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社長の「輩出率」徳島県が7年連続トップ  沖縄県内企業の社長は全国で唯一、9割以上が“地元出身”

2024年全国「社長の輩出率・地元率」調査

 社長の出身地と各都道府県の人口から算出した社長の「輩出率」は、徳島県が1.35%で7年連続でトップとなった。阿波商人の気質を受け継ぐ県民性に加え、近畿圏との活発な交流を反映したとみられる。

 2位は山形県1.14%、3位は香川県1.08%、4位は秋田県1.03%、5位は愛媛県0.99%だった。高知県も0.86%で10位に上昇、四国4県すべてが10位以内に入った。

 社長の出身地と本社地が同じ都道府県の「地元率」は、沖縄県が92.4%で唯一、90%を超えた。調査を開始以来、11年連続でトップを守った。地理的な要因に加え、観光、公共事業、基地関連の産業が活発な地域性が“地元起業”につながっているようだ。


 社長の「輩出率」や「地元率」は、人口動態や産業構造も絡み、地域経済にも直結している。その実態を示す指標の一つとして、このデータから次の一手がみえてくるかもしれない。

※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース約400万社の代表者データ(個人企業を含む)から、公開された出身地を抽出、集計した。なお、同一人物が複数の企業で社長を務めている場合、売上高の大きい企業を優先し、重複企業は集計の対象外とした。集計対象外企業は31万6,489社。

※ 都道府県別の社長数は人口に左右される面もあり、出身都道府県別の社長数と人口(総務省「住民基本台帳人口」 2024年1月1日現在)から、社長「輩出率」を算出した。本調査は2010年から集計し、今回が11回目。


社長「輩出率」、徳島県が7年連続トップ

 都道府県別に社長の「輩出率」(社長数/人口)を算出した。それによると、トップは徳島県の1.35%(前回1.35%)で、7年連続トップを守った。近畿圏に面し、古くから結び付きが強く、産業や観光・文化等の振興が目的の「関西広域連合」に四国から唯一、加わる。

 2位以下は、山形県1.14%(前回1.15%)、香川県1.08%(同1.09%)、秋田県1.03%(同1.05%)、愛媛県0.99%(同1.00%)、広島県0.92%(同0.93%)、青森県0.89%(同0.89%)と続く。10位内は四国4県、東北4県で、これ以外では6位広島県0.92%、8位山梨県0.88%だった。

 一方、社長「輩出率」が最も低いのは、埼玉県の0.26%(同0.26%)。次いで、46位が千葉県0.27%(同0.27%)、45位が神奈川県0.32%(同0.33%)で、42位の東京都を含む首都圏が下位に並んだ。この他では、44位に滋賀県0.36%(同0.37%)、43位に兵庫県0.45%(同0.45%)の近畿勢が並び、43位以下は前年と同順位だった。


 下位に首都圏や近畿圏が並んだ。2024年の社長の平均年齢は63.7歳(東京商工リサーチ調べ)で、この社長たちが生まれた時代である1960年の人口(国勢調査)と2024年の人口を比較すると、埼玉県が243万人から737万人、千葉県は230万人から631万人、神奈川県は344万人から920万人、滋賀県は84万人から141万人、兵庫県は390万人から542万人と、それぞれ大幅に人口が増えている。他県出身者の転入も含めた人口増が、社長「輩出率」を押し下げているようだ。

2024年都道府県別 社長輩出率

2024年都道府県別 社長輩出率(ワースト)


社長の出身地の「地元率」 沖縄県が11年連続トップ

 社長の出身都道府県と本社の所在地が同一の「地元率」は、沖縄県が92.4%(前回92.5%)で調査を開始以来、11年連続トップだった。47都道府県のうち、唯一90%台を維持した。

 県内産業の中核が「3K」(観光、公共事業、基地)で、離島という地理的な要因もあって他県からの移住より、地元出身者の起業が多いようだ。

 東京商工リサーチが2024年5月に発表した“2023年「全国新設法人動向」調査”で、普通法人数に対する新設法人の割合が沖縄県は8.6%で14年連続トップだった。インバウンド需要を背景に、起業ペースはしばらく高水準をたどりそうだ。

 2位以下は、愛知県88.7%(前年89.0%)、広島県87.2%(同87.3%)、北海道86.9%(同87.1%)、香川県85.9%(同85.9%)、宮城県85.7%(同85.7%)が続く。

 いずれも地域経済の中心で、地元から出ない、あるいはUターンの社長が多い可能性もある。

 愛知県や広島県は自動車産業の集積地で、取引先や関連企業など裾野が広く、下請け企業の後継社長も押し上げた可能性がある。


 一方、「地元率」の最低は奈良県の64.1%(前年64.9%)だった。次いで、長崎県66.2%(同66.5%)、兵庫県67.0%(同67.6%)、佐賀県69.0%(同68.8%)、山口県69.4%(同69.2%)、鹿児島県69.4%(同69.5%)、千葉県69.9%(同70.2%)と続き、7県が70%を割った。

 大都市圏への流出が多いとみられるが、逆に他県で活躍する人材(社長)を多く輩出しているともいえる。

2024年都道府県別 社長地元率


 社長の「輩出率」や「地元率」を都道府県別にみると、人口動態や地場産業、県民性、地理的条件など、様々な要因が絡み合っている。

 全国で少子高齢化に歯止めがかからず、大企業や幅広い職種を求めて若者が地方から大都市圏へ流出しており、都市部の「地元率」は今後も低下していく可能性がある。

 また、後継者不在で事業承継が難しい中小企業は、親族以外の第三者承継やM&A、事業譲渡を選択するケースが増えてくると思われる。より一層、官民による支援やM&Aプラットフォームの充実が進むとみられる。政策と税制面から後押しすることで親族以外への事業承継が円滑に進めば、社長の「地元率」にも変化が生じる可能性が高い。


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