2024年の全国の女性社長64万9,262人 「女性社長率」は15.24%、14年間で3倍増
第13回「全国女性社長」調査
女性活躍推進が叫ばれる中、2024年の全国の女性社長は64万9,262人(前年比6.0%増)で、前年から3万7,038人増加した。全国の社長の15.24%(前年14.96%)で、初めて15%を超えた。
女性社長を初めて調査を実施した2010年の21万2,153人から、14年間で3倍(206.0%増)に増えた。女性が働きやすい環境を整えることが社会的な課題に浮上し、政府や自治体の創業支援や事業承継支援に加え、企業を巻き込んだ女性の活躍をサポートする取り組みが少しずつ広がりつつあるようだ。
女性経営者の増加は、女性目線での商品開発などでマーケットの活性化が期待される。さらに、深刻さを増す後継者問題でも女性の進出が増え、事業承継の担い手としての重要性が増している。
だが、依然として男女の役割分担への先入観は根強い。仕事と家事、育児、介護などの両立には男性の協力が欠かせない。法制度の整備だけでなく、学校や職場での意識改革も必要だ。
政府・自治体は、創業や事業承継の単一的な支援でなく、介護や育児、少子化対策などを含む包括的な政策と支援が求められる。
※本調査は、東京商工リサーチの保有する約425万社の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長(病院、生協などの理事長を含む)を抽出し、分析した。調査は今回が13回目(前回は2023年9月15日発表)。
女性社長率 過去最高の15.24%、大都市圏で増加傾向強まる
2024年の全国の女性社長は64万9,262人(前年比6.0%増)で、前年より3万7,038人増加した。全国の社長数の15.24%(前年14.96%)を占め、女性社長率は過去最高を記録した。
都道府県別の女性社長数は、最多が東京都の16万5,102人(前年15万5,210人)。以下、大阪府6万3,177人、神奈川県4万1,614人、愛知県3万3,014人、福岡県2万8,050人で、上位5位まで前年と同じ順位で大都市圏が並んだ。
一方、最少は島根県の1,729人(同1,697人)で、1.8%増えたが唯一、2,000人を割り込んだ。次いで、鳥取県2,242人、福井県2,359人、秋田県2,447人、高知県2,530人の順。36位以下の順位は前年と変わらなかった。
2024年1月1日現在の女性人口10万人あたりの女性社長数は、最多が東京都の2,332人で3年連続で2,000人を超えた。次いで、沖縄県1,392人、大阪府1,387人、山梨県1,381人が続く。一方、最少は新潟県481人、山形県499人の2県が500人を下回り、東京都と新潟県の格差は4.8倍に広がる。
都道府県別の「女性社長率」(全社長数に対する女性社長数の割合)は、最高が沖縄県の20.62%(前年20.58%)で唯一、20%を超えた。以下、山梨県17.36%、東京都17.21%、茨城県16.99%、大阪府16.82%の順。一方、低いのは新潟県9.69%(同9.40%)、山形県9.78%(同9.68%)の順で、この2県は10%に届かなかった。
女性社長の平均年齢が男性より1.8歳高い 年代別分布では70代が最多
年齢が判明した女性社長の平均年齢は65.1歳で、男性社長の平均63.3歳より1.8歳高い。産業別では、不動産業67.4歳、小売業67.2歳の順で高く、小規模事業が多い2産業が平均年齢を押し上げた格好だ。10産業のうち、唯一の50代は情報通信業の58.2歳だった。
年代別の分布では、70代が25.8%で最多を占めた。以下、60代24.6%、50代21.5%、80代以上14.6%、40代10.1%、30代2.7%、20代以下0.3%の順。
産業別では、建設業、卸売業、小売業、不動産業で70代の社長が多い。一方、農・林・漁・鉱業、製造業、情報通信業、サービス業他は60代の社長が多く、金融・保険業と運輸業では50代の社長が最多を占めた。
規模別 売上高、従業員数ともに女性社長は小規模傾向
女性社長が経営する企業の売上高別では、最多は1億円未満が69.8%で、全体の約7割を占めた。男性社長は58.8%で、女性社長が11.0ポイント高かった。次いで、1億円以上5億円未満が23.0%(男性社長27.8%)で続き、5億円未満が92.9%(同86.7%)と9割超を占めた。
