• TSRデータインサイト

2024年の「上場企業」倒産 3年連続で発生 日本電解(株)が民事再生法、令和で5件目

2024年の「上場企業」倒産(12月27日16時時点)


 2024年の上場企業の倒産は、 12月27日16時時点で11月27日に東京地裁に民事再生法を申請した東証グロースの日本電解(株)(茨城県、負債総額147億6,100万円)の1件だった。
 上場企業の倒産は、リーマン・ショック時の2008年に過去最多の33件発生した。その後は急速に沈静化し、2011年以降は1ケタにとどまっている。新型コロナが拡大した2020年以降は、2020年の2件が最多で、2021年はゼロ、2022年から3年連続で1件発生している。
 令和(2019年)に入り日本電解は5社目。負債総額147億6,100万円は、2020年5月に会社更生法を申請した(株)レナウン(東京都、負債138億7,900万円)を抜いて令和最大となった。

 日本電解は、1958年に大手メーカー3社の共同出資で設立された企業が前身で、車載電池向け電解銅箔製造を手がけていた。2021年6月、東証マザーズ(現:東証グロース)に上場した。
 電気自動車の市場拡大で業績を伸ばしたが、世界的な半導体不足や米国インフレ抑止法施行や、新型コロナの影響等で米国子会社の赤字が拡大。さらに、販売減少や銅価格の急騰などで収益が悪化し、2024年9月中間期決算(連結)で多額の赤字を計上していた。
 2024年1月に台湾の銅箔メーカーと資本業務提携契約を締結し、新株予約権発行で資金調達を目指す一方、6月に現筆頭株主と資本業務提携契約を締結し、約10億円の出資を受けていた。しかし、支援先を模索したがみつからず、11月27日に米国子会社の解散および清算を決議し、子会社への貸付金の大部分が回収困難となり自力再建を断念した。

 2024年の上場企業の倒産は1件だが、上場廃止は株式の併合や完全子会社化などで94件(12月28日上場廃止予定の日本電解を含む)に達し、前年の61件から1.5倍に増えている。
 円安で輸出企業の業績は堅調を持続するが、内需(消費)関連企業は苦戦し、1月に(株)タカキュー(東証スタンダード)、11月にユニチカ(株)(東証プライム)が地域経済活性化支援機構(REVIC)の再生支援の決定を受けた。今後、経営不振の上場企業は倒産を避け、多様な私的整理を活用した再生への選択が広がるとみられる。


上場企業倒産 年次(1-12月)推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多 ~ コメ作りの「あきらめ」、さらに増加も ~

コメ価格の高騰が止まらない。農水省が18日に発表した3月の米価格(相対取引価格)は2万5,876円で、1年前の約2倍の高値だ。 政府は備蓄米を放出したが、小売業者にはなかなか届かず、韓国産やアメリカ産の輸入拡大も検討されている。

2

  • TSRデータインサイト

パン屋の倒産が急減、コメ高騰でパンに注目 ~ 高級パンブームや小麦高騰の影響も一巡 ~

コメ価格の高騰が食卓と倒産に変化を及ぼしている。高級パンブームが崩壊したことに加え、小麦粉の価格上昇でパン屋さんの倒産が増加していたが、ここにきて急激に減少していることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

2025年4月「人手不足」倒産 最多の36件 人材の流動化が進み、「求人難」「従業員退職」が急増

2025年4月の「人手不足」が一因の倒産は、36件(前年同月比44.0%増)で、4月としては2013年以降では過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

パナソニックHDの早期希望退職募集 2012年以降の国内募集で最大規模、13年ぶり募集5,000人台

パナソニックホールディングス(株)(TSRコード:570191092)は5月9日、国内外で1万人規模の人員削減を発表した。国内は5,000人規模の見込み。

5

  • TSRデータインサイト

「人材派遣業」倒産、1-3月は過去最多の29件 ~ 「円高」、「トランプ関税」でさらに増加も ~

人手不足で人材の獲得競争が厳しさを増すなか、人材派遣会社(労働者派遣業)の倒産が急増している。

TOPへ