• TSRデータインサイト

全国の主な「旅館・ホテル」 業績がV字回復 観光資源の付加価値向上など、地域の課題も浮上

全国「旅館・ホテル業」1,453社 2023年度業績調査


 コロナ禍の直撃で大打撃を受けた全国の旅館・ホテル業の業績が、コロナ禍前の水準を上回ることがわかった。インバウンド需要の回復と国内旅行客の増加により宿泊料金の値上げ等が進み、業績に寄与したとみられる。

 全国の旅館・ホテル1,453社を対象に、2023年度の業績を調査した。売上高は3兆2,213億円(前期比25.1%増)、利益は2,522億円(同211.9%増)で、利益は3.1倍にV字回復した。
 全体の7割(構成比73.9%)の1,075社が黒字を計上した。ただ、業績の地域格差が大きく、宿泊単価だけでなく、地域の観光資源の付加価値向上など、地域全体で取り組むべき課題も浮上している。

 売上高別では、売上高100億円以上が58社(構成比3.9%)にとどまる一方、5億円未満は898社(同61.7%)と6割を占めた。ただ、売上高100億円以上の58社で、売上高全体の62.3%を占め、全国展開する大企業と地域に特化した中小企業による二分化された構造が鮮明になった。

 日本政府観光局(JNTO)によると、2024年10月の訪日外客数は331万2,000人で、2024年7月の329万2,600人を上回り、単月の過去最高を記録した。だが、オーバーツーリズムや人手不足などの問題も浮上している。インバウンド需要を一過性の特需で終わらせず、持続可能な形で発展させられるかどうかが今後の課題になっている。

※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)から、日本産業分類(細分類)の「旅館・ホテル業」を対象に、2023年の業績(2023年4月期~2024年3月期決算)を最新期とし、5期連続で売上高、利益が判明した1,453社を抽出、分析した。


売上高はコロナ禍からV字回復

 全国の主な旅館・ホテル1,453社の2023年度の売上合計は、3兆2,213億9,200万円(前期比25.1%増)、最終利益は2,522億3,100万円(同211.9%増)だった。
 売上高の伸びは、利用客の増加に加え、単価上昇(値上げ)の寄与が大きいとみられる。利益は前期比3.1倍と売上の伸びを大きく上回った。
 2023年度の最終利益率は7.8%で、前年度3.1%から4.7ポイント上昇した。
 売上高別では、1億円以上5億円未満の456社(構成比31.3%)が最も多かった。次いで、1億円未満の442社(同30.4%)、10億円以上50億円未満の255社(同17.5%)と続く。
 5億円未満が全体の約6割(同61.8%)を占め、売上高100億円以上の大手と、地域に特化した中小・零細規模に二分化した構造になっている。

旅館・ホテルの業績 年度推移(4-3月)

地区別損益 関東地方がトップ

 地区別の黒字企業の割合は、関東がトップの79.7%だった。 
 以下、九州78.0%、北海道77.5%と続く。インバウンド需要や国内旅行が堅調な地域で黒字を確保した企業が多い。
 黒字率が低かった地区は、中国53.3%、北陸62.9%、東北69.0%だった。宿泊価格だけでなく、観光資源の付加価値向上の取組みも必要かもしれない。

旅館・ホテル 地区別損益



人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

3

  • TSRデータインサイト

「調剤薬局」 中小・零細はリソース不足で苦戦 大手は戦略的M&A、再編で経営基盤を拡大

 調剤薬局の大型再編が加速するなか、2025年1-8月の「調剤薬局」の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期と2024年同期の22件に迫る多さだった。今後の展開次第では、年間初の30件台に乗せる可能性も高まっている。

4

  • TSRデータインサイト

りそな銀行、メイン取引先数が増加 ~ 大阪府内企業の取り込み加速 ~

関西や首都圏で大企業から中堅・中小企業のメインバンクとして確固たる地位を築くりそな銀行。「2025年全国メインバンク調査」ではメインの取引社数は3メガバンクに次ぐ4位の4万511社だった。東京商工リサーチが保有する全国の企業データを活用しりそな銀行がメインバンクの企業を分析した。

5

  • TSRデータインサイト

メインバンク調査で全国5位の北洋銀行 ~圧倒する道内シェアで地域経済を牽引~

「2025年全国メインバンク調査」で、北洋銀行(2万8,462社)が3メガ、りそな銀行に次ぎ、調査開始の2013年から13年連続で全国5位を維持した。北海道に169店舗、都内1店舗を構え北海道内シェアは約4割(37.9%)に達する。

TOPへ