一方、100億円以上は0.21%(同1.0%)、50億円以上100億円未満は0.27%(同0.8%)で、ともに1%に満たなかった。
女性経営者の企業を従業員数別にみると、最多は5人未満の61.4%だった。男性社長の53.5%より7.9ポイント高い。このほか、5人以上10人未満が17.6%(同20.2%)、10人以上20人未満が10.9%(同12.0%)、20人以上50人未満が6.5%(同8.3%)、50人以上300人未満が3.0%(同4.9%)、300人以上0.3%(同0.8%)の順。
売上規模、従業員数規模ともに女性社長が経営する企業は、男性社長より小規模な傾向が表れた。
地区別 「女性社長率」トップの近畿は初めて16%超
地区別の「女性社長率」は、近畿が16.15%(前年15.88%)で最も高く、初めて16%を超えた。次いで、関東15.96%(同15.71%)、九州15.81%(同15.55%)の順で、上位3地区が15%を超えた。4位の中国14.81%まで前年と同順で並ぶ。
5位の四国は13.77%で北海道13.61%と入れ替わり、以下は中部の13.58%、東北の12.60%、北陸の11.65%の順。
「女性人口10万人当たり」の女性社長数は、関東が1,269 人(同1,195人)で最多。次いで、近畿が1,075人(同1,008人)で続き、上位2地区が1,000人を超えた。以下、九州920人、中国823人、四国786人、中部781人、北海道754人、北陸692人、東北650人の順。
女性社長数の増加率は、東北が前年比9.0%増で最も高く、続く近畿6.3%増、関東6.2%増までの上位3地区が全国(6.0%増)を上回った。一方、最も増加率が低かった北海道は1.2%増にとどまり、「女性社長率」の順位を下げる要因となった。
産業別 女性社長のほぼ半数が「サービス業他」で活躍、飲食業や美容業で目立つ
女性社長が最も多い産業は、「サービス業他」の32万913人(構成比49.4%)で、全体のほぼ半数を占めた。喫茶店や食堂など開業の敷居が低い飲食業のほか、美容業やエステティック業など女性が活躍しやすい業種が目立つ。
次いで、不動産業9万7,269人(同14.9%)、小売業6万6,223人(同10.2%)が続き、上位3産業が10%を超えた。
産業別の「女性社長率」では、不動産業が25.06%で最も高く、4人に1人が女性の割合だ。次いで、サービス業他19.04%、小売業15.68%、情報通信業13.47%の順で続く。
一方、建設業は5.45%で最も低い。このほか、農・林・漁・鉱業8.16%、運輸業9.37%の順で低く、下位の3産業が10%を割り込んだ。一般的に男性労働者が従事するイメージの強い産業では、経営者の女性進出も低調な傾向をみせる。
名前が「和子」の女性社長が13回連続で最多
女性社長の名前は、1位が「和子」の6,466人だった。本調査において13回連続トップで、不動の首位だ。「和子」は、生まれ年別で昭和初期から昭和27(1952)年まで最も多かった名前で、女性社長にもその影響が伺われる。
2位は「幸子」5,963人、3位は「洋子」5,807人、4位は「裕子」5,189人、5位は「陽子」の4,563人だった。5位までの順位は前年と変わらない。
10位まではすべて「子」で終わる名前だった。「子」以外で終わる名前は、19位の「明美」2,770人が最も多い。このほか、21位の「真由美」2,599人、22位の「直美」2,457人、25位の「由美」2,384人など20位以下に並び始める。
出身大学別 日本大学がトップ、東京大学が7位に浮上
女性社長の出身大学は、OB数が日本一を誇る日本大学が480人(前年同数)でトップ。2位の慶応義塾大学は410人(同393人)で、初めて400人を超えた。次いで、早稲田大学355人、東京女子医科大学322人、青山学院大学243人が続く。東京都以外の大学では、6位の同志社大学201人が最多で、14位の大阪大学133人が続く。
国公立大学は、前年8位から1ランク上げた東京大学189人が最も多い。このほか、14位の大阪大学133人も前年18位からランクを上げた。15位の広島大学132人、18位の九州大学129人を合わせた4校が20位までに入った。
東京都の私大が上位を占める構図は変わらないが、国立大学にも伸長傾向がみられる。