• TSRデータインサイト

令和生まれの企業1,925社が倒産、コロナ禍や物価高と経営の甘さも

 令和が始まった2019年5月1日から今年10月31日で2,000日超が経過した。この間、約80万社が設立された。1日あたり400社が産声をあげたことになる。一方、令和生まれの企業のうち1,925社がすでに倒産している。ほぼ一日に1社が倒産した計算だが、今年10月は100件を超えた。
 設立前後にコロナ禍に巻き込まれ、種々の手厚い支援でひと息ついたのもつかの間、今度は物価高や人手不足が進行中だ。厳しい経営環境に耐えられなかった企業、甘い計画での安易な起業の退出が本番を迎えている。
 東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから令和生まれの企業倒産1,925社を分析した。



 令和生まれの企業倒産(負債1,000万円以上)は、今年10月末までに1,925社に達した。
 資本金別では、1億円以上は12社(構成比0.6%)で1%にも満たない。一方、1千万円未満は1,814社と9割(同94.2%)を上回り、過小資本の企業が行き詰まる傾向が強い。
 負債額は、10億円以上の大型倒産は22件(構成比1.1%)にとどまり、1億円未満が1,774社(同92.1%)と圧倒的に多く、令和に生まれて倒産した企業は設立から日の浅い小・零細企業が中心だ。


「令和」設立企業 倒産推移
 

 令和生まれの企業倒産の原因別では、最多は販売不振(売上不振)の1,119社(構成比58.1%)で約6割を占めた。次いで、放漫経営の事業上の失敗413社(同21.4%)が多かった。無計画など安易な起業の弊害も出ているほか、運転資金の欠乏も88社(同4.5%)と資金繰りに苦慮する姿が浮かんでくる。
 業種別では、飲食店の212社が最多だった。次いで、総合工事業156社、社会保険・社会福祉・介護事業143社、情報サービス業120社と続く。コロナ禍の影響を色濃く受けた業種が上位に入った。

「令和」設立企業の倒産 業種別(上位5社)

会社分割などで令和の大企業も

 令和生まれでも会社分割などで大企業が育っている。直近決算で売上高1,000億円超も39社ある。
 コロナ禍や物価高、人手不足などで厳しい環境が続くが、苦労を乗り越えた先には世界に漕ぎ出す企業も登場するかもしれない。
 だが、独力での成長には自ずと限界もある。羽ばたく企業を育成し、国や自治体、金融機関、取引先などが安直に目を向けるベンチャー企業だけでなく、あちこちにあるキラリと光る中小企業の育成も宝の山になるだろう。




(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年11月27日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人材派遣業」は大手企業がシェア席巻 黒字企業が8割も、コロナ後初の減益

深刻な人手不足と賃上げを背景に、転職市場が活況を呈している。だが、その一方で人材派遣業は、人手不足による人件費上昇などで利益が追い付かず、大手と中小事業者の業績格差が年々拡大している。

2

  • TSRデータインサイト

ひと足早く始まった低金利の終焉、金利上昇が加速へ

2024年3月、日本銀行は2016年2月に始まったマイナス金利政策の解除を決定した。 コロナ禍も利下げは止まらず、ピークの2023年3月末は、金利0.5%未満が貸出金全体の37.0%を占めた。金融機関は10年余りの間、本業での収益悪化が続いたが、コロナ禍を経て状況が一変した。

3

  • TSRデータインサイト

船井電機、登記変更と即時抗告と民事再生

10月24日に東京地裁へ準自己破産を申請し同日、破産開始決定を受けた船井電機(株)(TSR企業コード:697425274)を巡って、大きな動きが続いている。

4

  • TSRデータインサイト

脱毛サロンなどエステ業の倒産が過去最多ペース 1-10月累計87件、初の年間100件超も視野に

脱毛サロンなど、エステ業界の倒産が急増している。2024年は10月までに87件に達した。現在のペースで推移すると、2024年は過去最多の2023年の年間88件を上回ることは確実で、100件を超える勢いだ。

5

  • TSRデータインサイト

登記上の本社同一地の最多は4,535社 代表ひとりが兼任する企業の最多は628社

全国で同じ住所に法人登記された社数の最多は、「東京都港区南青山2-2-15」の4,535社だった。 また、1,000社以上が登記しているのは14カ所で、上位10位までを東京都の港区、渋谷区、中央区、千代田区の住所が占めた。

TOPへ