メインバンク企業の増加率トップ GMOあおぞらネット銀行、首都圏や新設法人で強み
「2024年企業のメインバンク調査」(8月21日号掲載)で、メインバンク取引社数の増加率トップ(取引社数500社以上を対象)は、GMOあおぞらネット銀行だった。2023年までは分析対象外の500社以下だったが、2024年は890社に急増、増加率118.6%増でトップに躍り出た。
2018年7月に誕生したインターネット専業銀行で、新設法人などスタートアップ企業から選ばれている。設立1年未満は他行への振込手数料が月20回まで無料、当日口座開設など、スピード感も強みになっている。
増加率トップのGMOあおぞらネット銀行の強さを東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースから分析した。
都市圏企業が約7割
GMOあおぞらネット銀行の登記上の設立日は、前身の日債銀信託銀行が設立された1994年2月28日だ。2001年1月にあおぞら信託銀行、2018年6月にGMOあおぞらネット銀行に商号を変更。そして、同年7月にインターネット銀行の事業を開始し、同年10月に信託業務をあおぞら銀行に承継した。
GMOあおぞらネット銀行をメインとする890社の本社所在地は、最多は東京都の406社(構成比45.6%)。次いで、神奈川県の91社(同10.2%)、大阪府の67社(同7.5%)、千葉県の56社(同6.2%)、埼玉県の55社(同6.1%)で、大都市圏の企業が多い傾向にある。
一方、北陸3県は7社(同0.7%)、東北5県は12社(同1.3%)と、エリアによって偏りが大きい。ネット銀行の利点が知られると大都市以外の企業にも広がり、取引社数はさらに増える可能性を秘めている。
業歴別、3年未満が約7割
業歴別(設立年月ベース、10月31日現在)では、業歴3年未満が610社(構成比68.5%)で約7割を占めた。次いで、3年以上5年未満の217社(同24.3%)、5年以上10年未満が46社(同5.1%)、10年以上30年未満も15社(同1.6%)だった。5年未満が92.9%と9割を超えているのが大きな特徴だ。
売上高別、売上高1億円未満が約9割
業績が判明した431社の売上高別では、1億円未満が373社(構成比86.5%)で最も多かった。
資本金別では、100万円以上500万円未満が最多の438社(同49.2%)、次いで100万円未満の222社(同24.9%)が続き、1,000万円未満が782社(同87.8%)を占めた。
従業員数別(正社員、判明ベース)では、4名未満が574社(同64.4%)と6割超に達し、小規模事業者を中心に顧客を増やしている。
産業別ほか、サービス業他が4割超
産業別、業種別で分析した。産業別では、最多がサービス業他の387社(構成比43.4%)、次いで情報通信業の219社(同24.6%)と続く。この2産業で606社(同68.0%)と約7割を占め、産業に偏りがみられた。
細かな業種別でみると、最多はソフトウェア開発など情報サービス業の162社(構成比18.2%)、続いて経営コンサルタントなど専門サービス業の159社(同17.8%)だった。
IT系やコンサルなどがGMOあおぞらネット銀行をメインバンクとする傾向にあるようだ。
一方で、運輸業や建設業、不動産業は社数が少なく、知名度アップやシステム構築の面で、取引社数増への鍵も見えてくる。
法人格別では、株式会社が最多の548社(同61.5%)、次いで合同会社の287社(同32.2%)だった。
直近1年で新たに494社のメインに
2023年3月末にGMOあおぞらネット銀行がメインバンクだったが、2024年3月末までにメインから外れたのは11社。一方、2024年に新たにメインバンクとなった企業は494社だった。
メインから外れた11社は、メガバンクや地銀、信金へのメイン変更が6割、休廃業・解散などが約4割だった。
新たにメインバンクになった494社は、サービス業が224社(構成比45.3%)、本社は東京都218社(同44.1%)がそれぞれ最多だった。
取引社数の増加率は、勢いのあるネット銀行が上位を占め、地銀や信金、信組などを凌駕する。この背景には、24時間サービスや格安の振込手数料、迅速な融資など、従来の金融機関にない強みがある。
ただ、社数は地銀と比べてまだ少ない。資金や信用にボトルネックを抱える小規模事業者が中心だけに、今後どこまでネット銀行の特徴を訴求できるか注目される。成長をたどるGMOあおぞらネット銀行だが、取引企業の事業を軌道に乗せる手腕も試されている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年12月9日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)