が追い打ち

~ 2024年1-12月建設業倒産状況 ~


 2024年の建設業の倒産が1,924件(前年比13.6%増)に達し、2015年以降の10年間で最多を記録した。3年連続で前年を上回り、1,900件台に乗せたのは2014年の1,965件以来、10年ぶり。
 負債総額は1,984億5,800万円(同7.6%増)で、3年連続で前年を上回った。負債が1,900億円を上回ったのは、2015年の1,935億3,700万円以来、9年ぶり。負債 1千万円以上5千万円未満の小・零細規模の倒産が1,083件(同15.9%増)と大幅に増え、建設業倒産の約6割(構成比56.2%)を占めた。一方で、負債10億円以上も21件(前年9件)と急増し、建設業の苦境が広がっていることがわかった。
 
 建設業の許可業者数は2023年度末で47万9,383業者と増勢に転じている。都心や地方での再開発も動き出し、コロナ禍の低迷から受注環境は民間中心に徐々に回復している。
 だが、資材高や人手不足に伴う労務費などの深刻なコストアップが直撃し、「完工高の伸びは資材値上げ分」と言われる業者も少なくない。これを裏付けるように2024年の「物価高」倒産は142件(前年131件)に増えている。特に、下請けが多く価格転嫁が難しいとび・土工・コンクリート工事など職別工事業者の収益悪化は深刻で、倒産は736件(前年比16.0%増)に達した。

 建設業における人手不足は、高齢化に加えて、職人不足と後継者不足が同時に進行している。2024年の「人手不足」関連倒産は180件(前年128件)と前年の1.4倍で、他業界に比べひと際目立つ。2024年4月からの時間外労働の上限規制で、コスト負担だけでなく、工期遅れへの対応にも苦心する企業は多い。
 ゼロゼロ融資の返済や金利上昇の局面に入り、工期ズレは絶対に避けたい時期を迎えている。特に、資金需要が活発な年度末を控え、中小・零細規模への金融機関の貸出姿勢が注目される。

※本調査は、負債総額1,000万円以上の建設業の倒産を集計、分析した。


建設業の倒産 年次推移

業種小分類別は、建築工事業が301件(前年比18.5%増)で最多。次いで、土木工事業249件(同15.2%増)、とび・土工・コンクリート工事業179件(同21.7%増)が続く。

原因別は、「販売不振」が1,337件(前年比12.8%増、構成比69.4%)で最多。次いで、「既往のシワ寄せ」355件、「事業上の失敗」58件、「他社倒産の余波」51件、代表者死亡などの「その他(偶発的原因)」47件の順。

形態別は、破産が1,786件(構成比92.8%)で9割超を占めた。取引停止処分が75件で続く。

負債額別は、1千万円以上5千万円未満の1,083件が最多で、約6割(同56.2%)を占めた。次いで、1億円以上5億円未満が415件、5千万円以上1億円未満が364件、5億円以上10億円未満が41件、10億円以上が21件の順。なかでも、負債10億円以上が前年比133.3%増と急増した。

従業員数別は、5人未満が1,446件で約8割(同75.1%)を占めて最多。このほか、5人以上10人未満が335件、10人以上20人未満が108件、20人以上50人未満が31件、50人以上300人未満が4件。

都道府県別では、大阪府255件が最多。東京都199件、神奈川県126件、愛知県122件が続く。

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